職場がラストダンジョン前の村状態だった件
タイトルのとおり。エッセイなので、もちろん実話です。(2024年06月30日)
まさかそんな、なろう小説のタイトルみたいなこと、現実で起きるわけないじゃん?
無自覚に「なんかやっちゃいました?」なんて人が、現実にいるわけないじゃん?
って、思ってた。思ってたけど、甘かった。甘かったよ。
誰だよ!!!事実は小説より奇なり、なんてうまいこと言ったヤツ!!
(言ったのは英国の詩人バイロンさんという人らしいんですけどね!きっとあの世でドヤ顔してるんだろう)
っていう経験談をこれから語りたいと思う。
昔こんなことがあってーって言うと、年食った証拠のようで気が引けるけど。たぶん自分史上もう二度とは経験しないだろうから、残しておくかと思って。
生きてると、どうにもいろいろな事情が発生するもので、新卒で入った企業を三年ほどで退職して以降、自分はこれまでに何回か転職している。
あれは、そのうちの一回で起きた出来事。
その当時の自分は、働ける時間や場所の制約があったため、まったく未経験の業種の求人に応募した。そして運良く採用された。
その職場では、ちょっとした技術が必要だった。
仕事は――ピザ職人でも白バイ隊員でも左官屋でもなんでも、読み手様のお好みで想像していただければ良いのだけど――昨今、どこの企業でも仕事上で知り得た情報を漏らさないという約束事があるので、ここでは詳しく書かない。
とにかく、その職場では、業務にあたって、自分がまだ習得していない技術が必要だった。
独学での技術の習得は難しいので――時間をかければ独学で可能だけど、そんな猶予はない仕事しながらだ――職場の先輩の下について、その技術を教わった。
その道何年、っていう先輩はさすがの技術に腕前で、サクサク仕事をこなしている。初心者の自分は、致命的な失敗を避けつつ、なんとかついていくので精一杯。
そんなこんなで半年くらいかけて、どうにか見様見真似で働けるようになったあたりで、それはやってきた。
同業者で、技術の優劣を競おうという趣旨のコンテスト。
――読み手様には、テレ東のTVチャンピオン(古い)の、人数多めバージョンを想像してもらえば良いと思う。
コンテストのはなしが来た職場では、じゃあ参加しようか、ということになった。そして、職場代表として先輩が出場することになった。
職場には、先輩より歴の長い人が何人もいた。
当然、先輩と同等以上にできる人もいたけど、忙しいとか都合がつかないだとかそんな事情で、わりと貧乏クジを引いた形で先輩が出場することに決まった。
自分?自分は歴半年の底辺なので、はじめっから観客の立ち位置。
なろうに慣れた読み手様なら、たぶんもう展開が予想できるだろうけど。
先輩は、同業からたくさんの参加者がいる中で、ぶっちぎり最速の優秀者になった。
先輩曰く「なんか、速かったらしいね〜」
無自覚だったよ先輩。そんな、もしかしてやっちゃった?みたいな顔しないで先輩。どこのなろう主人公ですか先輩。
あれ、でも待って。その先輩の下についてた自分、もしかしてかなり鍛えられている……?
うん。鍛えられていてもいなくても、職場で底辺なのは変わりようがない、そこは深く考えないようにしよう。
自分は、未経験で予備知識のない仕事に飛び込んだからね。先輩や、職場の人たちの腕前の凄みがわかってなくてもしかたなかったね。
先輩も職場の人も、コンテストなんてあらたまって出場したことなくて、実力のレベルを知りようがなかったからね。無自覚の無双もしかたなかったね。職場がラストダンジョン前の村状態でもしかたなかったね。
しかたなかったけどね。
でも、現実で、そんななろうみたいな展開に遭遇するとか、普通、想像しないじゃん?!
思い出しても、なかなかインパクトのある出来事だった。
事実はなろう小説程度には奇だった。こんなこと、もう二度と経験しないと思う。二度もあってたまるか。
まったく、名言を残したバイロンさんにはカンパイだよ!
まさか、職場がラストダンジョン前の村状態だった件、なんてそれまで全然気がついてなかった件。-fin