戦いの途中なのです
ここで、つぎ?なのです
「午後の決勝トーナメントを開始します。選手たちは集まってください」
この言葉を皮切りに、十名の選手が中央に集まります。会場に出してあるボードには、番号だけがふってある、十ヶ所の空白が。但し両端と真ん中の八ヶ所は別番号なのですが。箱が二つ用意されまず最上級生二人がくじを引きます。
「生徒会長として、この不正の様な事、下級生の皆には悪いとは思うが、学園の行事のルールとして受け止めて欲しい。しかし準決勝からの試合は、此方が有利な条件ではあるが、全力で構わない。負けた時は、抗議などせず受け止めよう。そしてそれが、今後の基準になればと思う」
くじを引く際、会場にも聞こえる様に、そう話されると、生徒会長は直ぐにその場を後にされました。その言葉を聞き、会場は来賓席もろとも騒めきました。
その言葉を聞いた、最下級生代表でその場にいる二人は、
「ルイネス、今の言葉をどう思う?」
「流石は我々の代表だと。あの言葉で、関係者からは批判の声もかなり出る事だろう。
それをあえて自分の代で変えるため、口に出して発言されたのだ。かなりの勇気がいる事だと思う。それに・・・」
「それに?」
「あの方は、生徒達の実力を、欲目無くご存じだ。なので、ご自身が、カイル先輩には敵わない事も、ね」
「それは大丈夫なのか?卒業生たちの披露の場だろう」
「大丈夫ではないだろうが、今年はそれが出来ると思えたんだろう」
「何故そう思える?」
「判らないかい?彼女がいるからさ」
「え?」
「幾ら周りが小細工しようと、所詮その程度、と。生徒と競わされず、大人のそれも、騎士団の上位者と勝負する下級生がいるんだ。
そちらに注目が行けば、武術大会の優勝など飾り程度になる事だろうな。
それに、それを基にすれば、決勝でカイル先輩が優勝できても、目立つ事も出来ないだろう。その前にある模擬戦の印象が強すぎて、な」
「努力されてるカイル先輩には悪いが、そうだな。確かに霞むだろう。あの自己測定の結果を見れば、ね」
「それに、私も良い行いを無下にはしないさ。
口添えはさせてもらう。かざしたくはない権力だが、王家の者として、ね」
「なら、生徒会長が責任を取らされるなんてことは?」
「ない様に、させてもらうさ」
「ならば、その為にも」
「ああ、彼女には、うんと派手に勝ってもらわないとな」
「まあ、彼女の事だ。何も言わなくても、そうなるだろうよ」
「そうだな、ロイス」
そんな波乱の一幕はありましたが、下級生たちの試合は順当に進み、ルイネス様、ロイス様、カイル様、それと、四年生の方が一名、対戦相手を一蹴して勝ち進みました。
そして準々決勝、ロイス様は四年生と戦われ準決勝に進まれましたが、ロイス様はカイル先輩との戦いになり、惜しくも敗れ、準決勝にはカイル先輩が進むことになります。
これにより、準決勝は、カイル先輩対最上級生男子、生徒会長対ロイス様という事になりました。
此処からの試合は、学園生徒の注目の対決とあり、見学してる人達も一様に盛り上がっています。一部を除き、なのですが。
「次の準決勝が終われば、いよいよフェリノア様の出番なのですわね」
「ええ、アナスタシア様、その通りです。朝から待ち遠しかった試合が、もうすぐ行われます」
「なら、さっさと準決勝を終わらせてほしいですわね、アマンダさん」
「アナスタシア様もキャロライン様も男子の試合には、ホント興味がおありではないのですね」
「男同士で、汗を流しながら、剣をぶつけ合うなんて野蛮な行為、興味ありませんわ」
「剣どころか、拳でカタを付ける、春香の方が、よっぽど野蛮だと思うのだけれど・・・」
「カトリーナ様、小声で呟かれてますが、どうかなさいました?もうすぐ私達の、ご友人の試合ですのよ。張り切って応援する事に致しましょう」
「ええ、そうですね。精一杯頑張って応援致しましょう、アナスタシア様」
その除くべき一部はこんな感じだったのですが、他の全生徒は、それぞれ応援する生徒に、観客席から声援を送っているのでした。
「それでは、準決勝第一試合、開始」
掛け声と同時に、カイル先輩が相手に対し、一瞬で詰め寄ると、目にも止まらぬスピードで、対戦相手の首元に剣を添えていました。
「申し訳ありません。全力で行かせて頂きました。本来なら見せ場を作るべきなのでしょうが・・・」
「ああ、大丈夫だ。事前に生徒会長から、勝手な事をするがすまないと、先に詫びを入れられたからな。それでなくとも、この実力差だ、どう頑張っても善戦すら難しいだろう。なので、その言葉は不要だ。それよりも、生徒会長との決勝戦、あいつの勇気に答える為にも、全力で頑張ってくれ」
「はい、俺の全力をもって答えさせていただきます」
「勝者、カイル・ソルレイネス」
審判を務める先生が、そう宣言すると、会場から更なる声援が掛けられました。そして、戦われたお二人がその場を降りられると、次の選手が試合場に。
「生徒会長、全力で行かせてもらいます」
「ああ、望むところだ。今まで積んだ研鑽を遺憾なく発揮してくれ」
「それでは、準決勝、第二試合、開始」
「せいっ」
開始直後、全力で剣を振りかぶる、ロイス様。しかし、しかし危うげなく、その剣を受け止める生徒会長。
「会長。いえ、キース生徒会長。実力を隠してましたね」
「隠していた訳ではないよ。ただ、他の生徒相手に、ひけらかすものでもないだろう、剣術の腕なんて」
「それはそうですが、前評判に踊らされたみたいです」
「会長には勝てるだろう、ってやつかい?」
「ええ、そうです」
「それは助かるな。少しでも油断して貰えれば、楽が出来るよ」
「でも、今からは、そうはいきませんよ」
「ああ、此方も全力を尽くすのだ、そうでなければ」
それからは、無言で剣をぶつけ合う二人。しかしお互い急所などを狙うことなく、正々堂々とした打ち合いに、会場中の生徒が息を呑む。
五分、十分と過ぎていき、お互い息が上がる頃、流石の上級生。体力の差か、わずかな隙を突き、胴に向けた剣を寸止めにすると、剣を引く。その行為に、
「キース生徒会長、参りました。良い試合ありがとうございます。カイル先輩との決勝、頑張ってください」
「こちらこそありがとう。最下級生というのにこれ程なのだ、最上級生として、君の強さが誇らしいよ」
「勝者、キース・ベレストリア」
今度も、先生の宣言を皮切りに、生徒達の歓声が、会場に降り注ぐのでした。
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