お互い齟齬があるようです
お買い物がやっと次に来るみたいです。制服出来たら、学園です。
「お嬢様、お食事の準備が整ったそうです」
「判りました。食堂へ向かいましょうリリ」
(どうしましょう、気が重いですわね。昨日の夜だけでなく先程のお庭の件でまで、呆れさせてしまいました。かくなる上は先手必勝でお謝りするしかありませんね)
「お嬢様、エミリア様はもうお席に着いてらっしゃるようです」
「エミリア様、申し訳ございませんでした」
「フェリ様、何の事でしょう?逆にこちらがお詫びしようと思っておりましたのに」
「昨日、エミリア様がとても私たちの事を心配して頂いたのを安心させようと、実家から持ってきてしまったあの古くなったおさがりの家具を見せて呆れさせてしまった事と、中途半端に終わらせてしまって呆れられてしまった中庭の件です。確かに普通の貴族はあの様な家具はお使いにならないでしょうが、私には専用で持てるだけでも精一杯なのです。それに中庭も垣根以外は急成長はよくないもので・・・」
「えっと、お話を遮って御免なさい、フェリ様。それは本心からのお言葉ですよね?」
「もちろんです。最初にあった時、遠慮などせず仲良くしましょうと仰って頂いたので、そのつもりでお話していましたが、やはり礼儀を考えて控えるべきだったのでしょうか?」
「全く違います。先ず昨日の件ですが突然何も言わず引き返しましたこと、お詫び申し上げます。二人の間にかなりの齟齬があるようなので正しましょう」
「はい?間違いが有るのですか?」
「フェリ様は礼儀作法も言葉遣いもしっかりしてらっしゃったので、勘違いしておりました。気遣い方がかなり自己流の天然なのですね。昨日も今日も問題なのは魔法の使い方です」
「こちらに来る時、リリと相談して一応人前では使わない様にはしているのですが。何かいけなかったでしょうか?」
「確かに人前で使わない気遣いも必要でしょう。でも、よく考えてください。使った後の痕跡がそのまま残っているではありませんか。ほんのちょっと目を離したすきに整然と家具が設置されていたり、昨日まで空地同然だった場所が、きちんとした中庭に半日程度で出来上がっていたら、驚くに決まっています」
「そうなのですか、リリ」
「えっと、小さい頃からお嬢様とご一緒だったので、異常と思いませんでした。田舎の家や畑だとあれ以上にポンポン使われておりましたので、かなりお控えになっているなっと感心してたのですが」
「リリシア様、貴女もフェリ様に染まりすぎております。ですのでこれからは三人話し合ってこちらの生活に合わせられるよう頑張りましょう」
「私の事ですのに、頑張って一緒に考えて頂けるのですね、ありがとう御座います、エミリア様」
「実を言うと、本日私を寮館長に推して頂いた方にお会いして来ました。それで昨日のフェリ様の事を相談させてもらいましたところ、寮生という立場だけでなく個人としても相談に乗ってあげなさいと、申し付かりました」
「相談事にも応じて頂けるのですね」
「ええ、それで生活面も暫く様子を見るという事で、三人で朝食をとる際に、学園に登校するとき以外は、予定を教えて頂き、外出などされる際はお供する事にしました。王都の人達への接し方など、私が合格と思えるくらいになるまでは、ご一緒しようと思います」
「私としましては田舎より出てきたばかりですので、ご一緒していただくのは心強いし大変助かるのですが、エミリア様にはご迷惑では?寮の仕事以外の事になりますし」
「いえ、昨日今日の事もありますし、寮に残って気をもむよりは、そうさせて頂いた方が安心出来そうです」
「では、明日からよろしくお願いします、エミリア様」
「こちらこそよろしくお願いしますね、フェリ様」
本日の夕食は初めて三人でちゃんとした会話が出来たような気がしました。初日の夕食はあわただしかったですものね。明日は街へのお出掛け予定ですので、明日の朝食の際、きちんと報告することにいたしましょう。
「リリ、制服とお店巡り、エミリア様もご一緒なの助かりますね。訪ねながら行かなくて済みそうです」
「そうですね、エミリア様でしたら王都の街にもお詳しいでしょうし助かりますね、お嬢様」
「でもでも、魔法ってそんなに異常かしら?他の方も使えますよね」
「まぁ、お嬢様みたいに色々は使えないでしょうが、一つ属性位は皆使えると思います」
「私が畑仕事でも使っていましたので、領地の方は規模は小さいですが皆も使ってましたものね~、都会の方は違うのかしら?」
「明日、エミリア様に都会の方の魔法の使い方をお聞きしては?それが近道かもしれませんよ、お嬢様」
「そうね、お買い物しながら、それとなくお聞きしましょう。他の方と同じ位の規模の魔法なら苦情は来ないでしょうし」
「そうですね、では明日に備え、今日は早くおやすみしましょう」
「そうね、おやすみリリ」
「おやすみなさいませ、お嬢様」
楽しく読んでいただけたら幸いです。