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お庭作りです

結構マイペースの主人公になりそうです。お話が進展せず申し訳ありません。

 「お嬢様、先程廊下でエミリア様にお会いしたのですが、少し寮から外出するので、留守にする事をお伝えする様お願いされました。お急ぎなのか、お呼びしましょうか?とお聞きしたところ、伝えて頂くだけで構いません、とすぐにお出掛けされました」


 「ありがとうリリ。今日は許可を頂きましたので、早速お庭で作業したいと思っていましたので、見て驚かれたりしたら大変ですし、好都合でしたわね」


 「誰も見ていないといっても、やりすぎにはご注意くださいね。それと、指定されているお店への制服の受け取りは、いつお伺いする様にいたしましょう?少し手直しが必要な事もあるでしょうし、他の御令嬢などは制服を着たりせず私服で通われるそうなので、お嬢様も、少しは王都での流行の服も購入なされてもよいと思うのですが」


 「せっかく規定の制服が有るのですもの、予備を含めて二着ほど購入出来れば、それで大丈夫です。クリーンの魔法もありますしね」


 「ですが、だからといって余所行きのドレスでの農作業はおやめくださいね。前歴が御座いますから」


 「あれは仕方なかったのです。姉のおさがりの服が、見栄を張って購入していたあれしかなかったのです。村の方に行くといっても、裸で出向くわけにもいきませんし」


 「覚えています。父がドレス姿の子供が来たので、慌てて話を伺いに行ったら、この辺りの村々を治める男爵様の御令嬢で、言うに事欠いて農作業の手伝いに来たと仰り、そのまま畑に入って行こうとしたのを。お引き止めして村の子供のおさがりの服を恐縮しながら母が渡していたのを。尚且つそれを喜々として自分で着込んでたお嬢様も。なにせ村に向かって歩いてくる綺麗な本物のお姫様を、最初に見つけて伝えに行ったのは私でしたから」


 「私自身もあの格好では動きにくいと思っていたので助かりました」


 「あの後も傑作でしたね。何処からともなく取り出した自分より大きな鍬を振り回し、畑を耕してるかと思ったら、急に思案気な顔をして、溜息を吐きつつ顔を横に振られて。それからいきなり地面に両手をつかれたと思ったら、今まであった畑と同じくらいの地面をひっくり返して畑にしたのを。途中で面白がって集まって来ていた子供達は初めて見る大きな魔法に大興奮、逆に大人たちは真っ青になってましたから」


 「あの頃はまだ、何とか収穫を増やして家族や村人たちを少しは裕福にする事しか考えてませんでしたから」


 「大人達皆とても感謝してました」


 「勝手な事ばかりしていたのに、邪険にせず仲良くして頂いて嬉しかったです。で、思い出話はこの位で、作業を開始しましょう。街の服屋さんへは明日、時間にゆとりをもって行きましょう。今日の作業が終わって慌てて服を取りに行くだけではもったいないので、一日かけ他のお店も覗きながら、必要な雑貨や食料品も購入しましょう。寮のキッチンも空いてる時間なら、使わせて頂けるかもしれませんし」


 「お嬢様が作られるお料理は、見た事ない物ばかりですし、大変美味しい物ばかりなので嬉しいです」


 「あら、私が作るなんて言ってませんよ。リリが作ってくれてもいいのよ」


 「意地悪を言わないで下さい。お嬢様と比べたら材料を無駄にしているようで気が引けます」


 「では良い食材が安く一杯街にある事を祈って、頑張りましょう」


 二人で出向いてみると男子寮と女子寮の間は、本来はキレイなお庭だったんでしょう。けれど、建設後全く使われず、草木や花も無くなっているその場所は、今は既に空地と呼ぶしかない状態でした。


 「やりがいが有りますわね」


 「程々でお願いします、お嬢様」


 庭を囲むようにあったであろう垣根を再現する為、使う低木をぐるりと植えて、私オリジナルの植物魔法で成長を促進します。これで寮の外を通っているだけの方々には、中が見えないと思います。

 続けて一番奥の目立たない場所に薬草畑を作り薬草を植え、中程の空地に野菜畑を作り、もう一度垣根で覆い隠すと、二つの寮の中の窓から見える様な部分には、一見綺麗な花に見える植物たちを植えていきます。これは香料や紅茶などにも使える植物が皆に知られていないだけで沢山ある事を知っている私だけの役得と、せっせと作っています。

 田舎にいる時色々作り育て、種も大量に保管してるのでサクサクと作業を進めます。垣根なんかの植え込みは効能など気にしないで育てられますが、野菜や薬草、花などは栄養や適量の水を与えながらじっくり育てた方が効能も品質もいいものが出来ますので、急激な促進は止めておきたいと思います。


 「お嬢様、もう芽が出ていますが」


 呆れたような目をリリが此方に向けているようですが、仕方ありません。なにせこの程度はしておかないと、耕しただけのただの地面と勘違いされて、踏み荒らされては大変ですから。


 「今日はこの位で作業を終えましょう。リリお疲れ様でした。クリーンを掛けますので此方に」


 「ありがとう御座います、お嬢様。いきなりお庭らしくなりましたね」


 「まぁここに私が来たからには、早いか遅いかの違いでしかなく、こうなる事は決定事項なので諦めてください」


 「そうですね。お嬢様ですから」


 そんな会話をしながら、中庭に出る為の扉に辿り着くと、丁度目の前にエミリア様が。


 「おかえりなさいませ、エミリア様。お戻りになられたのですね。こちらへはもしや私をお探しに?」


 「フェリ様、お、お、お庭が・・・」


 「はい、昨日許可を頂きましたので、早速手入れをさせていただきました」


 「・・・手入れ、ですか?」


 「はい」


 「後で夕食の時、またゆっくりお話いたしましょう、フェリ様」


 礼をされ、お部屋の方に向かわれたエミリア様。お庭、お気に召さなかったのかしら。


 「お嬢様、お顔を見て思いますが、今考えてる事は違うと断言します」


 あれ、そうなの。

楽しく読んでいただけたら幸いです。

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