先ずは目的地へ、です
終わりませんでした。まだ続きますです
「おい、予定通り誘導は出来ているんだろうな」
「はい、間違いなく。夕方から夜半にかけての事になるかとは思いますが」
「そうか。では、私はその時間を見計らい、良いタイミングで現れるとしよう」
「は、かしこまりました」
「狙いの女子以外にはどれ程被害が出ようと構わんからな。後は誰と切っ掛けが出来るか、だな」
林間学校開催の前日の夜、薄暗い部屋の中二人の人影が。会話が終わると一人部員の人影がその場から消えてしまいます。それからはその場に静寂が訪れ、翌日の朝を迎えました。
「2クラス、集合出来てるか~?班ごとに人員を確認して、班の代表が報告に来る様に。点呼での確認作業が済んだら、もうしばらく待機して、1クラスの班全てが出発し終わり、ある程度の時間を空けてからの出発になる。まだ少し、時間はあると思うから、不安な奴は、持ち物の再確認でもしててくれ」
「ランデル先生、私達の班は全員集合出来ております」
「あ~、アマンダか。お前たちの班はフェリノアが代表ではないんだな。その班唯一の貴族だから、彼女がするもんだと考えていたが。で、当人は大人しくしてるか?」
「大人しく、というのが何処までを指すのかは、わかりませんが、早速クラス全員が喜ばれるように、と行動しておられました」
「あちゃ~、早速か。で、何をしたんだ、あいつは」
「本人曰く、嘆きの森で手に入れた収納鞄を持ってるので、移動に必要なもの以外、預かる事が出来るから、この箱にそれぞれの班ごとの荷物を入れてください。と仰って、大きな木箱を四つ出されまして、その班ごとの目印を付けた箱にお預かりになり、終わった箱をまた収納しておいででした。全員感謝しておりました、移動を手ぶらに近い状態で行えると」
「早速やらかしてるな~あいつ。でも、困ったな~。それだと計算が狂う可能性が大きいな」
「計算、ですか?」
「ああ。例年、1クラスの手ぶらの生徒が移動する速度と、2クラスの荷物を持っての移動が、同じくらいの時間で行われたんで、追い付いたり追い越したりの問題が起きなかったんだが、お前たちの班の出発が最初だよな?早々に追い付くだろ、それ。待機時間をもう少し伸ばすか。取り敢えずは、アマンダ、フェリノアをよく監視しておいてくれ」
「はい。既に二年のマリエラ様にご忠告を頂いております。突拍子もない事を突然行われる可能性があるそうで。なので、あの方以外の班のメンバー全員で見張る様にしております」
「そうか。思う事は皆同じ、か」
「はい。なので代表は私がする事に。個人の意見としましては、フェリ様は皆様の為に行われる事、それ程、目くじらを立てる事ではない。と、そう思うのですが」
「個人的にはな。だが、2クラスの庶民派での出来事なので、その考えで済むが、高位貴族だとそうはいかん。なにせ荷馬車いらず、という事になる。それを各貴族家にでも報告されればどうなるか。あいつの鞄を巡っての争いになるぞ、確実に」
「それは・・・」
「どこの領主も税の取り立てでの麦の運搬や、戦時の補給物資の運搬にどれ程の費用を費やしている事か。それが、ゼロとは言わずとも、かなりコストが下がるからな。まあ、その辺は商人でもそうだろうが、余程の大店でないと買い取れないからな、そんな品物は。だが、高位貴族なら奪いに来るだろう」
「そう、ですね・・・私もフェリ様のされることに、慣れてきているのかもしれません。普通の目線で見る事が出来なくなっているのかも」
「その点に注意しながら、その意見もメンバーと共有しつつ頑張ってくれ」
「わかりました。班に戻って再度気を引き締めます。では、失礼します」
(は~、おいおい、フェリノア。最初の点呼の時点でもうやらかしか。先が思いやられるな)
先生は生徒であるアマンダが班に戻るうしろ姿を見送りながら、頭の中でそう呟きつつ、待機時間を考え直し、今日の活動予定をさらに見直すのでした。で、1クラスが出発してかなりの時間が経過し、影も形も確認できなくなった頃、
「よ~~し、2クラス再度集合。今から班ごとに出発するぞ。先ず班長がアマンダの班からな。なるべく後続を引き離さない様、ゆっくりを心掛けてくれ、頼んだぞフェリノア」
「何故、私が名指しなのかは、理解できませんが、了解いたしました、ランデル先生」
「「「良く判りました、ランデル先生」」」
「うん、皆頼んだぞ。クラス一丸となって暴走を止めてくれよ」
「「「可能な限り、頑張ります」」」
「うちのクラスは、連帯感が最高だな」
「そうさせる人物が、いらっしゃいますから。我がクラスには」
「まぁ、そうだな、アマンダ」
「はい、先生」
「うん?アマンダさん、暴走って何のこと?注意事項でそんなの聞いてないけど?」
「あ、フェリ様は良いのです。お気になさらず。ただ、マリエラ様も仰ってましたが、道中気になる薬草なんかがあっても、今回は団体行動なので我慢をお願いします。どうしても欲しい珍しい物だったりした時は、此方に事前にご連絡ください」
「はい、判りましたわ、アマンダさん」
「では、2クラス出発」
「「「「はい」」」」
先生からの事前の注意喚起が出来ていたからか、問題が起こる事なく、目的地までは順調に進むことが出来ました。目的地で再度集合し、これからの行動を各クラスの先生から指示されます。
「2クラスのメンバーは、先ず班ごとに野営場所を決め、設営を行う事。それからは、自由時間兼、周囲の散策兼、食料調達だ。食料調達が済んだら、各班は収穫した物を見せに来ること。毎年知らずにキノコ類や果物類、魚、獣で毒のあるものを誰かしら取って来るからな。で、確認が済んで許可を貰ってから調理を開始してくれ、以上だ」
「「「はい、判りました、先生」」」
先生からの指示も済み、早速行動開始です。各班には到着時荷物をお返ししましたので、問題は無いと思いますが、無事食材をゲットしてきてほしい物です。さあ、私達の班も頑張りましょう~。
楽しく読んでいただけたら幸いです。




