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サイド:ルイネス

去り際の一言なのです。解釈、ながい?

 久し振りに時間の取れた両陛下との、晩餐の折。最近あった出来事を順に話し、家族での楽しい一時を過ごしていた。なので最後に、本日あった出来事を語り終えた時、これまでの雰囲気は無くなっていた。それに気付かず続けてしまったのだ。


 「・・・去り際に私に向かいそう言ったのですよ、その者は。最初に其方に興味はないと伝え、本人も関係がない事を確認したにもかかわらず、ですよ。今思えば、友人たちが言った通り、取るに足らぬ辺境の子女、学園から戻した方が良いと思いましたね」


 間が空き、静まり返った事に気が付き、周りを見渡すと食事を中断なされた両陛下がこちらを見下していました。いきなり変わった雰囲気に困惑していると、父上である陛下が口を開かれた。


 「今日ほど私は、自分が愚かだと思った事はなかったな。息子がこの様に育っているとは、今まで気付きもしなかった」


 「申し訳ありません、あなた。多分私が甘やかし過ぎて、育て方を間違えたのでしょう」


 「父上、母上、お二方とも何を・・・」


 「最初から説明せねばわからぬか、お前は王子なのだぞ。次の王になる者がこれでは、国は任せられん」


 「そうですね、あなた。跡目争いなど起こさない方が良いと、王子を一人しか儲けなかった私の落ち度です」


 「いや、それは二人納得しての事。お主だけの所為ではない。付けた教師も跡取りと甘やかし方針を間違えている様だ。時間が取れぬ私達の代わりにと付けたにも関わらず、な」


 「先程から、お二人とも何を・・・」


 「先程お前が語った、令嬢が言いたかった事を、判る様に言ってやろう。先ず教室に迎えに行った際、令嬢を呼び出したのはお前で間違いはないのだな」


 「はい、私です」


 「先程関係はないと言ってたようだが、何故お前なのだ?」


 「三人の中では、立場が一番上ですので、当然でしょう」


 「では、聞くがお前は一番上という立場の王子として、言葉を発し、行動したというのだな。それは申せば、連れている二人が間違えば全責任を取るという事だが、相違ないな」


 「幼い時より一緒の二人がそう申しているのです。信用するのが当然でしょう」


 「ならば聞く、お前は調べもせず、今後もその者達が言うのであればと、事を起こすというのだな」


 「父上、何を極端な事を。今回は取るに足りぬ辺境の令嬢が相手、幼馴染と比べるべくもないでしょう」


 「お前に対する失望が増すな。その令嬢の事を少しは調べたか?」


 「調べてはおりません」


 「ならばお前は、幼馴染という二人に、一方的に話をさせる為、その令嬢を呼び出したという事でいいか?」


 「庇いだてはしませんが、少しは相手の言い分も聞くつもりで、静観はしておりました。なので令嬢が話す事は遮ってはおりません」


 「次に、令嬢が話し終えた後、お前が信じたという幼馴染が、自分が間違いでしたと、非を認め謝罪したというのは間違いないか」


 「流石は私の幼馴染。潔く非礼を詫びていました」


 「ここまで話しても上から目線か。ならば気付くまい。そのほうはその時どうしていた」


 「話に関係のない私は、聞いていただけですが」


 「少し話をしてよいか。例えば私が遠方の国より、知に富み、武技に優れ、魔法をも優れて収めている者を、この国の役に立つだろうと招待していたとして、お前たちと同年代のその者に対し、幼馴染が嫉妬の余り、お前にその者はこの国に相応しくありません、と言ってきたとしよう。その時お前は、幼馴染が言うのだからと、相手の事を調べもせず、お前の口で呼び出すのか。その者に対しては幼馴染が言うにしても、だ」


 「それとこれとは状況が」


 「違うのか?では国が経営する学園に今まで呼んだ事の無い辺境の令嬢が、誰の許可を得て、寮に入り通園していると思う」


 「も、もしや・・・」


 「そうだ、私だ。かねてより辺境伯に聞き及んだ令嬢を私自身が呼んだ。例え話とどこが違う。それにな、お前の言う取るに足らぬという令嬢に、お前自身が救われていることにも、気付いてほしい」


 「私が彼女に、ですか?」


 「そうだ。お前の幼馴染は、彼女の話を聞き、諭されて納得したと言ったな。なので多分、その場でお前の事も諭す事が出来た筈なのだ。

 私は国王陛下の許可を貰い招待されて学園に来ております、それを勝手に無下になさいますか、と。それを皆の前で言われたら、流石のお前も答えられまい。そして、それから通う五年間、お前の学園での地位はどうなっていたと思う。お前は関係ないと思っていたようだが、私も最初に確認した通り、すでにお前が呼び出した時点で、幼馴染の行動も含め、全ての言動と行動はお前の責任になっていたのだ。

 なのであえて人に聞かれない様、こっそり伝えてくれたのだ。城に帰り考えてくださいと。多分、私達が諭す事も思慮に入っていたのかもしれないがな」


 「そこまで考えて、私の為にその一言を?」


 「多分、初代国王は判っておられたのだ。庶民などの恵まれぬ者の中にも考えが及ぶ者がいる、と。そして、忠言がしやすいように、我々が聞きやすいように、学園では平等であるべきと。まだまだ、私も不徳で叶えられてはいない、がな。そんな者を国の為に、社会に出るまでに救い上げたかったのであろう。その思いは受け継ぎ早く叶えたいもの、だがな」


 「父上、母上、私は考え違いをしていたようです。いつから貴族至上主義になっていたのでしょう。いつから傲慢な王子になっていたのでしょう。幼い頃は、父に庶民をも見通す者に為れと、あれほど言われていたのに。身分だけで話を聞く事もしない、そんな心狭き者に。お二人に今回失望されたのは仕方のない事だと気付きました、彼女の掛けてくれた言葉の意味を知れた今になって。なので、挽回できるかは判りませんが、頑張ってみたいと思います。国民に誇ってもらえるような人物になる為に」


 「うむ、それを聞けて嬉しく思う。見守っているぞ」


 「はい、父上」

楽しく読んでいただけたら幸いです。

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