何時もの定番なのです
お約束?
「次は、家具ね。早速行きましょう。うちがよく注文するお店があるから、そこね」
「え~、咲姫ちゃん。公爵家が注文する様なお店って、敷居が高すぎるよ~。もっと安そうな平民向けの・・・」
「お黙り、春香。さっきから、それが駄目だって、ちゃんと説明したでしょう。家具なんて早々買い直すものじゃあないんだから、キチンとした良いものを揃えないと駄目なの」
「は、はい、判りました、咲姫ちゃん」
そんな会話を繰り広げつつ、目的の場所に向け歩いて行くと、
「さあ、ここよ、春香。中に入るわよ」
「ふあ~、大きい店だね~。中も広そう」
「それはそうよ。展示してあるのが家具なんだもん、狭かったら置けないでしょ」
「それもそうだね。でも、王都でこの広さって、商品高そう」
「まあ、それなりにはね。でも、服や食料と違って、同じものを何度も何個も買う訳じゃないもの。取り敢えず、あの傷だらけのベットとタンスを買い直そう。で、良いのがあったら、テーブルや机、椅子なんかも・・・」
「いらっしゃいませ、お嬢様方。今日はどの様なご用件で?」
店に入ると、若い店員らしき者が、声を掛けてきました。しかし、その態度が、冷やかしに来た客を見る様な、明らかに追い帰そうとする、声の掛け方に、
「家具を一揃え頂こうと思って伺ったのですが」
「一品ではなく、一揃えですか?それならば、お店をお間違えなのでは?ここは、王都で一番のお店ですよ。そちらのお嬢様の来るようなお店ではないと思いますが」
こちらを向いて、そう堂々と言い放ってきました。まあ、セシリーさんのお店でも最初に入った時は、そう言われてたな~、なんて考えていると、前回はエミリア様が、怒ってらしたのが、今回は咲姫ちゃんが、
「そこの貴方。直ぐに上司を呼んできなさい。店主でも構わないわ」
「は、何を言っている。お前たちみたいなのに、わざわざあの人達の時間を割く必要など、あるものか」
「貴方、その言葉、ちゃんと覚えておきなさい。後悔しますから」
「なんで後悔する必要が。その平民女みたいなやつの為に」
「お店の入り口で、何を言い争っている」
「ニ、ニクラス様、それがこの者達が、買えもしないのにこの店の商品を一揃え買いたいなどと冷やかしにきたもので」
「なに、冷やかしだと?と、これは、これは、カトリーナ様ではございませんか?今日は何用で?ご注文は頂いてないと思ったのですが?」
「今日は私の大事な友人が、余りにもいただけない家具を使っておりましたので、信用あるここで、買い揃えようかと伺ったのですが、そちらの方から、入って来るなと言わんばかりの扱いを受けて、困っている所でした」
「この者が、そのような事を?」
「はい。本人にご確認されても構いませんわ」
「おい、お前、そんな事を言ったのか?どうなんだ?」
「うちは王都で一番のお店です。値段もそれなりにします。其処へあのような平民風情が来られても困ると、つい」
「お前が、この店を高く評価してくれているのは嬉しいが、お客様相手の態度ではないな。そもそも、今、お前が言い争っている方が誰なのか、判っているのか?カトリーナ・メルヴィン様、メルヴィン公爵家のご令嬢だぞ」
「そ、そんな、まさか」
「貴方に言っておきます。ただの初見で人を判断しない事。私もですが、この子なんて、こう見えても王妃様のお気にいりなんですからね。今日の事がお耳に入れば、王家の方々は、二度とこのお店を使わないでしょう」
「な、なんと。あの王妃様の?おい、お前、なんてことをしてくれたんだ」
「ま、まさか、その様な方とは。も、申し訳ありません」
「今更謝られてもね~。後悔すると、あれ程言っておいたのに、後悔しないと仰ったのは、貴方ではなくて?ちゃんと覚えてらっしゃいます?」
「本当に、申し訳ありませんでした。うちの者には、後できつく言っておきますので、この場は、これで、お怒りをお静め願えませんか」
「咲姫ちゃん、もういいって。こんな紛らわしい格好の私も悪かったんだし、ね。偶にある事なんだよ、ウンウン」
「だから言ってるでしょ、春香、ちゃんとした格好をしなさいって。こういう事になるから、注意したのに。セシリーさんのお店で買った服、そのまま着せてくれば良かったわ」
「ご、ごめんね、咲姫ちゃん」
「と、馬鹿にされた本人が許してるみたいなので、今日の処は、これ以上言いませんが、どんな相手だろうと、お客様を見下す態度は気に入りませんので、以後気を付けて下さいね」
「は、はい、判りました。申し訳ありませんでした」
「私の教育不足で、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。この店が王都一だと誇ってくれるのは、良い事なのですがね。それを自分が偉くなったと勘違いしてはいただけません。後できつく言っておきます。ところで、今日は、何をお求めで?カトリーナ様」
「この子用の家具を色々。というか、先ずベットとタンスは必須ね。後はテーブル関係も良いものがあれば購入させて頂きます。あ、言っておきますが、王妃様のお話しは本当の事ですので、それを頭に置いておいて下さね。その家具で王妃様と過ごされる可能性が、というか、可能性ではありませんね。確実にご一緒に使われますので、そのお積りでお勧めをお願いします」
「そ、そうなのですか?本当に?」
「この子は、王妃様の事を、愛称で呼ぶことを許されてます。というか、呼ぶように言われてるような子です。それだけで察してください、ね、春香」
「レーネ様の事?うん、そう呼んでって言われてます」
「判りました。私の作った最上の物をお勧めさせて頂きます」
「ニクラス様がお作りなのですか?」
「ええ、元は名もない家具職人でした。それがいつの間にか、お客様に気に入られましてね、この様なお店を持つ事が出来ました、有り難い事です」
「では、お勧めを見せてください。お願いします」
「あら、春香、えらく乗り気ね。どういう事?」
「ほら、私も材料沢山持ってるから、偶に自作するんだけど、本物の職人さんの作品なんて見た事ないから、参考にするの」
「あ、そういう事ね。納得したわ」
店主のニクラスさんから、お勧めの家具を見せてもらいます。さあ、いざ売り場に。
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