使わない理由、なのです
本人方は、登場させるか、思案中なのです。それと、誤字の報告ありがとう御座います。助かりますです。
「え、え~と、ですね、それはその~」
「お嬢様。お嬢様の口からは言いにくい事でしょうから、ここは私が」
「春香では言いにくい事なの?」
「お嬢様にとっては、おそらく」
「ふ~ん。で、どんな理由なの?リリシアさん」
「お嬢様のご家族の悪口は言いたくはないのですが、お嬢様の姉、お二人が原因ですね」
「フェリノア様のお姉様ですか?」
「はい」
「え~と、どういうこと?」
「不思議には思われませんでしたか?お嬢様が昔の話をされた時、開拓村に赴くまでは、食事と呼べない食事が食卓に上っていた、と仰っていたにもかかわらず、最初に村に来られた時、ドレス姿だったと仰ったことに」
「ああ、そういえばそうですわね。でも。一応令嬢なのだから、ドレスくらい持ってても違和感がないと、気にして聞いていなかったのですわ」
「正しくそこなのです。食べる物すら困る様なお家なのにもかかわらず、あのお姉様方は、貴族令嬢なら持っているのが当たり前だと言い張り、服などを購入なさるのです。なので、更に貧しくなるというにも拘らず、気にせずに。
そのうえ、その食事も気に入らないと、我儘を申されては、自分達のみ良い物を食べておいでです。なので、ご当主様や奥様、弟様と、他の方々は粗食を繰り返しておいででしたが、弟君までそうされますと、成長が遅れ気味になられ、同年代の方と比べ小柄に。それを見かねたお嬢様は開拓村に赴かれ、食料を調達される日々を送られるのですが、当時外出用の服を持っておらず、お姉様が買って着れなくなったおさがりのドレスで赴かれた、というのが事実です」
「ご両親はお叱りにはならなかったのですか?」
「フェリノア様が、幼く奥様が弟君と面倒を見られている時、どうしても顔をださねばならない、貴族の集まりに、姉二人を連れて行ったそうなのです。そこで、散々他の令嬢達から馬鹿にされた、と言い始めたのが、事の始まりなのだそうで、それを連れて行った当主様は気に病み、強く言えなかったと」
「まあ、そうだったのですね。それならば、お気持ちは判る気がいたしますが・・・」
「いいえ、違うのです。あれはお二方の気性の問題かと。見栄っ張りの上に気位ばかり高く、傲慢で、勤勉さのかけらもない方々なのです。なので、連れられた場所で、馬鹿にされたというのも、それ程の事は言われていないと思われます。なにせ同じ辺境伯領の貴族の集まりでしたので」
「という事は、他の方より、少しでもみすぼらしかったのが、彼女達自身が認められなかったという事?」
「その通りです。その上、お嬢様の様に、ご両親を手伝われる事もなく、さりとて学問にはげまれるでもなく過ごされておりますので、領民からは避けられておりましたね。で、そうすると、それが気に入らないのか、会う領民全てに見下した言葉を吐かれるのです。流石にそれは見過ごせないと、ご両親もお叱りでしたが、懲りるご様子も御座いません」
「強烈な方々なのね」
「はい。その上、お嬢様が苦労して手に入れた食材の料理を、我が物顔で、召し上がるのです。で、妹に向けて、もっとおいしい物を取って来なさい、それが妹の勤めでしょう、と。
それをそれをお聞きになられたご当主様は、流石に看過できず、姉二人に再教育をとお思いになられたのですが、教育に掛ける費用さえ出せず、項垂れておいででした。もう、お姉様方も分別の付く年なのです。それがその様子では、将来の嫁ぎ先さえと、頭を抱えておいででした。まあ、ご本人たちは、どこ吹く風、という感じなのですが。
私に言わせれば、勘当して、どこかに下働きに出せば少しはましになるのでは、そう思うのですが、ご両親お二人は、預けた相手に迷惑を掛けそうだと」
「まさに、手の施しようもない様な方々ね。よくそんな方が、フェリノア様の傍で育たれたのか判りませんわ」
「いえ、お嬢様の親に言わせれば、そこも悩みの種なのです」
「どういうこと?」
「お嬢様が、良すぎるのです。それはもう村の人もご両親も、会う方、会う方、褒めちぎられるほどに。で、ご自身たちは、先程申しましたように、避けられるような方々なので、嫉妬したうえ、妬ましく思われ、尚更性格が悪くなられるのです。ご両親の妹を見習え、という言葉が特に気に入らなかったみたいで、なお反発されていますね」
「ああ、それは・・・」
「で、最初に戻りますが、お嬢様のお陰で、少しはゆとりが出来た子爵家ではありますが、まだまだ普通の貴族に比べれば、生活は豊かではありません。ですが、まだ、衝動買いを続けてらっしゃるのです、あのお二方は」
「え~と、お店の方にお売りしない様に、ご当主様がお伝えなされば」
「そうすると、店先で、人の目を気にせず、罵詈雑言を吐かれるそうです。他のお客様に迷惑になるので、その手は使えないと言われたそうです」
「あ、試されたのですね、既に」
「そこにです、お嬢様が命の危険を冒して、手に入れたのですが、懐にお金があるなどと伝わった日には・・・」
「日には?」
「妹は、姉に尽くすもの。そのお金を出しなさい、と、言ってくるのが目に見えてます。なので、お嬢様は常にお金のない振りをしておいでです」
「そうなのね~~。でも服くらいなら」
「とんでもないよ、咲姫ちゃん。私が自分たちの知らない、王都の服なんて着てたら、どうしたのか聞かれて、身ぐるみはがされるよ」
「リリシアさん、こう言ってるけど、本当に?」
「はい。お嬢様の言われる通り、間違いなく」
「それが本当なら、うちの父上なら、既に離れに幽閉しているわね」
「うちでも、そうされると思いますわ。余りにも酷すぎますもの」
「離れなんてありませんし、世話させる者もいませんから。うち」
「でも、かなり甘えてある方々なのね。引っ張って行って、魔物の前に放り出せば?」
「一応、あれでも姉ですから」
「春香のその、甘やかしが原因かもね」
「え~、私の所為なの~~?あの性格は生まれつきだよ~、絶対~」
「バランス、なのでしょうね」
「どういうこと、アマンダさん?」
「良い方ばかりの集まりもありませんし、悪い方ばかりの集まりもありません。なので、フェリノア様と弟様が良い分、悪い方を補う様にお姉さま方がお生まれなのかもしれません。それで、バランスが取れる様に」
「あ~、そういえば、どこの家庭でも出来の悪いお方はいますものね」
「はい。なので、下二人が素晴らしい分、余計悪く見えるのかも。それで、周りの目が悪くなり、悪循環なのかもしれませんね」
「う~~ん、そんな難しい話じゃなくて~、姉達がああいう性格で、無駄遣い大好きなだけじゃないかな~。なので、私は、お金がない振りを続けます。絶対です」
「まあ、理由は判ったわよ。大変そうなこともね。でも、服なら買っても、収納に隠しておけばいいんじゃない、実家に帰る時だけ」
「はっ、その手があったんだね。気付かなかったよ。買ったら着ないと勿体ないとしか思わなかったわ」
「春香なら、そんな物でしょうね」
「まあ、理由も判ったし、お店も覗けたんで、夕食の食材の足りない分だけ購入したら、戻りましょう」
「そうですね。早めに食事を済ませて、明日に備えましょう。出来れば基礎上げ、早く経験してみたいですし」
「そうね。じゃあ、アマンダさんもそう言ってるし、早く戻って食事を済ませましょう~」
「「「は~~い」」」
「でも、食事を作るのは、私なんですけどね、咲姫ちゃん」
そんな独り言を呟やきつつ、買い物を済ませ、宿泊施設へと戻るのでした。
楽しく読んでいただけたら幸いです。
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読み手様が増えてくれるのを願いたいです~。




