回想その1です
前世で死ぬほどやり込んだ乙女ゲームの世界に、聞いた事もないフェリノア・アレイシスとして生まれ変わった少女が、人生を楽しんで過ごす為、物語の主人公アナスタシアの動向を観察しつつ誰を攻略対象としてるのか、それに巻き込まれない様注意しつつ、本人曰くこっそりと生きていこうとするお話です。<やらかします>
王都に有る貴族中心の、十三歳から十八歳までの子息令嬢が五年間通う学園の寮に入る為、領地から馬車に揺られ向かう中、私は現在の状況を振り返ります。
幼い頃から前世の記憶があり、この世界の優しい女神様に転生させて頂いた時の事を思い出していました。
前世の私は、幼いころから身体に免疫や抗体を殆ど持たない人間で、ちょっとした事で風邪や肺炎などを繰り返し、家では生活できず、十歳になる頃には国立の無菌施設が有る似たような患者が集まる施設に入りました。
施設内では体力を保つため、散歩の様な軽い運動なんかは出来ますが、建物外に出る事は叶わず、かなりの時間を病室で過ごしました。初めは読書などで紛らわせていたのですが、時間を持て余し気味でした。そんな時、同じ入院患者の女の子からあるゲームを勧められたのです。
そのゲームのジャンルが乙女ゲームなのですが、暇な時少し試したシリーズ物のロールプレイングやシミュレーションなどのゲームの様に少しずつ変わって来ているそうで、勧めてくれた女の子とよく話す様になると、最初の頃は、メインヒロインの高位貴族の女の子が何人かの攻略対象から相手を選び結ばれる物から、容量が増え機種が新しくなると、段々と普段なら結ばれるはずのない下位貴族や庶民からヒロインが出て、今までヒロインだった筈の令嬢なんかが、悪役として登場する物に変わって来たそうです。その頃になるとそのストーリーはオカシイとアンソロジーなんかの書籍で振られた悪役令嬢が、ストーリーを逆転しざまぁするものが出てるそうなのですが、
「それはゲームにならなかったの?」
そう訊ねると、それをゲームにすると推理物やサスペンスなどにジャンルが変わって乙女ゲームじゃなくなるよ~、と笑って話してくれました。そんな乙女ゲームなのですが最新版になると凄い物で、例えると人生ゲームなのです。
<フリーライフ・プリンセス・オンライン>
これが最終的に勧めてもらったオンラインになった、乙女ゲームなのですが、中身が濃すぎて兎に角凄いのです。メインヒロインの公爵令嬢が攻略対象に沿った育成をしていく、と聞けばな~んだと思われがちですが、なんと第一王子なら礼儀作法、騎士団長の令息なら戦略、隣国の王子なら外交、宰相の令息なら内政などと隠しパラメーターがあり、それを上げる為には対応するNPCを探し出して会話して上げて行かなくてはならないというもので、
例えで行くと令嬢はまず、侍女としか交流がありません。その侍女との会話で侍女長の話が出ると侍女長の居場所が、見習い侍女が会話に出ると見習い侍女の居場所が判る様になり、侍女長と会話を進め仲良くなれば、礼儀作法に関する先生や書物の場所、見習い侍女なら、街中での流行や噂話などが聞けるようになるなど、一日で使える時間をどこでどの位使うかで、行ける場所や知識が増えていき、練習場などでの運動能力など様々な事がそれに見合った時間で経過していくなど、押しがあっても、一回目では学園の卒業までに仲を深められないなどザラにあって、尚且つ恐ろしいのは、卒業までに仲を深められて婚約できても、それで終わりではないのです。
卒業後結婚して領地が有るキャラならばその土地で、王族ならば王妃として子育てと内政などこなしつつ、最後に人生を振り返り、ハッピーエンド、トゥルーエンド、バッドエンドがそれぞれの攻略対象キャラに用意されてる、そんなゲームですがNPCそれぞれが何処に居るかも、攻略対象の難易度もそれぞれ違うのです。
地方領主対象キャラでの人生ならその領地の発展や問題などですが、もし王族などが対象ならば、後々その他の地方の問題などの解決なども上がってくるなど、難易度が上がるのです。ですので王子などを最初に攻略しようとしたら、失敗続きで大変な事になります。
そんなゲームを時間の許す限り、主人公の公爵令嬢、アナスタシア・プリムローズとして何年も掛けて攻略していき、裏ルートの攻略キャラなども発見しつつ、やっと納得する終わりが見えた時、私の現実の終わりも迎えることになりました。最後の方はま~、死んでも死にきれないという感じで攻略してたので、やり遂げた、という気持ち半分と、攻略をやり直してみたいキャラもいたな~という気持ち半分のまま、最後の方は滅多に会いに来なかった家族に囲まれ、瞼が重くなるのを感じました。
新しいお話です。宜しくお願いします。