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魔法少女グレイプニル! 〜正義の魔法少女になれない私だけど、魔法少女を助ける為に暗躍します〜  作者: 鈍色錆色
第二編 Bルート 愛と花

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第五十六話

「…………ぅあ?」

「あ、起きたか? おはよう」

「…………うわぁぁぁ!!」


 ニアスが目を覚ますと、隣に知らないおっさんが座っていた。

 恐怖体験に、ニアスは思わず叫び声を上げて飛び退いてしまう。


「誰!? …………いや、ここはどこ!」


 ニアスは現在、ほぼ根なし草の様な生活をしている。

 特定の友人の家やネカフェを渡り歩き、時には野宿することもあった。

 だが、起きたら知らない部屋という状況はニアスにとっても初めてである。


「ここはオレの部屋。お前はオレに負けて、気絶して、運ばれてきた」

「誘拐? …………拉致? ………略取?」

「まぁ、そうなるのか? けど、別に逃げてもいいぜ」

「分かった逃げる」


 布団から即座に立ち上がり、その場から離れようとするニアス。

 しかし、彼女の足は男の、炎堂の手により捕まれ、固定される。


「女の子の足掴まないで。逃げてもいいって言ったでしょ」

「逃げてもいいとは言った。止めないとは言っていない」


 ニアスは炎堂の顔面を掴まれていない方の足で踏みつけた。


「嘘ウソ、ジョーダンだ。足降ろせ。逃げてもいいけど先に話を聞けって」

「話?」

「なぁ、お前、最強を目指す気はないか?」

「私はもう、最強だよ」

「は? 俺に負けたじゃん」

「次やれば、私が勝つ」


 ニアスは負けた。


 売られた喧嘩を買って、炎堂のアパートの駐車場に移動した十分後、頬を腫らせて、体の痺れを感じながら仰向けになっていた。


「なんで?」

「弱いからだよ」


 ぺっ! と、血の混じった唾を吐き捨てながら炎堂は答える。


「お前の敗因は三つある。一つは才能の過信。お前、ちゃんと俺の攻撃を全部見切ったか?」

「見切った。間違いなく。全てを理解した。けど、避けれなかった」

「それが間違いだっての。ジャブは完全に見切ったからといって避け続けられる技じゃねぇ。そして敗因そのニ」


 炎堂は人差し指でフニフニと、倒れたニアスの体をつっつきまくる。


「触んな、変態」

「このフニャフニャの体はなんだ? 才能だけで戦ってきた弊害か、お前ちょっと貧弱すぎるぞ」


 事実としてニアスは殆ど鍛えたことはない。もちろん最低限の運動はしてきたが、強くなる為に鍛えたことはない。にあすにとってそれは、才能のない雑魚のやることだと思っていた。


「その才能なら大抵のやつに勝てるだろうが、『最強』になるのは無理だな。そのスタンスじゃ一生『そこそこ強い』止まりだ。」

「………………ふん」


 露骨に不満そうなニアスを気にせず、炎堂は話を続ける。

 一方でニアスはもう炎堂の言葉を聞くつもりはなく、無視を決め込むと決心していた。


「そして三つ目、心が弱い。負けた事がトラウマになって前よりも弱い。なのに勝負を持ちかけるのは舐められるのが怖いから。覚悟や信念もない。積み重ねてきた努力がないから崩れるのも早い」

「っ!!!」


 だが、その言葉は深く、ニアスの胸を切り刻む。


「ふっざっけんなぁ!!」

「感情のコントロールが下手だし、学習しない。それもまた心の弱さだな」


 炎堂は殴り掛かるニアスの腕を捻り、地面へ押さえつける。


「まぁ、ガキなんて大抵の奴が心が弱いし、戦わないならその方がいい。けど、俺の知ってる『最強』はガキだった」

「!?」

「信じられるか? お前ぐらいの歳の女に、俺とその部下が、一方的に蹂躙され破壊され尽くしたという事実を」

「壊され……? あんた、どこも怪我して無いように見えるけど…………」

「いや、壊されたね」

「…………? っ!」


『最強』の圧倒的強さ。


 それを語る炎堂の全身はブルブルと震えていた。大の大人が、恐怖している。

 心を、完全に壊されている。


「くく、まさかこの俺が『どう足掻いても届かない壁』みたいな物にブチ当たるとは思わなかったぜ。だがしかし、俺の悪運も悪くない。ここに来て、その壁を越える方法を見つけた」


 炎堂の震えが、ピタリと収まった。代わりに、その目。

 ニアスを見つめるその目には、狂気が込められている。


「お前なら、『最強』を超えられるかもしれない」

「なんで……」

「同じだからだ。お前とあの女は。同じ才能。同じ超人。ならば、条件は同等」

「……私と同じ?」


 その言葉は、ニアスにとっても予想外だった。他者の追随を許さぬほどの圧倒的な才能。それによって孤独となり、それにより居場所を手に入れた。


 だからこそ、同じ才能と言われてもピンとこない。


「おかしなことじゃねぇ。超人的な能力は遺伝するからな。遠い祖先が一緒か、あるいは把握してない親族かなんだろう」

「遺伝…………親族」


 居ても不思議じゃない。ニアスは母について何も知らない。父に至っては見たことすらない。

 もしかしたら、血の近しい親族がいるのかもしれない。


「どんな奴だった?」

「ん?」

「そいつ、どんな奴だったの?」

「やっぱ気になるのか? そうだな……最強だった」

「それはもう聞いた」

「静かな最強だった。猪や獅子の様な荒ぶる強さではなく、馬や象みたいな、静かだけどで出したらヤバいって雰囲気がある」

「他には?」

「緑の髪で、服はジャージ……あぁ、あとは()()()()()だ」

「逆? 同じじゃ無いの?」

「同じだけど逆だ。お前は劣化コピー、あいつのは強化コピー。才能(スキル)は同じでも性能(ステータス)が違う。精神的にも身体能力的にも最強だからこそ、どんな技も最強の技となる」


 だからこそ、ニアスは最強になれると言う。

 本物の最強に。

 ニアスは考える。その意味と意義を。自分はどうすべきかを。


「断る」


 そして当然、断った。

 別に最強に成れなくても良かったし、他にメリットがなさそうだったから。

豆設定

墓場の幹部は就任が決定した時点で、己の名前を捨てて、新しい名前を長から受け取る。魔法少女名や他の組織のコードネームと違い、元の名は一生名乗ることを許されない。また、必ず『炎』の文字が入り、組織の敵を焼く炎である事を誓わされる。その性質ゆえに、全員が武闘派である。

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