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魔法少女グレイプニル! 〜正義の魔法少女になれない私だけど、魔法少女を助ける為に暗躍します〜  作者: 鈍色錆色
第二編 Bルート 愛と花

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第五十一話

 超越魔法少女シリーズは、ある種政治的な意味合いを持つ子供向けアニメである。

 つい五十年ほど前まで存在した世間の風潮を止めるために作られた。その風潮とは、『魔法少女と怪異は同一の存在である』というモノ。


 怪異に大切な物を壊された、怪異に大切な者を殺された。

 そういった恨み怒りは全て、魔法少女へと向けられた。


「よくも俺の家族を」「殺してやる! ころしてやる!」「何が魔法少女だ、化け物め」「どうして助けてくれなかったの?」「お前たちの争いに、関係ない私たちを巻き込むな」「気持ち悪い。人間じゃないじゃない」「こんなことして何が楽しいの」


 この時代の魔法少女の死因の多くは怪異による物ではなかった。苛烈ないじめが原因となった自殺、或いは怨恨理由の他殺。


 やがて少女たちは魔法少女としての活動を拒否し出す。

 当然の流れだった。そして、その当然の流れには先がある。

 抑止力を失い、怪異の異常発生と暴走が始まった。 


 地獄


 そうとしか言えないほどの蹂躙。怪異は現代兵器が効かない訳ではない。物理的に存在している以上、通用する。

 だが、()()()()()()()()


 まるで誰かがそう()()したかのように、致命的なダメージを与えようと、殺せない、動きを止めない。


 必然、足止めや拘束に特化した兵器が主な対策になった。


 たが、それも怪異によっては通用しない。その上、怪異は負の感情を吸収して生まれる怪物である。

 追い詰められた人間の思考は、マイナスに振り切れる。


 今回はうまく足止めして逃げることができた。でも次はうまくいかないかもしれない。


 そして、そういった負の感情を吸収した怪異は実際にそういった性質を持って生まれてくる。


 加速する怪異の進化に、当時唯一残った魔法少女組合が立ち上がり、怪異を撲滅する。


 その後、騒動を受け入れた魔法少女の一人が、政府に直訴した。



「私たちは、人間です。私たちを守ってください」



 その発言が、超越魔法少女シリーズの始まり。


 政府は怪異の脅威と魔法少女の必要性を認識し、超越魔法少女を利用して()()()()()()()()()()()()()環境を作り上げた。


 更には同時に魔法少女の実態や必要性を広める為の教材としての役割を持つこのアニメは、公的な資金と可能な限り優秀な脚本家や声優、アニメーター達によって作成され、思惑通りに国民的な人気作品となった。


 □ □ □


 ここまでが、私の知っている超越魔法少女シリーズの概要。


 政治目的に作られたことを知った時から見る気は無かったし、そもそもアニメに触れる機会すら無かったから興味を持たなかった。


「面白いなコレ」


 だが実際に見てみると、なかなかどうして興味深い。

 ()()()()()()に作られていると分かった上で、また魔法少女をやりたくなる。


 気持ち悪いことに面白い。

 だからこそ、気に入らない。


 画面の中では主人公の腕の中で、共に戦った仲間の魔法少女が息を引き取ろうとしていた。

 やがて泣き叫ぶ主人公の腕の中で、仲間は想いを打ち明け、光の粒子となって消えていった。


 違う。


 違うんだよ。こんな綺麗な物じゃない。

 死ぬっていうのは、戦いの中で死ぬっていうのはもっと、もっと赤黒くて、悍ましくて、唐突で、息が止まるような物なんだ。


『こんなふうにですか?』


 いつの間にか、私の正面にアベレージがいた。


 違う。アベレージの幻覚だ。だって、その顔には大きな穴が空いているから。そんな状態で、喋れるわけがない。

 穴の壁面は赤くて、黒い。

 焼きすぎて黒くなった、肉の焦げる匂いが、鼻をくすぐる。


『ひどい欺瞞ですね。こんなモノを作って見せて、私たちを戦いに駆り出すなんて』


 黙れ


『ほら、いいシーンじゃないですか。続き、見ましょうよ』


 なら消えろ


『ほら主人公の子、覚悟を決めて死んだ仲間の想いを受け取ってますよ。貴方もやってくださいよ、コレ』


 うるさい


()()()()()()()。だって貴方は、私のことなーんにも知らないんですから』


「黙れ! 黙れ黙れ黙れ!」


『図星ですか? でもそうですよね。可哀想だから私を助けようとして、偉そうにして、失敗して、目の前で殺されて。私と貴方は仲間でもなんでも無かった』


「違う! お前は幻だ! アベレージはそんなこと言わない!」


『ええ、幻ですよ。でも、貴方だってアベレージ(わたし)のこと、何も知らないでしょ?』


「ッ!」


 穴が、覗き込んでくる。

 私の罪を、直視させる。


『貴方、結局あの時、何がしたかったんですか?』



 □ □ □



「佐藤さん、大丈夫? 顔色悪いよ」

「…………はは」


 限界。迷走。

 また、記憶が飛んでいる。

 私はとうに狂っている。

 今日はちゃんとメジアンのところに行ったんだろうか。それすら覚えていない。


「いやぁ、最近ちょっと勉強し疲れちゃって……大丈夫、聞いてますよ。それで、なんの話でしたっけ」


 私の問いに、白銀先輩は少し困ったように答える。


「うん、今月末ライブがあるんだよ。魔法少女『まじかる⭐︎ショコラ』の」

「…………あぁ、あのアイドル魔法少女の」


 魔法少女『まじかる⭐︎ショコラ』


 広報部『White』のエース的存在であり、近年の超越魔法少女シリーズの挿入歌やオープニング曲を多く歌う人気アイドルである。


「そのチケットが手に入ったからさ。良ければ君も一緒に行かないか?」

「…………行きます」

「無理なら全然断ってくれていいんだよ。体調が悪いならゆっくり休んで考えてからでも」

「いえ、行きます。行きたいんです」


 そうだ。行かなければ、早く慣れなければ。

 自分が魔法少女ではないという、この新しい日常に。

被害妄想にわかアベレージ全開!


豆設定

ちなみに超越魔法少女シリーズの売り上げの一部は、魔法少女学園設立の資金となりました。ちらっと出てくる『魔法少女組合』は学園のことではありませんが、その前身の組織です。

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