第四十八話
魔法少女学園には、様々な施設があるが、学校としての施設は意外なほど少ない。
そのため、基本的に魔法少女は普通の少女として学校に通い、並行して学園に通うパターンが多い。
これは学園の規模が小さいと言うわけではなく、むしろ逆。
魔法少女という兵器を扱う機関に、余分な負担を必要以上にかけないための措置である。
しかし、学校としての機能が無いわけではない。
部活動や委員会などはなくても、複数の元魔法少女の教員による授業を希望者に行なっている。
そして何よりも、戦闘訓練。
十歳以下の魔法少女となりたての魔法少女は任務に出ることは許されず、最低一年の戦闘訓練が必要とされ、その上前者は十歳になるまでは必ず十三歳以上の魔法少女が任務に同行する。
では、その戦闘訓練は誰が指導するのか。
基本的には手の空いたWhiteもしくはゴロテスが担当する。
今回の指導員は魔法少女『アルギア』
やる気のなさそうな青髪ショートカットの少女。魔法少女と思えないラフなコスチューム。
実際、彼女はこういった訓練に乗り気ではなかった。
出来ることなら、他人に手の内を晒したくない。
だからこそ、緩めに、事務的にこなすつもりである。
だが、今回、室内グラウンドに集められた生徒たちを見て、アルギアのそんな幻想は儚く打ち砕かれる。
「ふっ、初めましてだな。我が名は魔法少女クラウン!
以後よろしく」
有効的だが鬱陶しいポーズを取り続ける、厨二病魔法少女『クラウン』
「……………………」
くちゃくちゃとガムを噛み続ける、態度の悪い魔法少女『クタラガ』
「それマジ? え、激アツじゃん! いくいく、明日? 抽選いつ?」
アルギアの方を一切見ずに派手にデコレーションしたピンクのスマホで通話する、黒ギャル魔法少女『ニアス』
関わり合いになりたくねぇな。というのが、アルギアの素直な感想である。
というか、黒ギャルとか厨二病ってまだいるんだ…………アルギアはちょっとした幻想生物に遭遇した気分だった。
「ボ、ボクは今回君たちの戦闘指導を担当するアルギアだ。よろしく」
「うむ、よろしく頼むぞ我が師よ!」
「………………」
「あ、ごめんねー、そろそろ授業。そそ、魔法少女のやつ。ガチウケるっしょ。ってなわけで切るよーまたねー」
アルギアの口元がひきつる。
「じゃ、じゃあまずはランニングから「つかさぁ」
ぺっ、とガムを地面に吐き捨てて、初めてクタラガが声を上げた。
「見た感じ俺ら全員十歳以上だろ? 訓練なんていらねぇだろうが」
そのチンピラの様な立ち居振る舞いに、アルギアはむしろ安心した。
他の二人は異質すぎて、どう対処すればいいのかわからない。だが、クタラガは違う。普通だ。
「なんなら今アンタをボコして証めっ」
それなら対処も簡単だ。叩き潰せばいい。
瞬きほどの一瞬で、クタラガの顔面にアルギアの蹴りが突き刺さる。
クタラガはその一撃で完全に意識を失い、後ろに倒れた。
これであとは放置しとけばいいのだから、アルギアにとっては本当にやり易い。
「さてと、じゃあまずはランニングから始めようか。グランド三周、軽くでいいから走ってきて」
「うむ、任せるがいい」
「ういーす」
目の前で一人の人間が気絶させられたにも関わらず、残った二人はクタラガに目も向けずに走り出す。
やはり、アルギアにとってはこちらの方がやりづらかった。
□ □ □
「はい、そう。これがクラッチの遊び方」
「結構……楽しいですね。本当にこれでプログラミングができるようになるんですか?」
「うーん。まぁ考え方とかは身につくかも。まぁ最初の一歩目としちゃいいツールだと思うよ」
そういうものか。
それにしても、居心地がいい。
他の先輩と違って、この先輩――――白銀先輩は殆ど話しかけてこない。
最低限の説明だけして、適当なタイミングで様子を観に来る。
質問には答えてくれるし、人当たりもいい。何よりも、
「?」
顔がいいのだ、この先輩。
白く長い髪と学生服、メガネ。
なんというか様になっている。深窓の令嬢といった出立ちだ。
独特な雰囲気がある、琴線に触れるというか、興味を惹かれる。
タイプは違うが想起するのは、魔法少女ゴロテス。
見た目だけならハイエンドの方が近い。が、彼女にはゴロテスと同じ、人を惹きつけるモノがある。
私は、パソコン部に入りたい。
だが…………
『あなたは、魔法少女ですか』
あれがなければなぁ〜
豆設定
今回の新人三人のうち『クラウン』と『クタラガ』は今後も任務に出ることを希望しているが『ニアス』非戦闘員組希望。
非戦闘員組も、自衛や非常事態への対策の為、訓練は受けなければならない。




