第四十六話
「ってな感じで、今頃魔法少女ハイエンドは復活してると思うんだよね」
「休ませてくれんか? ワシさっき死にかけたんじゃが」
ハイエンド殺害後、メタルシップは即座にその場を離脱し、予め決めていた目立たない廃墟で魔法少女ギャッカと合流した。
「つか萎えるんじゃが。なんでワシの超大金星を地に落とす様なこと言うんじゃよ」
「え、だってさ、何も教えなかったらこの後自慢するでしょ?」
「…………まぁ、するじゃろうな」
「そしたら後でハイエンドが復活した時、しこたま煽られるよ、他の連中に」
「それは、嫌じゃなぁ」
「でしょ」
ギャッカはリーダーとしての素質が飛び抜けて強い。
不統合同盟はその名の通り全員が違う目的を持つ組織。全員が違う方向を向いた上で手を取り合う歪んだ組織。
その中で実質的なリーダーを務め、その事に対してメンバーから不満が無いことが、彼女のリーダーシップの強さを表している。
経験不足、ゴロテスが関わると暴走するという弱点はあるが、ギャッカはその分、周囲をよく見る。
「気にすることないよ、ほぼ百殺される相手にジャイアントキリングかましたのは事実なんだから」
「おぬし、そんな相手にワシを特攻させたの?」
当然、予め死ぬ可能性が高い特攻であることをギャッカは伝えているし、メタルシップもそれを理解した上で特攻した。
その上で、こうして軽い会話をする事でメタルシップはメンタルを普段の状態に近づけ、その状態をギャッカは観察する。
命を取り合い、その果てに人を殺す。
メタルシップは同盟の中でも比較的まともよりだからこそ、そのストレスも大きい。
「それで、この後はどうするんじゃ? 流石にもう一回挑めば確実に死ぬぞ」
「うん学園は、ハイエンドはもういないと私たちは勘違いしている。という勘違いをしている」
「うん? 学園がコレを口実に動くということか?」
「はは、そんなことしたら『最優』が死んだって他の魔法少女にバレちゃうよ。三枚看板の内の一枚が落ちれば、恐怖で学園のぬるま湯魔法少女達は全員任務に行かなくなっちゃう」
「…………三枚看板ってことは、やっぱり『最奥』って実在するのか?」
「するっちゃするけど…………アレは考えなくていいよ。学園は、今こう考えている。ハイエンドがいないと思っている今、同盟は攻めてくるだろうってね。だから、それに乗ってこちらも攻める」
「? それは相手の手の内じゃないのか?」
「全く違う。相手は存在しない筈の切り札としてハイエンドをぶつけてくるが、こちらはその切り札の対策をした上でぶつかれる」
「ちょっとまてーい! 対策? おぬしそんな物隠しておきながらワシに特攻させたのか!?」
それなら流石にブチギレじゃ!! と、両手をあげて怒りを露わにするメタルシップを、ギャッカは大慌てで宥める。
戦闘特化の魔法少女相手にこの距離で勝てると思うほど、ギャッカはアホじゃない。
「違う違う、対策はまだ全然できてないし、用意してたらこっちが攻め込まれてたかもしれなかったんだ。その場合は最悪の状態もありえた」
ギャッカが想定する最悪とは、同盟全員が一ヶ所に集まったところをゴロテスとハイエンドのタッグに襲撃されること。
だが、今回のハイエンド殺害によって、学園は同盟が攻めてくるのを徹底的な防御陣を用意した上で待つだろう。
「なら、その間にこちらも対策を用意する」
ギャッカは、笑う。全てが手中にあるとは言わない。むしろ流れは学園にある。
たが、その流れを作り出したのは同盟であることは間違いない。
「最強の『時』の魔法に対抗する方法は、二つ
一つ目は最も気高い、聖なる幻想獣の魔法『一角獣』
もう一つは、魔道具。世界に六つしか無い最古の魔道具にして、現在使われていないのは二つ。うち一つは『ゆりかご』が、もう一つは『天内遥』が所持している。
それが、封印魔道具『魔女のゆりかご』」
「さぁ、どちらを奪おうか」
混沌は、常に予想外に蠢く
□ □ □
ずーん
落ち込んでます。ほっといてください。
初戦は取られる。魔法少女名は未だ決まらず。今度こそと思えばボコボコにされ、覚醒したかと思ったら調子に乗る。
どうもカスムシこと、白銀鱗火です。
「いつまで引きずってんだ、いい加減布団から出ろ」
…………いえす。
「テメェ、顔だけ出してんじゃねえよ、ふざけてんのか」
………………いえす。
あ! 痛い! こめかみをつのでぐりぐりしないで!
でます! ちゃんと出ますから。
実のところもう立ち直って、やりたいことも見つけてる筈なんです。
魔法少女を助ける魔法少女になりたいって。
でもなんかやる気が出ないというか、なんというか。
「とりあえず、目標を決めてみろ」
いえーす。
私の目標は、とりあえず毎日十二時間睡眠とかどうでしょう。
「やる気出せクソガキ。コレから、忙しくなる」
はらりと、私の前にいくつもの紙束が落とされました。
どうやら何かの名簿の様な物で、名前といくつかの個人情報が載っています。
「今後は、その情報を基準に行動する事になる。目を通しておけ」
いえーす。
やる気は出ませんが、流石にこの前というわけにはいきません。
ふむふむよむよむ。
うわっ、これヤバいですね。
そのリストは魔法少女、あるいは元魔法少女のリストでした。
絶対に流出させてはいけないはずの、本名や住所、家族構成、悩みなどの情報がぽつぽつとまばらに記載されています。
つまり、魔法少女の弱みです。
「このリストに乗ってる魔法少女を観察し、問題があれば助ける。この繰り返しだ」
…………なぜでしょう。
今何か、キュンと胸が高まる様な気がしました。
この状況が、何か私の魔法少女好きの琴線に触れたのかもしれません。
もう一度、ちゃんと目を通していきます。
「魔法少女は、トラブルに首を突っ込みやすい。学園に守られているとはいえ、闇に入り込み過ぎればその助けも期待できない。まして、何らかの理由で学園の保護を拒否した魔法少女ならば尚更だ」
…………またです。
また、ガノンさんの言葉が引っかかりました。
「コレからのお前の仕事は、そういう英雄気取りのサポート、もしくは救出だ」
キュピーン!
きました。分かりました。理解しちゃいました!!
私に足りなかったものが、たった今分かりました!!
『主人公』です!
私が助けになりたいのは、英雄的で、トラブルメーカーで、戦う理由を抱える、そんな少女です!
推しを、見つけるべきだったんです!
調子に乗るのは、自分がまだ、主人公になれるかもと、心のどこかで思っていたからかもしれません。
でも、それはきっと私のなりたい魔法少女じゃ無いんです。
私がなりたいのは魔法少女を助ける魔法少女。
ガノンさん!
「何だ急にうっとおしい」
決めました! 目標と魔法少女名!
目標そのいち!
この仕事の中で、私は本当に支えたい、『主人公』を見つけます。
目標そのに!
仕事の為にも、目標そのいちの為にも、強くなります!
少なくとも、あの狼の魔法少女を倒せるぐらいに!
魔法少女名は『グレイプニル』
昔、本で読んだことがあります。神様の時代に、最強の狼を繋ぎ止めた、不要なモノを繋ぎ合わせた縄。
勇敢な英雄が使う、サポートとしての武器!
そんな存在に私はなります!
鼻息を荒げて熱弁した私に対して、ガノンさんは一言だけ呟きました。
「頭、おかしいんじゃねーの」
うるせぇ、やるっきゃ無いんですよ!
私は必ず、私だけの主人公を見つけて見せます!
豆設定
最初は冊子で入手したはずの文書が、バラバラの形式で渡されたのは、どうしようもないほどのカスで自業自得で酷い目に遭ってる魔法少女の書類を、ガノンがホチキス外して抜き取ったから




