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魔法少女グレイプニル! 〜正義の魔法少女になれない私は、魔法少女を助ける為に暗躍します〜  作者: 鈍色錆色
第一編 Aルート 斬撃と蟻

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第四十三話

『最優』の魔法少女、ハイエンドと、不統合同盟の魔法少女、メタルシップ。


 時を操る魔法少女と、二刀流の剣士の勝負は、ほんの短い時間で決着した。


 その間、およそ五秒


 □ □ □



 まず動いたのは、メタルシップ。

 二刀を構えたまま、突進。

『変身』の魔法により強化された身体能力で一気にハイエンドに迫る。

 ハイエンドは、振り返り、その姿を捉えた。


 五


 ハイエンドの指が、周囲を浮かぶ領域に触れる


「『領域、(まと)い』」


 瞬時に領域は肥大化、ハイエンドの体を膜のように包み込む。


 四


「『()()()、停止』」


(タイム)』の()()()()()()()


 ハイエンドは、身に纏う領域内以外の、世界全てを停止させた。

 動けるのは、領域内にいるハイエンドのみ。

 その筈だった。


「巡れ、『季節(シーズン)』」


 三


 ぱりん、と。ハイエンドは自身の奥の手である、『世界の時間停止』がキャンセルされたことを感じ取った。

 すでに、メタルシップはすぐそばにいる。

 だが、問題はない。

 今度は周囲に浮かぶ領域内の時を止め、盾を作って攻撃を弾く。


 ギリギリだが、確かに間に合う。


「あ、痛」


 二


 ハイエンドの集中が途切れた。


 不運。

 ()()()()()()()()

 いや、正確にはゴミではなく、自分の血。


 炎城の弾丸が掠めた、額横からの出血が、目に入ってきたのだ。


 炎城が渾身の一発、最後のチャンスを逃したように。

 ハイエンドもまた、不運によってその刀を防げなかった。

 不運は伝染する。

 そして既に、その首元に刃が突きつけられていた。

 刃が皮膚と摩擦を起こす。


 一


 いつの間にか、メタルシップは一刀を両手で持って、渾身で振り切っていた。

 ガン! と、首の骨に刃が当たると同時に、メタルシップは刀から手を離し、衝撃で跳ねた鎖、そしてその先の刀を、半回転しながら掴み取り、その回転の勢いを殺さぬままに、今度は首の反対側に斬りつけた。


 今度は骨すらも砕き割り、ハイエンドの首が宙を飛ぶ。


 零


 決着



『不統合同盟』魔法少女メタルシップ

 対

『学園最優』魔法少女ハイエンド


 勝者

 魔法少女メタルシップ


 □ □ □


 学園の最高戦力の一つを、一組織のメンバーが落とす。

 このジャイアントキリングの成功者は、勿論メタルシップである。

 だが、実のところ、最大の功労者は彼女ではない。


 最大の功労者は、『不統合同盟』の実質的なリーダーでありブレイン、魔法少女『ギャッカ』である。



「『最優』に勝つことは、ほぼ不可能だ」


 作戦の直前、ギャッカはメタルシップにそう言った。


「…………ここで死ねということか?」

「あはは、違う違う。あくまで『ほぼ不可能』。細い糸でも勝つ方法はあるさ」

「本当か? お主の言うことはいちいち胡散臭いからのぉ」

「本当だって、この為にわざわざ『ゆりかご』と契約結んで研究資料借りてきたんだから」


 ギャッカは飄々と、とんでもないことを言う。

 組織内で上下が無い不統合同盟で、その様な勝手が許されるのは彼女だけだろう。


「不快だけど、ハイエンドはあのゴロテスの『最強』と並んで『最優』と評される怪物だ。けどね、その力は殆ど『(タイム)』という無敵の魔法によって成り立っている」

「なるほど…………変身前に殺すということか?」

「それもありだけど、バレバレの罠に引っかかってくれるほど学園も間抜けじゃ無い。今回はね、魔法の裏技を使うんだ」


 魔法の裏技。魔法の細かい仕様の穴を突いたチート技。

 だが、そんな致命的なモノが『時』にあるのだろうか。


「正面から破る方法も実はあるんだけどね。今は実現不可能だから、とりあえず裏技の方」

「だから、その裏技とは何なのじゃ?」

「魔法には、矛盾が存在しない様にする決まりがあるんだ。例えば…………」


 例えば、指定した範囲に雪を降らせる『(スノー)』と、指定した範囲に雨を降らせる『(レイン)』という魔法が存在する。


 この魔法二つの魔法を同時に、同じ範囲に使用した場合、()()()()()()()()()()()()


 そして、もし範囲に差がある状態で、その範囲に()()()がある場合。

 自分の真上にのみ『雨』を使用し、空一面に対して『雪』を使用した場合は、『雨』の魔法のみが発動され、『雪』の魔法は発動しない。

 狭い範囲の魔法が優先され、範囲が広い魔法は()()()()()()()()


「この仕様を利用して、『時』の魔法を無効化する」

「なるほど、それでワシの魔法『季節(シーズン)』の出番というわけか」

「そう、そのカスみたいな魔法が攻略の鍵だ」

「カス言うな」


 魔法番号17番 季節(シーズン)

 指定した範囲の季節を一時的に操作する。

 その影響は天候、気温、植物、カレンダーなど多岐に及ぶ


「指定した範囲の季節を変えるだけ。そのカス魔法が、最強の魔法の突破口になる」

「だからカス魔法と…………もういいわ、好きに呼べ」


 実際に、メタルシップは自身の魔法が使いにくかったからこそ刀術を磨いた。

 それを考えれば、反論は難しい。


「このゴミ魔法は、一丁前に時間操作も効果に含まれる。そして、ハイエンドはスピードを生かした相手には、指定領域()の時間停止で対応する傾向がある」

「ま、速度なんて時間停止の前では意味をなさんからの。なるほど、つまり」


「あぁ。お前はただ、ハイエンドが『時』で世界の時間を止めるの全く同時に『季節』を発動すればいい。それで『時』の魔法はキャンセルされる。出来るか?」

「うーん」


 ギャッカの問いに、メタルシップは答えないまま立ち上がった。



「運が向けば、じゃな」


 □ □ □


 こうして、不統合同盟は『最優』の首をてに入れた。


 後に魔法少女『アベレージ』が盗み出す事となる、その首を。

豆設定

今回、ハイエンドにトドメを刺したメタルシップは、

『雹の構え』を使っている。

鎖で繋がっている事、ステッキは破損しない事を利用し二刀流を捨て、まずは両手で一刀を振るい。相手に刺さった時点で即座に手を離し、鎖を使って地面に捨てたもう一刀を振るうというスタイルである。


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