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第十八話

私の名前は、白銀(しろがね)鱗火(リカ)


現在中学二年生、希望を胸に、登校中です!


「ヒュー、ヒュー …… カ、カ  ヒュー」


だったんですけど。なんでこうなったんだっけ?


あ、ダメです

衝撃で全然思い出せません


分かっているのは、私の足がどっか飛んでいって

それから私のお腹を何かが貫いてった事だけ


あー、声が出ません

貫かれたのはお腹じゃなくて胸だったんでしょうか?

いや、それだと流石に即死してますよね


……死ぬんでしょうか、私




「よぉ、お前、魔法少女になれよ」


……誰? 

目が霞んでいて、よく見えません

何かが、私に話しかけているのは分かります


魔法少女? 私が? マジですか?


「俺の魔法少女になるなら、助けてやる」


あー、どうしましょう


…… 死にたくないなぁ


分かりました、なります。魔法少女


「契約、成立」



□ □ □


「これは、最悪の契約だぜ」

「これでお前は、俺のものだ」


□ □ □


怪異には、種がある

百年前、世界中に()()()()()()それは、周囲の負の感情を喰らい、やがて芽吹く


どんな感情を喰らったのかは、怪異となるまで分からない


「なるほどなぁ」


場所は穏やかな路地、時間は夕暮れ時


「ふざけやがって、ここは中学校の登校路だぞ。おいテメェ、何の怪異だ?」


問いかけの先にいるのは、髪を異様に長くした女

白い大きなマスクを掛けており、殆ど顔が認識できない

女は質問に問いかける


「わたし、キレイ?」

「は、その問いかけが自己紹介かぁ? 有名人は大変だなぁオイ。この結界もお前の能力か?」

「これでもぉ〜!」


女はマスクを外す。隠されたその口は耳まで大きく裂けていた


「はは、何も言ってねぇよ」


口裂け女は一気に距離を詰める

その手には、先ほどまで無かったはずの大鎌が握られていた


「何それ、四次元ポケットにでも入れてたの?」

「あああぁ!」

「怖! ポマードポマードポマード」

「あぁあ!」

「やっぱ効かないから」


怪異は、人間の恐怖を喰らい、その恐怖を再現する

故に()()()()()()()()()()()()()()()

退散するための呪文など、恐怖の情報でないため、取り入れない

当然、いった方もそれを分かっている


ただの、おふざけである



「よっと」


鎌の攻撃に対し、腕の鎧で刃を弾き飛ばす


「!?」


途端に、弾き飛ばした腕から力が抜け落ちる

だらりとぶら下がったまま、ピクリとも動かない


「その鎌……霊障ってやつか? チカラの流れや生命力を断つ的な? 鎧じゃ防げねぇな」

「あぁあああ!」

「クソ、初戦は雑魚がセオリーだろうが!」


鎌の猛追を紙一重でかわす

防御が無効なら、鎧はただ動きにくいだけだ


「契約した途端気絶しちまったから代わりにやるしかなかったけど、かえって良かったかもなぁ。相性悪くて死ねるわ、よっと」


口裂け女の攻撃は速く、力強いものの、力任せに振り回す単調なもの、大振りの後の隙を狙って蹴り上げ、鎌を弾き飛ばした


「!?」


その直後、体が大きく横に吹っ飛ぶ

蹴り上げた瞬間、鎌から手を離した口裂け女が、脇腹に回し蹴りを撃ち込んだのだ

怪異に、武器への執着などない

使えないと分かれば直ぐに別の手段で攻撃する

悪意から生まれた物は、悪意を振り撒くことしかしない


「そりゃそうか、口裂け女つったら、フィジカルが強いと相場が……… あん?」


気づけば、足元からひんやりとした感覚が伝わってくる

その原因は、水

足首ほどまである水たまりが、気づけば路地全体に広がっている

この空間が、口裂け女の作り出した物ならば、


「クソがぁ!」


咄嗟に、空中に飛び退く

その一瞬後、足元の水から無数の白い手が伸び、足先を掠めていった


「…… どういうことだぁ? 口裂け女にそんな要素ねぇだろ」


直感する

何か、まずいことが起きている。ひとまず『飛行』で、ここから距離を……

次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()


「! これは!」


ふと思い至る

怪談には、『逃げられない異空間』は付きものだ

一定距離を離れてもループして同じところに戻ってくる

そんな話が、ありふれている


「逃げられないってことかよ」


そしてもう一つ、分かったことがある


「そりゃそうか、この手の怪談は()()()()()()()()()()()()()()()()


一つ一つの話の怪異が混ざったためか、それとも『都市伝説』に対する恐怖が薄れた結果統合されたのか


いずれにしても、厄介


目の前の口裂け女は、再度問いかける


『わたし、キレイ?』



ずりずりずりずり


同時に地面や壁を5()()()が這いずり回る


『コックリさん、コックリさん。おいでください』


口裂け女の口がさらに裂け、歯が獣のようにとがる

同時に頭からは狐耳のようなものが生えてた


「イメチェンか? 似合ってねーぞぉ」


動物霊、動く5円玉、呪文


そう言った恐怖する点だけを雑に取り入れた怪異



怪異『都市伝説の女』

それは忘れられた恐怖の化身


□ □ □


正面から踏み込み、粉砕する


小細工をする相手は、小細工ごとブッ飛ばす


「『アーマーバッシュ』」


シンプルな鎧での突進、故にこそ、相手が反応する前にその五体を粉砕する

はずだった


技を使うとほぼ同時に口裂け女はスライドステップで突進の軌道から外れていた


()()()()()()()()()()()()()()()()()


『予言』


コックリさんは未来のことも知っている

それもまた、恐怖の一節だ


「なら!」


あえて、突進を止めない

こちらが止まれば、それは『隙』だ

ならば、このまま路地を突き抜けて、またループさせればいい


おそらく、ループは構造ではなく状況に働く

『ふりだしにもどる』という奴だ。つまり、最初に口裂け女に対峙した状況まで戻る

突進のエネルギーを持ち越したまま、ループを発生させ、再度突進する

この流れを繰り返して、予言を破る


そう考えていた


また、空間に声が響く


『私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの』


「!」


突進の直ぐ後ろで、口裂け女が鎌を振りかぶる


背後への空間転移!


鎌が振り下ろされる。絶対不可避のタイミング


「『分離(パージ)』!!」


咄嗟に、動かない片手の鎧を弾き飛ばす

鎧の破片が鎌の側面に衝突し、僅かながら鎌が逸れた


本当に、油断ができない


しかし、これで隙ができた

ここだ、ここしかない。残った片腕で、拳を放つ

全力の一撃


()()()()()()()()()()()()()()()()


細く、白い糸のような姿に変化し、拳は虚しくからぶった


『くねくね』あるいは『スレダーマン』

そう呼ばれる都市伝説の要素


口裂け女はその姿のまま、か細い糸のような手で、鎌を横に構える

草を刈るように

歪んだその顔の口端が、勝利を確信したように歪んだ


だが、勝利を確信したのは口裂け女だけではない


「言っても無駄だと思うけどよぉ、お前、俺の姿に違和感を持たなかったのか?」


口裂け女の鎌の刃が、滑るように近づいてくる



()()()()()()()()()()()()()()。こい、『(ソード)』」


その手に現れたのは、一振りの剣

波紋のない、西洋風の、美しい装飾の剣だった


ぐるりと、自分の体を半回転

同時に縦に半円を描くように、剣を振るう


必然、口裂け女の、鎌を持つ細い腕が、切り落とされた


「四次元ポケットなら、俺も持ってんだよ」


魔法番号53 『騎士(ナイツ)

高い防御力の鎧を装着する魔法

状況に応じて、五種の武装を召喚できる


『赤い紙と、青い―』

「遅え」


能力の発動に、問いかけが必要。それはこの距離では、あまりにも遅い

口裂け女の体が、上半身と下半身で、バッサリと切り落とされた  

口裂け女は、上半身のみを動かしてなんとか戦闘を離脱しようとする


「あぁ、そんな都市伝説もあったな。逃さねぇよ」


上半身だけとは思えない速度の口裂け女を、後ろから追撃する


「こい、『戦斧(ハルバード)』」


手元から剣が消え、代わりに槍と斧が融合したような武器

ハルバードがその手に握られた


「お、らぁ!」


一撃粉砕

口裂け女の体を貫通し、地面にもヒビが入る

ヒビは拡張され、そして

悲鳴と共に、世界が砕け散った


□ □ □


「よし、動くな」


先程まで動かなかった手をグーパーにしながら、呟く

登校時間を大幅に過ぎたためか、周囲に人影はない


「悪いが、初戦闘と初勝利は、俺がもらうぜ、契約者さんよ」



□ □ □


魔法少女グレイプニル ここに爆誕

都市伝説の女

びっくり箱みたいな敵

あまりに多数の都市伝説が融合したため、一度使った能力がしばらく使えなくなるのが難点

こいつより強い怪異はあんま居ない

未来予知、防御無視、逃走無効、条件即死、背後転移、拘束、変形などの多彩な能力で相手を翻弄した。


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