第十六話(第◾️話)
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(ミ ツ ケ タ)
(ここが)
(ターニングポイントだ)
(介入できるのは)
(三度だけ)
(一度目は成功し、救世主は降臨した)
(二度目は、ここだ。)
(コレで、世界は書き変わる)
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「よっと、よっ、ほい!」
そんな、警戒な掛け声と共にボールが何度も宙に浮く。声の主は、二十歳ほどの女。
紫がかった黒い髪を一本のおさげにし、ビジネスカジュアルな服を着た、知的な印象を持つ顔立ちの女だった。
女は楽しそうにホールを蹴り上げ、重力に従って落ちるボールをまた蹴り上げる。女は所謂、リフティングをしていた。
額に汗を浮かべながらも、本当に楽しそうにボールを蹴る姿は、とても爽やかであった。しかし、実際に見るものが『爽やか』という印象を持つことはないだろう。
理由は三つ。
時間が夜であり、場所が人気のない深夜の学校の校庭であり、そして何よりボールが人間の生首である為だ。
それはあの『最優』の魔法少女の首。
ゴロテスが取引に乱入した際に、有耶無耶になっていたもの。勿論一連の騒ぎの後に、ゴロテスや情報屋は首を探したが、何故か見つからなかった。
それが今、ここにある。
何度も何度も、女によって足蹴にされている。
「楽しそうね」
そんな女に、声をかける人影があった。
月明かりに照らされる顔はボールにされている生首と同じモノ。
彼女こそ『最優』の魔法少女『ハイエンド』
黒く長い髪、ハイライトのない黒い瞳。黒を基調としたセーラー服の、14歳ほどの少女。
闇から生まれたような、別の世界から来たようなそんな魔法少女である。
「はじめまして、勤勉の魔女さん」
「………そっかぁ」
『勤勉の魔女』と、そう言われた女は、ピタリと生首のボールを足先で止めて、ハイエンドの方をじっと見つめ、それから納得したような声を上げた。
「なるほど、全然先の展開が霞んで見えないと思ったら、君が原因かぁ。あー、そっかそっか。その領域は、確かに私のチカラの外かぁ」
「話が早くて助かります」
すんなりと、魔女と魔法少女は通じあう。明らかに、何か認識できない理を前提として会話していた。
「なるほど、それで? 私に何か仕事を持ってきてくれたのかい? 極めて重要で、嫌になる程大変な仕事を、私にくれるんだろう?」
「えぇ、貴方にはちょっとした『事件』を起こしてもらいたいんです」
「……なんでもいいの?」
「えぇ、お好きなように」
その言葉に、魔女は三日月のような笑みを浮かべた。
同時に、グシャリと片足でホールドしていた生首を踏み潰す。目の前で自分の生首を踏み潰されたハイエンドは、変わらず無表情のまま出会った。
「さてと、じゃあこれから運命が書き換わるねぇ」
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「みんなー! ありがとー!」
満員のライブ会場で、マイク片手に声を張り上げる魔法少女がいた。
愛と花のアイドル魔法少女『まじかる⭐︎ショコラ』
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「マスコットは、私たちの味方なんだろうか」
一人、疑問を抱いた魔法少女がいた。
戦争と破壊の魔法少女『ピース』
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「魔法少女学園を断罪しよう」
魔法少女学園の罪を知った魔法少女がいた。
刃と物質の魔法少女『パレット』
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「…………」
そして、同盟を創りし魔法少女は、沈黙を続ける。
◾️◾️と◾️◾️の魔法少女『◾️◾️◾️◾️◾️』
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魔女は、ただ笑った。
今回で本章のストーリーは終了になります
次章からは時系列が少し戻り、主人公も変わります