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第十二話

「『銀騎士』……」

「ゴロ、テス?」


 夜の森の中で、二人の魔法少女が邂逅する。

 かたや学園最強と呼ばれる魔法少女、かたや野良にも関わらず学園の魔法少女を助ける白銀の騎士。


 二名の注意が、一瞬だけ完全に互いに集中する。


 そして、『不統合同盟』はそれを見逃すほど甘くない。


「五連装填熱線(レーザー)


 短い『熱線』が四つ、それぞれに二つの光速熱線がゴロテスと銀騎士を襲う。


 ゴロテスは咄嗟に直感と先読みのみで回避する。

 銀騎士に至っては回避すらせず、正面からはたき散らした。

 撃ったのは無論、魔法少女『ラスト』である。


「化け物。でもいいんだ、()()()()()()()()()()()()()()()

「おい、一番当てたいところって、私の足かよ」


 ラストが撃った『熱線』は五つ。最後の一つは、魔法少女『ギャッカ』の右足のつま先だった。


「うん、おはよう、ギャッカ」

「かすった小指が蒸発しやがったぞ」

「いいじゃん。私なんて、目と耳が無くなっちゃったよ」

「それは私がやった訳じゃねぇよ」


 二人の、黒いマントをつけた魔法少女が立ち上がる。


「…………『(スモーク)』」


 魔法番号46番 (スモーク)

 体のあらゆる場所から煙幕を出す。煙幕は音や気配を反射し、レーダーの類も無効化される。


「『ホワイトアウト』」

「「!」」


 その瞬間、全員の視界が真っ白に染め上げられた。

 ゴロテスはその直前、体に白い煙を纏ったギャッカが、楽しそうに笑ったのを見た。


「再変身」


 煙の中で、ラストの声が響き渡った。

 煙が音を反射、広く反響する為、正確な場所が分からない。

 ここで、ゴロテスと銀騎士は同じ問題に突き当たる。

 もしここにいるのが自分と敵だけであれば大技で周囲一体を攻撃し尽くせばいい。

 だがゴロテスと銀騎士はお互いにお互いが邪魔でそれが出来ない。

 銀騎士の防御力ならば自分(ゴロテス)の攻撃にも耐えるかもしれない。だがその保証はない。

 ゴロテスが噂通りの怪物であれば、自分(銀騎士)の奥の手にも耐えるかもしれない。だが噂は当てにならない。


()()()()と」


 煙幕はすぐに晴れた。

『煙』のカードがギャッカのステッキから排出されたことで、その効果は強制的に消え失せた。

 晴れた煙幕の先では、煙幕の張られる前と変わらず、()()()()()()()()()、ギャッカとラストが立っていた。


「いやいや、無理無理。逃げれないって。『煙』は煙の動きまでは誤魔化せないんだし、そっちは二人いるし、こっちも二人いるし、そっちのかたいっぽゴロテスだし、ダメージ全然抜けきってないから立ってるのがやっとだし」

「………」


 こくり、と。同調する様にラストも頷く。

 ゴロテスと銀騎士は、警戒を緩めない。その言葉を信用するだけの根拠がない上に、ラストは再変身をしている。どんな魔法を使ってくるか、まるで分からない。


「じゃ、頼むよラスト」

「ん、(チェーン)


 魔法番号88番 (チェーン)

 目視した二つのものを、鎖でつなげる魔法。出せる鎖は一本のみで、物理的な破壊は不可。使い手の意思、もしくは時間経過により解除可能


「なっ」

「コレハ!」


 ゴロテスの右腕と、銀騎士よ左腕が、一本の鎖で完全に繋がる。


「いや、いやいや。勘違いしないで欲しいんだけどサァ。私も愛しいゴロテスとどこの馬の骨かも分からない鎧を繋げたくはないよ。でもさ、こうしとかないと変身してない私は速攻で死んじゃうし。さっき見たいな不意打ちみたいな動きは封じとかないとね」

「ソモソモ、ナゼ変身ヲ解イタ?」

「………なんでお前にそんな事言わないといけないの?」

「……君は何故変身を解いたんだい?」

「さすがゴロテス! そこに気づくとは凡人と視点が違うね。愛してる! 女神! それはね! これを取り出す為なんだ!」


 ウキウキと、ギャッカは懐からスマートフォンを取り出す。


「変身したら元の服や身に付けていた物は消えちゃうからね。えーと、これをこうして、と。ほら、見てよコレ!」


 そう言ってギャッカはスマートフォンの画面を見せつけてくる。


「バス?」


 そこに映し出されたのは、バスの中のカメラ映像だった。


「ただのバスじゃーないよ。ちょっと早送りするねー」


 バスの中の時間が一気に進む。やがて車内に何人もの人間が入りーー


「!」

「……最悪だね」


 車内に入って行く人間は、全て幼く、同じ服と帽子を着けていた。


「そう、()()()()()()()()だよ!」


 早送りは更に進み、やがてバスの中の園児たちは居なくなり、黒いローブを被った少女が入れ替わる様に現れた

 ローブを深く被り、顔までは分からない。

 少女は幾つかの座席シートに手を入れ、何か黒い機械を仕込んでいく。

 アンテナと、幾つかの回路が組み込まれた黒い箱の様な、おそらくは爆弾。


「うー! という訳で! 私がアジトに戻らなければ、次の日登校! 登園? した子供たちは、仕込んだ爆弾で爆発四散! 享年4才! みたいな事になっちゃいます」


「「!」」


 予想していたことを、予想より遥かに明るく言われて、ゴロテスと銀騎士は唇を噛み締める。


「じゃそういう訳で、ラスト、頼むよ」

「うい、じゃあしっかり掴まってね」


 ラストはギャッカを抱え上げ、宙に浮かぶ。


「じゃあね!」

「逃すと、おもうのかい?」


 そのまま、夜空に飛び立とうとした二人に対して、ゴロテスは睨みを効かせる。


「ゴロテスは逃がしてくれないだろうけど、()()()は違うみたいだよ」


 ゴロテスの右腕から伸びる鎖を、銀騎士はしっかりと掴んでいた。


「駄目ダ」

「退けよ。君も分かっただろう? 一般人を平気で巻き込むあの子達を野放しにすれば、今後も被害が出続ける」

「最優先ハ、子供ノ命ダ」

「勿論、子供たちは助ける。あのスマホから動画データを解析して、特定する」

「間ニ合ワナイ」

「間に合わせるさ」

「……アノ爆弾アンテナガ付イテタ。遠隔デ、爆破デキル使用ダ」

「…………」

「気付イテタナ」

「あぁ、そうだよ」


 □ □ □


「それにしても、いい具合に勘違いしてくれたみたいでよかった」


 空の上を滑る様に移動するラスト、その腕の中でギャッカは話す。その言葉に、ラストは首を傾げる。


「勘違い?」

「そう勘違い。ハッタリが効いたみたいでよかった」

「……爆弾は仕掛けてないって事?」

「いや、仕掛けたさ。ただ、()()()()の事を、銀騎士が脅威に思ってくれてよかった」

「?」

「ゴロテス一人なら、全部ひっくり返されてたって事さ」


 □ □ □


「ナゼ、子供ヲ見捨テタ!」

「? 見捨ててないよ」

「…………何?」

「遠隔操作型だろうがなんだろうが、起動させない様に完全に拘束して仕舞えばいい。仲間にも連絡を取れなくすれば、タイムリミットは変わらないだろう」

「出来ルト、思エナイ」

「出来るさ」


 ゴロテスはそう言い切る。人によっては傲慢に聞こえるそのセリフは、紛れもなくゴロテスの本心だった。


「私なら出来る。……いや、『出来た』か。流石に変身出来ない今の私じゃ『飛行』で飛んでった相手には追いつけないからね」

「……ナゼ、変身シナイ?」

「出来ないんだよね、それが」

「出来ナイ?」

「そう、出来ない。と、話しすぎたね」


 ゴロテスは笑顔のまま、()()()()()今度は、自分から。


「僕はね、ストレスとか溜め込みたくないタイプなんだ。そして、仕事は早めに終わらせる」

「!」

「今から、10分ぐらいで、君をボコボコにして、捕まえて、幼稚園バスも見つけて、爆弾を取り除いて。ひとまずの仕事は終わり……うんいけるな」


 銀騎士の体が、強張る。

 鎖を通して伝わってくる、魔法少女でも裏社会の人間でもない、()()()のプレッシャー。


「ただ、()()()()()()も同時にこなそうか」


 ゴロテスが、笑う。

 先程までは、穏やかに。

 今は、凶悪に。


 魔法少女ゴロテス

 あまり知られてないが、その本質は『戦闘狂』である。

豆設定

ゴロテスは戦闘狂だけどやることはちゃんとやるし優先順位はちゃんとしている。昔は後先考えないタイプであったが、経験の中で克服した。今のゴロテスの戦闘狂は『連続、長期の戦闘が苦にならない』というメリットの側面が強い。

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