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新神くんとでこぼこフレンズ  作者: 花招舞
第一章 冒険の始まり
9/10

序盤にラスボスが出てきちゃったお話

久しぶりに一本出します。過去最長……


 とりあえず宿に部屋をとって集まった俺達だが、隣の少女が何故かじっと俺を見つめている。やっぱり大ジャンプはマズかったかな。怒らせた?

 俺がどう謝ろうかと考えていると、彼女は唐突に口を開いた。


 「……王子、さま?」

 「へ? いやいや、王子だなんてある訳ないよ。ただの冒険者、リュージだ。君は?」

 「ああ、まだ名乗っていませんでしたね。私はネイロスト王国第一王女、エイラ=フォン=ネイロストです。この度のご助力、ありがとうございました」

 「え、王女なの? むぅ……」


 面倒事に首をつっこんじゃったよ、全くもう。王女がここに居るってバレてないよな。入り口は普通に通過したけど、まさかこんなとこに王女が居るなんて思わないよな。一応索敵かけてみるか…………あ?


 「ちょっといい?君……貴女を襲ったのは魔物だけだったの……ですよね?」

 「ふふっ。どうか敬語はお辞めください、貴方は恩人ですから。えーと、確かオーガだけだったと思いますけど、何か?」

 「ちょっと厄介なのに囲まれてるみたい。後でギルドに行きたいから付いて来れる?」

 「よく分かりませんが、ついて行けば良いのですよね。今からでも構いませんが」

 「んーと、でも魔力回復薬を買ってからにしたいんだけど」

 「それなら私も付いて行くので、そのまま向かいましょう」




———————————————




 「本当に良かったのですか、安価な物で」

 「良いんだよ、寧ろ俺にはこっちの方が合ってるしね」


 売っていた魔力回復薬には二種類あった。一つは固定値で1万回復する物、もう一つは最大値の1割を回復するもの。普通の人は固定値の方を使えばそれこそ全回復とも言える効果が有るが、俺は例外。1万回復したところで雀の涙でしかない。一般人はあまり買わないせいか、割合回復の薬は人気がなく相当安かった。


 ギルドに着くと入り口に大柄な男が立っていた。俺と目が合うと同時、僅かに安堵の表情が見えた。


 「ガイロスさん、お話があって参りました。今、時間大丈夫ですか?」

 「ああ、僕も君を探していたところさ。ささ、入ってくれ」


 冒険者ギルドの中は、昨日と同じ様子が広がっていた。


 「ところで君、一緒に居るのって王女殿下だよね。王国内の全ギルドに捜索依頼出てるの知ってた?」

 「いえ、捜索依頼に関しては全く知りませんでした。俺は森で見つけて保護しただけですから詳しい事情は知りません。やはり国王の弟さんだと面識が有りましたか」

 「なるほどね。王女殿下の件については後で王城へ知らせておくとするよ。となると、この町の包囲は黒幕の仕業かもしれない。大体理由が分かったから町の騎士に捕縛を頼んで来るね」


 町で起きた争いごとの鎮圧を騎士として働いている彼らに全て任せるのは当然のことだ。しかし今回ばかりはそうはいかない。


 「お待ちください、彼らから何か嫌な気配を感じます。俺も同行しても宜しいでしょうか」

 「同行ぐらいなら構わないよ。でも嫌な気配ってどういう事か気になるね、勘か何かかい?」

 「勘じゃないんですけど…………索敵で感じた魔力がですね、神気に近いんですよ。でも変に濁ってて……」


 二人で話していると、急に頭に直接響くような声が聞こえてきた。


 『それは邪神の神気の残棒ね。本体が出てきたら私達の出番だけど、今回は騎士たちでも多分大丈夫よ』


 俺はこの声に聞き覚えがあった。他の二人が身構えるのを手で制してから続ける。


 「ミリル母さん、急に念話で話しかけないでよ。二人が驚いてるじゃん」

 『だってー、タイミング分かんなかったんだもん。』

 「この声は誰なんだい」

 「あー、えっと。育ての親、っていうか魔法の師匠のミリル母さんです」

 『どうも~。リュー君の()()の、ミリルです!』

 「で、邪神がらみってことは、もしかして勇者案件?」

 「直接戦闘じゃないからつぶしちゃっていいと思うわよ」


 下界に降りて初日で、かなりの面倒事に首を突っ込んでしまったかもしれない。

 邪神については前に詳しく聞かされたことがあるが、詳しくは知らない。それでも今の俺では勝てる可能性は低いとまで言われた相手だ。極力戦いたくない。


 「これって少なからず邪神が絡んでるんだよね。まともに戦ったら被害は逃れられないんじゃ?」

 『うーん、確かに人族には厳しそうね。竜人族(ドラゴニュート)森人族(エルフ)ぐらい居てくれたら話は違ったかもだけど。 それならリューくんが精霊でも呼び出せばいいんじゃないかしら?』


 確かに精霊召喚は最も現実的な手だといえるだろう。自分で出て行って倒す手もあるが、それでは遅れて到着する場所が出てしまう。その点、数で押せる精霊ならば今ここで呼んで散開させればいい。


 「人数は……200人ぐらいか、軍隊並みだな。回復薬あるしこっちも軍隊で行く?……それをするとなると周囲の環境への影響が………、うーん…………」


 精霊を呼ぶと少なからず周囲の魔素が乱れる。町で使うためには気候変動を起こさないように注意が必要だ。


「おっと、向こうは待ってくれないみたいですよ。町の柵を超えたようですね」


 余程俺を信頼してるのか、落ち着いた様子でガイロスが言う。目線の先では、壁に付蹴られたランプが赤く光っていた。

 俺はさっき買ったポーションを2本、ぐびぐびと飲んだ。こうなったら全力で期待に応えなきゃな。


 「もう力押しで進めます!流石にここで召喚使ったら建物がどうなるかわからないので、外出ますね!」

 「了解したよ。召喚を使うとなると君でも詠唱省略は無理だよね。援護は任せな、僕はこれでもギルドマスターだからね」

 「ありがとうございますっ」


 ガイロスさんの実力を俺は知らない。しかし彼はギルドマスターだ。きっとある程度、場合によってはこの状況を鎮圧できるほどの実力なのではないかと思う。

 外に出た俺は、周りにいた人に逃げるように言った。多少人が残ってしまったが、多分魔法を使い始めたら逃げるだろう。……余程鈍感で無い限り。


 右手を掲げ先端に魔力を収束させる。そのままそれを媒体として精霊に呼びかけようとするが、周囲が急に暗くなった。上空に現れた者は言う。


 「我が名は【竜王】デザス、偉大なるお方に加護を授かりし者だ。矮小な人族など普段なら見つけ次第食っているが、喜べ!あの方に我らの餌として飼うことを許されたのだ。これに反対するものは出てくるが良い。我が直々にっ!…………………此処にも馬鹿が居るか。良かろう、相手をっ!」


 なんかムカついたから、右手の魔力の発散も兼ねて、《巨雷槍(メガ・サンダースピア)》を放ってみた。一発目は不意打ちだったにも関わらず避けられ、2回目は威力を上げてみたが、それも避けられた。

 一応、音速より速いはずなんだけどなぁ。これを避けるとなると、範囲攻撃じゃないとダメかな。『反逆者』なら手はある……あれ?さっき竜王って言ってた? 


《鑑定》


 称号:竜王 ——【侵略者】xxxxxxxの名の下に竜王の座を命じられた者。


 侵略者、即ち邪神。地球があった世界も、魔法が使える世界も、同じ天界を中心に広がる幾つかの世界のうちの一つだ。そのような世界の塊は幾つか存在し、塊どうしは互いに不干渉なのは常識であり規則である。しかし邪神は、何らかの目的でそれを無視した神のことだ。見学目的の時もあれば、遊戯感覚の破壊目的の時もある。後者の場合は武力をもって解決するしか無いので、地上における『制限』が一時的に緩くなるのだ。

 どんな技を使おうか考えて悩んでいると、それを恐れと思ったのか、悦びに満ちた笑い声がした。


「お前、鑑定を使ったな。どうだ、怖気ついただろう、助けを求めたいだろう!今ならまだ同族と共に飼ってやってもいいのだぞ、さあ決めるが「あ、ちょい黙って」」


 ずっと話してて五月蝿かったので《上級結界》を発動した。頭が痛いな、魔力を無駄遣いし過ぎたか。まあ、さっきの結界で当分出られそうに無いから、どうにかなりそうだけど。此処からは楽しい蹂躙の時間だ!


 「ちょっと皆さん下がってくださいね。あ、ガイロスさん、町の建物が多少壊れちゃうかもなんですが、良いですか?」

 「あ、ああ。それよりも、僕たちは逃げるべきなんじゃないかな。相手するの?無理だよね、逃げるよね、ねえ!」


 強くて優男って感じだったギルド長が端っこで座り込んでブルブルしてる。なんか面白いんだけど、弄ったら失礼っていうか、可哀想かな。街の破壊許可は貰えたから良しとしよう。


 『我は調停者、第一権能の許可を申請する』


 残った魔力を使って念話の要領で唱えると、同じく念話で返ってくる。


 『…………其の力をもって何を望む』


 微かに掠れた声が、低く大きく響く。この行為は説明を受けたことはあったが、使うのは初めてだ。俺の望むものは何かと言われると困る。世界平和か、それとも平穏な日常か。いや違う、俺はそんな先のことを考えていない。そう、俺が欲しいものは——


 『反逆者からの救済』


 あ、これダメなやつなのか?もっと大義名分的に相応しい感じのことを言わないといけない?


 『…………許可する』


 案外呆気なかった。直後、空から降りた巨大な光の柱が街全体よりもさらに大きな範囲を包む。それは段々と小さくなり、最後は俺に収束した。

 周りにはこの光が見えていないので、何が起きたか分からない様子だ。それもそのはず、光の柱を構成していた『神力』は神以外に認識できない。それを極度に薄めたものである魔力しか認識できないのは、地上で神力を使った時に周囲の人間が倒れないようにするための神々の配慮らしい。

 第一権能のうちの一つ、神界からの力の補充。魔力や神力は通常、体内で作られるものだ。しかし、外部の濃度が極端に高い場合、呼吸によって取り込むことができる。神界は神々から漏れ出た神力が充満しているため、神力を使う素質はあるが魔力しか扱えない俺みたいなのは一瞬で魔力を全回復できた。


 左右の手のひらを向かい合わせ、間の空間に魔力を充填させていく。ズン、と聞こえるほどの強烈な気圧変化をもたらしながら手のひら程の大きさの魔力玉が形成された。全ての属性を均等に流し込まれたことで虹色に光るその球体は、圧縮され小さくなるが、直後には魔力を充填される。大きくなったり小さくなったりを繰り返すそれはまるで心臓の鼓動のよう。

 しかしそれは、そこにあるだけで引きずり込まれるような感覚を引き起こす。横でまだガクブル状態の人が数人いたが、ガイロス含め彼らも危険を感じて離れていった。俺が右手を空高く掲げると、意思に従い魔力球は屋根程の高さまで浮かんでいく。


「其は天を統べる者、光を剣とし、全てを貫く覇者

 其は地を統べる者、生死を司り、万物を癒す賢者

 天地創造の代行者よ、我が魔力を糧に今一度参れ

 汝の力の一端を以て破壊と創造を掌握せよ


 ———我はここに、神権の執行を宣言する《終焉の再来(サモン・ラグナロク)》」


 詠唱の終わりと共に魔力球が爆発を起こすが、その本質は魔力であるため爆風は起きず被害は少ない。多少魔力耐性が弱い人が倒れ始めたぐらいだ。

……………そんな中、エイラ王女だけは綺麗ですねぇと言いながらうっとりした目で眺めていた。

 

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