謎のお姫様
名称を「新神様のでこぼこフレンズ」に変更しました
森でオーガに襲われた少女、長いので襲われ少女でいいか。その子が全然起きる気配無しだったので、暇だから探偵ごっこしながら待つことにした。
まず騎士の服装を見てみた。全ての鎧に同じ柄が入っている。右にドラゴン、左に虎。火を吹いているのは虎ではなく、まさかのドラゴンの方だった。そこはドラゴンだろ、虎じゃないだろ、そうだよな、だよ…な……。あれ?俺が変なの?ていうかこの鎧どっかで見たよ、忘れたけど。
少しは魔力が回復してきたので少女に《清潔化》掛けてあげた。すると海のような青のドレスがキラキラと日光を反射するようになった。柄は…珊瑚?でもこの国って内陸国だよ。憧れなのかな?
「この子全然起きないなぁ。いっそこのまま担いで帰る?それモラル的にアウトじゃね。異世界だから良いのかな?うん、大丈夫だよね!」
俺なんも悪く無いよ?だってこのままだと魔物がまた来るかもだし?ずっと地べたでは可哀想だし?本当は殺気を放って魔物避けだってできるけど、俺はそんなことは知らないんだ。そんな高等技術をこの俺が知る余地すらないんだ!うん。俺は何にも知らないよ、そう、何にも。
どっちから来たか忘れたのでとりあえず跳べば何か分かるかな?魔法で…とか思ったけど、まだMP3桁だ。勢いよく地面を蹴って飛んでみた。
(ドゴーン!)
「ひいぃいぃ!?」
街は……、あった、こっちか。さっき飛び上がった時の音に断末魔の叫びが混ざっていた気がする。気のせいだよね。そうだと信じたい。ここに来る途中の森で着地に失敗して、衝撃波で簡易広場ができたからから余計に怖い。この謎インフレ能力値のせいなんだよ。今度本気でリミッター作れないか調べてみよ。
着地はスタッと静かに降りれた。あー、やっぱり起きてたよ。まあ、楽だから良いんだけどさ。夢がこう、ね。グチャッと鳴って、ボロボロっとなったわけだよ。
「ひいぃ!魔物さんですか!?盗賊さんですか!なんでもするので命だけはお助けくださぃ。私食べても美味しく無いですよ、不味いでずよ、食べないでくだしゃぃ!いのぢだけは!いのぢだげはどうかっ!(ぐすっ…)」
「ちょっと待ったー!倒れてたのをいきなり爆音で起こしたのは謝るよ。だけどね、だけどさー、君助けたのも俺だからね。俺、オーガじゃ無いよ!よく見て!」
「ぐすっ…。だしかに、オーガざんじゃないですね。でもなんで私生きてるんですか?騎士さんと使用人さんみんな死んじゃってるのに。私も引き裂かれて、死んだ…は、ず……? 傷がない? これって回復魔法ですよね。回復魔法ってここまで綺麗に治るんですか!?」
回復じゃなくて蘇生なんだけど、一度はあの世に行ってたとか言っても怖いだけだろうな。自覚したらあの世で見た記憶とか思い出したりするのかな?気になる、すごく気になるけども。やめといた方がいい予感がする。
「ああ、回復魔法上手いだろ。小さい頃から練習してたからね。おっと、それよりも早く森を出なきゃな。自力で歩け…なさそうだな」
襲われた時のことを思い出したからだろうか、それとも殺された遺体達を見たからだろうか。彼女の足は震えていた。問答無用でお姫様抱っこの姿勢に入ると、さっきよりも強く蹴り出して森の上を往く。また広場ができたかもしれないが、あとは森を出るだけだし、周囲が開ければ誰かが遺体にも気づいてくれて一石二鳥というやつだ。
「予想着地地点は……、街の真ん中!?え、あ、《飛翔》!!」
(ドゴゴゴゴーーーン!!)
結局魔力がすぐに切れたせいで門番さんの目の前に着地、いや墜落したが、辛うじて街の外だったので許して貰いたい。許してね。
焦る俺、驚く少女、動じない門番さん。門番さんそれで良いの?まあ村の外っちゃあ外だけどさ、今のは流石に俺でも出動事案だと思うよ?
「この大跳躍?飛翔?何回か繰り返すうちにだんだん慣れてきました。我ながら恐ろしいですー」
「頑張ればもっと早く走れるんだよ?やってみる?」
「それは私を下ろすのが先がいいと、切実にお願いしたいですー」
そんな嫌がる?ジェットコースターよりもずっと速いけど、真っ直ぐしか進まないからそこまで怖くないんだよ?
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その頃、とある王城にて
大きな城の中を慌ただしく走る男がいた、彼はこの城の騎士で、先ほどまで旅に同行していた。
「ご報告申し上げます!王城に帰還中の王女様の隊列が魔物の襲撃により壊滅っ!私を含め騎士2名のみ帰還しましたっ!」
「どう言うことだ!近衛騎士団がついているのでは無かったのか!?」
近衛騎士団は国の中でトップクラスの人材だけを集めた超精鋭集団だ。大抵の魔物なら群れだろうと1人で対処できる実力がある。そう、大抵の魔物なら。
「はい、近衛騎士団60名、うち24名が任についておりましたが、ほぼ全員が戦死したと思われます。相手はレベル130のオーガでした」
「レベル130だと!?災害級じゃないか!なぜそれほど成長するまで魔物を放置していた!状況確認を急げっ!」
「「はっ!」」
慌てふためく側近たち。王女の生還を祈る者もあれば、それを嘲笑う者もある。そんな中に一際黒い笑みを浮かべる彼もまた、側近であった。
次話投稿は来週です。