近衛騎士団
お待たせしましたっ
俺は今、白金の鎧を纏った人に担がれている。俺はまだ転生から10年しか経っていないが、見た目だけは少し前から20歳に満たない程度で止まっている。側から見たら俺は巨大な荷物か何かに見えているんじゃなかろうか。
「お、兄ちゃん起きたか。運がよかったな、森で倒れて無傷で戻ってこれるなんてめったにない奇跡だぞ。見つけてくれた隊長に感謝しな」
「そうそう、もし僕らが通りがからなかったら死んじゃってたかもしれないんだよ」
俺ってそんなにやばい状況だったのか、転移してきただけなのに。最後の衝撃で気を失ってしまったが、あれは慣れたら耐えられるようになるものなのかな。どちらにしろ、もしまた転送陣を使うことがあったらどうにかしないといけないと分かった。
「あのー、あなた方は?」
「ん?ここらじゃ見ねえ顔だと思ったが、近衛騎士団の鎧を知らんとは。お前さんよっぽどの辺境から来たんだな。俺はネイロスト王室所属の近衛騎士、アルベストだ」
「同じく近衛騎士で彼の弟のルーベストだよ。それにしてもなんであんな所に倒れてたの?」
「俺にもよく分からないんですけど、転移したら強い衝撃が襲ってきて気が付いた時には担がれてました」
「お前さん転移が使えるのかっ! 格好からして冒険者だとは思っていたのだが……まさかAランクとかか?」
冒険者?ランク?もしかしてこの世界にもギルドとかがあったりするのだろうか。爺ちゃんから教わったのは、主にお金の使い方と宗教概念だった。この世界には魔法があることもあってか神様の存在は広く知られており、時代によっては使徒や勇者なども居るらしい。ちなみにクラス転移事件は神が行ったので扱い上は使徒となる。こんなことならたくさん教わっていたのだが、ランクが何かって話は聞いたことがなかった。
「あ、あのー……ランクって、何ですか?」
ここは隠さず聞いてみることにした。アルベストさんには冗談だろうと笑い飛ばされてしまったが、弟のルーベストさんが教えてくれた。
「その感じだと本当に冒険者ギルドを知らないってことだね。それにしても、君はどっから来たんだ?」
ここで天界から来ましたとか言ったら、絶対騒ぎになるだろうな。あんまり喋ってもボロが出そうだし、それっぽく誤魔化して別の話題にしなくては。
「俺は今まで山奥で修行をしてました。そのためここら辺のことはよく分からないんです。それよりも冒険者ギルドって、どこにあるか知ってますか?」
「もちろん。そろそろあそこに街が見えてきたでしょ。門通って直ぐ右側にある建物で、杖と剣がクロスしてるマークが目印だよ。」
「ありがとうございます。それじゃあお先に失礼しますね。《身体強化》」
「えっ、ちょっ!」
大きな地響きを起こした俺ーの姿は1秒と待たず豆粒ほどまで小さくなった。
「あれでギルドの新人ってことになるんだろ。実は勇者様とか使徒様だったりするんじゃねえのか」
「もしかすると僕たちは歴史に残る瞬間に携わってしまったのかもしれませんね」
「はっ。ちげえねえ」
2人の兄弟はあながち間違ってもない予想を出し合いながら談笑に耽るのだった。
お目当ての看板を見つけると、意を決して扉を開ける。右手には木造で少し大きめのカウンター、正面にはなにやらたくさんの紙が貼られた掲示板、左手には近代風な喫茶店があった。俺は直感的に仕組みを理解して右手へ向かうと、机の向こうに立っていた女性に声をかける。
「すみません、冒険者登録ってここで大丈夫ですか?」
「はい。その歳で初めてとは珍しいですね。冒険者は事故や怪我が付き纏う職業なので気をつけてくださいね」
会話をしながらも着々と書類の準備が進んでいく。そこで忘れていたことを思い出すことになった。
「書類が用意できたので最後に鑑定でステータスを見させていただきますね。」
ここに来てすぐに騎士団と遭遇したため、ステータスの確認作業をできないでいた。何が見えるのか知らないが自分が知らないまま他人に見られるのは避けたほうがいいだろう。
「あ、すみません。ステータスはまだ自分でも見たことがないので先に一度確認してみても良いですか?」
「ステータスを? まあ、それでしたら別に構いませんよ。終わったらまた言ってください」
「ありがとうございます。じゃあ、《ステータス》」
名前:水波隆二
種族:神族
年齢:10(18)
職業:調停者
称号:転生者 神と成りし者 大賢者 剣聖 拳王
レベル573
HP:659200 / 659200
MP:3784900 / 3785000
魔法適正:火 水 風 土 光 闇 空間 時 破壊・創造
魔力操作能力:1916500
物理耐性:57200
魔法耐性:83160
腕力:43910
脚力:521800
うーん…。他を知らないから数字に関してはよく分からないが、少なくとも種族と称号は安易に知られてはいけない気がする。それに職業はどうなってるんだよ、調停者とかなった覚えは無いんだけど。このままは流石にまずいからとりあえず隠せないか試してみよう。イメージは隠したい部分を塗り替える感じで…
《偽装》
おお、ちゃんと書き換えられる。それっぽく書き換えてっと。
名前:リュージ
種族:人間族
年齢:18
職業:魔法剣士
称号:賢者,剣聖
レベル57
HP:65920 / 65920
MP:378490 / 378500
魔法適正:火 水 風 土 光 闇 空間 時 破壊・創造
魔力操作能力:191650
物理耐性:5720
魔法耐性:8316
腕力:4391
脚力:52180
一先ずこのぐらいで良いだろうか。これから冒険者として生きていくわけだし、過少申告しすぎるのも良くないな。
「ステータスの確認終わりました。手続きの続きお願いします」
「はい、では記録用に鑑定をさせて頂きますね」
体に妙な感覚がくる。包まれるような、撫でられるような奇妙な感じだ。これが鑑定を受けた感覚なのか。これなら何もない時に感じたりしたら誰だって気づくから勝手に情報を見られたりしないのは安心だな。
急に受付の人が大きく目を見開いて顔を覗き込んできた。
「えーと、これは…」
「はい?」
もしかして偽装を見破られたか?数字を1桁づつ下げたのはやり過ぎだったか。そっと受付さんの顔を見てみる。
「申し訳ありませんが、偽装ステータスのままでは登録できません。この場で偽装解除するのが厳しければ奥の部屋で伺いますので」
!!!!!!!!
なんかバレてる。さて、これからどうしようか。