プロローグ
投稿を開始しました。趣味で進めていくのでよろしくお願いします。
俺達は今、天界の雲の上で、神様の前に居る、らしい。本当に神様かどうかは知らないが、こんなところで神を名乗っているのだから、きっとそうなのだろう。
俺たち桜岬高校二年B組はさっきまで、水泳の授業をしていた。晴天の中、急に雷が落ちてきたと思ったら、この有様だ。きっと俺らは死んでしまったんだと思う。
「君たちには異世界に移住してもらうことになった。家族と共にそれぞれの地に住んでもらいたい。」
ちゃんと天国に行けるかな、などと考え始めていた俺だがその考えにはすぐに訂正が入ってしまった。急に転移させられた俺たちからすれば全くもって生きた心地がしないのだが、雷以外で何か別の方法無かったのだろうか。
異世界の文化向上のため、とかで家族と一緒に異世界に飛ばされるようだ。一応、環境に適応できるだけの体にしてもらえると言うのでありがたい。しかし、魔法が使えるかは適正次第らしい。向こうには魔法があるのか、もし適性無くても魔道具とかなら使えたりするのかな。希望に胸を膨らませていたら、クラスメイトの村上が肩を叩いてきた。
「おっす、りゅーじ。そういやお前、家族居ないだろ、どうすんだ?」
そう、俺は生まれつき孤児と言うやつだ。親の顔を知らない。村上司、彼は基本的には良いやつだ。困っているとすぐに駆け寄ってくれる。彼の唯一の欠点と言えば、相手が一番気にしていることを軽く言い当ててしまうことだろうか。せっかくの興奮が一瞬にして無に帰した気がする。
「俺のことなんてほっときな。」
「ふーん、あっそ。」
それはともかく、今は俺の話だ。このままだと、異世界で孤独死なんて可能性もあり得る。目の前の自称神様も俺の事情を知ってか察してか、話しかけてきた。
「すまないね。水波隆二君、君達には悪いことをしたと思っている。貴重な日常を奪ってしまったことを謝りたい。しかしもう、元の世界に戻すことはできないのだ、許して欲しい。」
「そんなことを言われても…」
思わず言葉が漏れてしまった。でも、これは自分でもさすがに仕方ないと思う。俺だって、知らない土地に一人で放り出されるのは御免だ。何がなんでも阻止したいところだが……、俺は悟った。否、悟らざるを得なかった。これはもう遅い、と。神様の手の上には俺たちが住んでいた街が映し出されている。しばしの間皆で眺めていて、自身の知っている街と決定的に違う所を見てしまった。無いのだ、そこにあったはずのものが。
「君たちを異世界に連れて行くにあたり、元の世界での君たちの存在は『無かったこと』になってしまっている。すまない……」
「うそ…だろ…」
これってもう拒否権とか無いのかな?俺は異世界ぼっち決定ってこと?それとも会ったこともない親が付いてくるのかな?
「君が親だと思ってる人でない限り着いて来んよ。じゃがその点についてはちゃんと対処しようと思っておる。これから儀式をするからじっとしていてくれ」
「え、儀式って、何…の……」
神様に手をかざされると、体の中を熱の塊が駆け巡る感覚がした。質問しようと思ったが時すでに遅し。急激に意識が遠のいていった。
朝か。どれほど眠っていたのだろう。全身がとても重い。しかも視界がやけに明るい、眩しすぎて何も見えない。……………思い出した。おれはさっき眠くなって、倒れてしまったのか。となるとここはまだ天界ってことか。でも他の生徒の姿が見えない。起きてから数分が経つが、まだ目が慣れてなくて見えていないのだろうか。
などと思っていたが、誰かが来て現実に引き戻される。
「気がついたようじゃのう、水波君。君の処遇について話し合った結果だが、君には我ら神々と同じ体となり、十分に成長したのち、地上で暮らしてもらうこととなった。」
え、神々と同じ体?十分に成長?俺はもう17だぞ、何言ってんだ?昨日とは違う人だが、目の前の相手は神であることは雰囲気で感じ取れた。それでもその神様が言うことには流石に謎が多すぎた。
「あぇ、えあぅ?うぁ!?」
………‥‥………。
滑舌が回らない、というか、体が全体的に動かない。
「申し遅れたが、わしの名はザノビス。君が言うところの生命神をやっておる者じゃ。君が寝ているうちに転生の儀を済ませておいた。それと、神とは永久の時を『生きる者』じゃ。当然生まれた時は子供で、肉体限界を超えたら死ぬのじゃよ。そのため君には十分な力を手に入れるまで、ざっと10年ぐらい神々の庭で過ごしてもらうことになるがよいかのぅ。」
なにそれ、俺だけ転生しちゃったとかそういう系統?俺ってこれから神様やんなきゃなんないの?でも10年修行って長くないか。神様なら体を成長させたりもできるんじゃないのかな?
「いくら生命神とて、神の体の成長に干渉する事はできんよ、数人掛かりで作り出すことはできてものぅ。安心せい、ここで10年過ごそうと、地上に降では10日しか経ってない。クラスメイトとも会うことができるやもしれん。」
ああ、それなら大丈夫か。って俺、置いて行かれてねえか…。まあいい、いつか会えるなら。でも力を手に入れるつっても、どれぐらい強くなればいいんだろうか。この際頑張って世界最強でも目指してみようか。ん?今、俺は喋ったか?
「あぁ、言って無かったな。神は慣れてさえくれば念話の応用で相手の考えることがわかるでのう。」
俺の考えてたこと全部聞こえてたの?それに今更ながらなんで俺だけ神に転生してんだ?
「君を転生させたのは…、簡単に言えば君のためじゃよ。我々は人の未来の運勢をおおまかにだが、知ることができる。君の未来は………前途多難じゃった。」
えっ?前途多難って何?俺トラブル体質か何かなの? そんな未来が待ってるなら、早く言って欲しかった。いや、言われても同じか。
「それはー、ほら、あれじゃよ。まあわしらにも細かいことは分からなんだが、力がないと困ることは確かじゃ。それに、力は君の願いを叶えるためにも少なからず必要になってくるじゃろうて。じゃから転生させたのじゃよ」
わしら相手なら、念じれば会話ができるでのぅ。当面はそうすると良い。」
なるほど、そう言うことだったのか。もしかして、これも『適応できるだけの強さ』の一端なのかな。もしそうならかなり恐ろしいぞ?どうせ10年は天界に居るなら今はできるだけ考えない方が良いのかもしれない。
それにしても、『願いを叶える』か。俺はとにかく仲間が欲しい、信頼できる仲間が。俺には家族が居なかった。それが原因で学校でもいじめにあって、孤児院に帰れば周りから『弱い』だの、『根暗』だの言われてたんだ。半ば強制的に17年に及ぶぼっち生活を堪能し、一生このままなのかという不安さえ忘れてはじめていた。もう俺は友達も家族もできないんだと思っていたが、突然舞い込んできた異世界行き。これはもしかすると奇跡なのかもしれないな。そう考えると、これも悪くないかも。どうやら神様にもなったらしいし。これからの生活が楽しみになってきた。
次話もよろしくお願いします。