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序
小さい頃から泣き虫で。
記憶にある自分はいつも泣いていた。
おかあさんに怒られて泣き
走って転んで泣き
絵本の中の主人公が可哀想で泣き
アイスを落として泣き
そして
ピンチの時に助けてくれた
彼らの優しさに
いつも泣いていた。
まるで物語に登場する
騎士に守られたお姫様みたいだった。
私は、幸せだった。
平凡な人生だったと思う。
恋をすることもなく、
子供を持つこともなく、
こうして人生が終わりを告げようとするこの瞬間に
目を閉じれば
彼らの顔が浮かんでくる。
私の名前は零。
何もない。
あるのは彼らがくれた思い出だけ。
私は、彼らに何もしてやれなかった。
私を守ってくれた5人の騎士たち。
人生がもう一度あれば
今後こそ私は彼らを
救ってあげたい。
神様、
私の願いを、
どうか叶えてください。
──これは泣き虫姫と五人の騎士の物語