大ボス
両開きの大きな扉。
この扉の向こうに我らが大ボスがいる。
トントン。
「失礼します。上月です。」
「あ、上月くん?どうぞ〜」
中から陽気な女性の声がした。
「失礼します。」
もう一度、断りを入れてから扉に手をかける。
中には正面に大きな机と、壁ぎわには本棚がある。
その大きな机に座っている女性、“片野咲”。全体的に小柄だが、怒ると手がつけられないひとだ。
この人こそ、我らが大ボス。
秘書の“片野海♂”さんと双子の兄弟であるが、今は海さんはいないらしい。
「ただいま帰りました。」
「うん、おかえり〜。」
彼女は笑顔で自分の帰還を喜んでくれたようだ。
「咲さん、海さんはどうしたんですか?」
「んー?ちょっと、ね。調べて欲しいことがあってさ!」
“調べて欲しいこと”か。
「それより、上月くんの成果が知りたいな。」
「…。彼は、完全に記憶を失っているように感じました。自分の能力や、あの学校の事ですらも忘れているようです。あと、彼の友人を名乗る男に、気になる人がいました。」
これくらいしか成果がないのが現状だ。
もう少し実のある成果をあげたかったが、分かっているのはこんな物だ。
これで咲さん、もとい、大ボスはどこまで納得してくれるか分からない。
咲さんはここまで何も喋らず、ただ真剣な表情で微動だにせず聞いている。
「…うん、まぁ…そうだろうね。」
予想してた通りだよ。
と、彼女は続けた。
表情は見えないが、彼がいなくなって一番辛いのは片野兄弟だろうから、思う所があるのかもしれない。
「…上月くん、海くんが帰って来たら、また仕事してもらってもいいかな?今度は2人で行って欲しいから、シゲくんと一緒に。」
「…………………。分かりました。」
「ふふ。」
余程嫌な顔をしていたのだろう、彼女は少し微笑み、
「大丈夫。きっと上手くいくから。」
「…はい。…失礼します。」
「またね〜!」
手まで振る彼女を後に、大ボスの部屋を後にした。
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