ありがとぅ
"あの部屋"を出た後、外はもうすっかり暗くなっていた。
空を見上げていると、今まで押し込めていた感情が押し寄せてきた。
<巻き込んでしまったのでは?>
<あいつを快は知ってるのか?>
<あの言葉をどう思う?>
<なんでむらっちがきたんだ?>
<なんで、嘘までついてくれた?>
…そして、
<助けてくれてありがとぅ>
言いたい言葉はたくさんあったのに、どれも言葉にはならず、「あ〜…」だの、「その…」だの、意味のないものばかりが口から漏れる。
快「あ〜…すっかり暗いな…この分だと飯抜きは決定だな〜…腹減ったなぁ、哉は?」
哉「そ、だな…」
快「だよな〜…まぁ、いっか。あ!お前アレやった?あの宿題!あの…えっと、能力開発Ⅰの。」
哉「まだ、だけど…」
快「だよな〜…だいたいよぉ…」
いつものように、何事もなかったように話す快に、俺はやはり、罪悪感でいっぱいだった。謝らないと。謝らないと…
哉「快、あの…」
<ごめん>
快「ん?なんだよ?」
哉「だから…」
<ゴメン>
快「はっきりしろよ、」
<巻き込んでゴメン>
とうとう下を向いてしまった。快の顔が直視できない。
これじゃ、だめだ、ダメ、なのに…いつもみたいに、笑って、気楽に返せばいいじゃないか。 何事もなかったかのように、、
心ではそう思うのに、顔の筋肉は引きつくだけ。
"笑う"って、どうやったけ?…あれ?
おれが笑い方を考えていると、快は呆れたようにため息をはいた。
っ… 分かっている、のに… ため息って、こんなに恐ろしいものだったのか。
快「あのな、哉。お前何か勘違いしてないか?」
か、んちがい?
快「そうさ。あのな、お前多分、おれに…謝りたいとか思ってんだろ?」
ッ!?
快「やっぱな。あのな、哉。苦楽を分け合うのが友達だろ?ましてや、大親友のピンチに駆けつけないわけないだろうが。お前が苦しいなら、俺だって、さくらだってしんどいんだよ。楽しい時はみんな一緒に楽しいんだ。だから、俺の今回の行動は当たり前なの!だから、謝るな。」
思わず目頭に涙がたまる。あぁ、
快「それと、無理に笑おうとするな。」
ばれ、てたんだな…
快「それだけだ。」
あぁ、俺にはこんなにいい奴らが側にいるんだな、としみじみ思った。
快「ほら、帰るぞ。」
スッと目の前に差し出された手。
顔を上げれば、月をバックに眩しいほどの笑顔で俺に手を差しだす快がいた。
それはもう、多分一生忘れられないほど美しい光景だった。
その手に自分の手を重ね、そして、バシッと叩いた。
快「痛っ?!」
哉「ヘッ…さ、帰るか〜」
快「ちょつ?!謝れよ?!マジ痛かったん「帰ろうぜ?」
今度は俺が手を差しだす。 そして、奴の手が重なり、また同じようにバシッと叩かれた。
哉「痛いな。」
快「思い知ったか!」
なんて会話した後、二人で大爆笑。
なんだ、笑えた。
笑えた。
哉「快!」
先に歩き出した快の背中に向かって突進して、
そう、言うべきセリフは、
哉「ありがとぅな!大親友!!」
<ありがとぅ>だった。
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