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書こう作家と幼馴染  作者: akmmdk
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幼馴染に振られると思ったけど告白したらOKを貰った


「カズト、私はあなたのことが好きです」


魔王城に向かう決選前夜。

月明かりが照らす中、彼女、ハルは言った。

「好きって……」

「役立たずで前のパーティから外された私を、カズトは迎えてくれました。

回復術を間違えてばかりだったですね、最初の頃は」

「でも君は、パーティに必要なヒーラーに育った……」

「ええ、それもみんなあなたのためです…、カズトがいてくれたから私は頑張れた。

大聖術士とまで言われるレベルまで育って、前のパーティに偶然であったときも」

「すごい大けがしてて、それでも無言で回復させてたよな」

「これも、育ててくれた私を見せたくて」

「それで、なんで俺のことが」

「……わからないのですか、私はあなたにいろいろ貰ったことを

この装備だって、あなたから」

「それは仲間だから……」

「でも……、私は好きです。カズト……、あなたはどうなのですか……」


―――


「どうなのですか…、だー知らねえよ…俺に聞くなよ」

ディスプレイの前でタイプしている和哉。

当然、全部、今書いてる小説の内容だ。

カズトはハルに告白を受ける。

だが、カズトは前世の恋人ユキのことが忘れられない。


「この場合、ユキのことを忘れるのか正解か、それともハルに乗り換える……

ハルと新しい愛を見つけ出すべきか」

和哉は新しいテキストエディタを開いて、タイプする。


―――

ハルと付き合う。

ハルと付き合わない。


―――

「いや、いっそのこと付き合ったあとで前世の世界に戻ってユキともう一度合わせるとか」


―――

ユキと出会う。前世の世界に戻る。


―――


「異世界ものの約束といったら前世の世界に一度戻って再び異世界に行くってのがあるから

それでもありかもしれん、だが決選前夜って言ってしまったしなあ……クソ」


ハル…、当初はただの回復術士の仲間ってだけの設定だった。

だが、こんな急展開にしたのは、和哉に現実で衝撃的なことがあったからだ。


「告白を受けたのは初めてだよ、どうすりゃいいかな」


そう、和哉は日岡晴菜に告白を受けた。

当然、フラグを立てた形跡もないのに。いきなりだった。

「そして、雪菜は葛城と付き合ってるかも知れない……、いや下手したら付き合ってる……のか?」

最後まで疑問形なのは認めたくないからと和哉は思った。

ただ、それでも、時間だけはたっていく。


そして、和哉はキーをタイプする。


―――

カズトは……、何も言えなかった。

否定も、肯定も。

そして、どうにかして言葉を振り絞るように放つ。

「最低な答えだけど、どう答えればいいかわからない。ただ、魔王を倒してから必ず向き合おうと思う」


―――


和哉は呟いた。

「結局こいつ、答えを先延ばしにしただけじゃねーか、自分で書いてて最低だよな」


時間は2:30……夜も遅いし明日(起きたら)学校だからこのまま眠った。



眠りから覚めた和哉。

だが、半覚醒の状態のまま横になってたので寝た気はしていない。

それでも、食事と洗顔を忘れず、学校に向かった。


「あ、おはよう、和哉」

「……、おう」

校内の下足置き場で雪菜に声をかけられる和哉。

「また小説書いてて夜遅くなったの?正直、寝る時間確保しないと駄目だって」

上履きに取り替えながら雪菜はいう。

それに続けるように和哉は答えた。

「……才能、ないからな、俺……、だから数だけでも書かないと……」

「そんな状態でまともな代物が書けると思ってるの?」

「思わない……、先、行けよ……、俺は少し遅れると思うから」

「ふーん、無理、しないでね」

雪菜は先に教室に進んだ。

「……眠いな……、やっぱり、保健室で休むか」

そう言って、和哉は保健室に向かう。



保健室のベッドに横になって和哉は思った。

――サボってしまったな……――

世界史の罰レポートが終わってないからだけではなく、

ただ、雪見雪菜に合うことが非常に気まずかったからという青臭い理由からだ。

あのバーガー屋で雪菜と葛城は何を話していたのか?

昨日から何をやっても頭の中でこびりついて離れない。

それは日岡陽菜に告白を受けたこと以上に気がかりだった。

それに対してどう向き合って答えるかという問いに対して。


「それに対してはもう答えは出ているのか……、最低だな、俺って」

和哉は布団の中で呟いて、誰も聞いていないよな…これと思いながら眠った。



保健室の扉が開く。

「和哉、いる?よね、寝てるのか……」

雪菜の声だな、と和哉は思った。

雪菜は何も言わず、その場を離れた。


保健室の先生、どうしているんだろう……

和哉は思う。

少しして、目が覚めたら誰もいなかった。

どっかに行って掲示物でも貼っているのだろうか?

正直、そういうことを調べるのも悪くないかも知れないな、と和哉は思った。

それを調べて、話にどう活かせるかわからないが……

保健室の扉が開く。

「すみません、調子悪いんでベッドで寝ていてもいいですか?って和哉くん!?」

「日岡さん……か」

保健室に来た女の子は、昨日告白を受けて保留してる人だった。


「眠れなかったんです。どう言われるのか気になってしまって」

それを本人に言うのか……と、和哉は困惑した。

「勇気を出して、言っても本命がいるんでしょう、和哉くんには」

「……仮に、本命がいたとして、いたのがわかって、なんで告白したの」

違う、この質問は卑怯だ。と和哉は後悔する。

「それでも好きだから……、この気持ちはどうしようも出来ないです」

陽菜は答える、そうだ、これ以上の理由がない。あってたまるか。と和哉は思った。

「なら、俺も答えるべきだと思う。俺は雪見雪菜が好きだ」

「そっか」

和哉の答えに、陽菜はそう答える。

「あいつさ、いつもいたから、イヤなところもいいところもわかるんだけど

いざ、離れると、どうしようもなく、寂しくなるんだ……」

だから和哉は思う。

どうせ離れるなら、当ってぶつかってからの方がいいと。

「正直、君に告白されてうれしかった、と思う。

だけど、葛城の野郎と一緒にいた雪菜を見たら非常に焦った。どうしてその場に俺がいないのかって」

こんなこと、告白してくれた人に言うのは何か違う気がする。

ただ、言いたかった。

この思いを伝えたかった。

そして、自分に対しても嘘はつきたくなかった。


「だから、今日、雪見雪菜に告白しようと思う」

「そうですか、和哉くん、がんばってくださいね」

和哉は十分眠ったため、ベッドから出て、教室に戻ることにした。

そのまま、入れ替わるように陽菜と入れ替わった。

陽菜はベッドの中で静かに涙をこぼした。



教室に戻り、授業を受ける。

そして、雪見雪菜をチラ見する和哉。

クラスの前の方にいる葛城もついでに和哉はチラ見した。

二人とも、真面目に授業を受けていると思った。

途中から入った数学の授業は、ノートを取る前に半分消されていた。

とれなかった部分はあとで祐司にノートを借りよう。と和哉は思った。



「それで、私をここに呼び出して何のようなの?和哉」

時間は進んで放課後。

怪訝な表情で和哉を見る雪菜。

それもそのはず、ラブコメの舞台になりそうな歩道橋にわざわざ連れ出されたからだ。

雪菜は何を言われても驚かないぞという面持ちだった。

「いや、どうせなら、もう少し夕暮れとか、もしかしたら夜が良かったかも知れない」

「部活までサボって何の用なの?」

何を言えばいいのだろう。

和哉は雪菜に自分の感情のままを吐露したい。

この関係が壊れることも。

雪菜が自分の思いを知って困惑することも。

彼は本意ではなかった。

できることなら、このままでいたい。

この想いを秘めたまま、ぬるま湯につかって彼女と共に過ごしたい。

だが、彼の知ってるラブコメの主人公はそうじゃなかった。

「打ち切りが決まった主人公ってさあ、いろいろ張った伏線を、

これでもかって言う感じで、いや、一気にたたむというかな」

「3ページで締められたら真面目に神展開で伝説になるわよね」

関係のない話題を語り、必死に自分の感情を整理する。

雪菜は和哉の面持ちを見て何かを察した。

「そうだよ、俺が小学生時代にお前に借りて読んだ少女漫画、

なにげに面白かったの覚えているんだよな。

それが、ライトノベルとか小説とかに入っていって。

それから、俺だって何かを書きたいと思うようになったのは」


昔は何を思っていたのか。

和哉はどこにでもいるゲームが好きで漫画も好きなただの小学生だった。

だけど、幼馴染の女の子の家によく出入りする奴でもあって、

年齢を重ねる毎に、それは恥ずかしいことだと思うようになって。

いつしか、お互いに行かなくなった。

「小6の頃に図書館で面白い本とか教えて貰ってたら、

木村の野郎どもが俺たちをからかってたから、

なんかお互いつるむのがイヤになって結局中学の頃は何も話さなくなったよな俺ら」

和哉は必死に昔のことを物語る。

「……そうだね、あいつらさあ、

男女が一緒になってるだけで恋人同士だとかなんだとかでからかってきたよね、

それに反応する私も子どもだったってだけの話だけど」

雪菜はそれに懐かしむように肯定する。


「でもさあ、月は太陽がなければ輝かないというかそのさあ、

なんて言えばいいんだ、つまり月がいつも綺麗でお前がいるとって……

なんというか、もう死んでしまってもいいって感じで」

「それって、……マジ、なんて言うかベタすぎない?」


そう、ベタな台詞だ。

和哉の言ってるのはアイラブユーと小難しく言ってるだけだ。

「伊達や酔狂でこんなことを言えるわけがない。

だが、進まなきゃ行けない事情が出来てしまった」

「えーっと、いい?」


困惑した表情を和哉に向ける雪菜。

彼女が言い表した言葉は、和哉を驚愕させるものだった。


「ずっと綺麗だと思うよ、月なんて」


雪菜の答えに、和哉の理解が追いつかない。

「あーもうつまり、これからも月を見ていましょうねって

だから、あんたとみる月は綺麗だって言うのわからない!?

返事を想定しないで、気取った告白使うな!こっちが恥ずかしくなるじゃない!」

「いや、非常にうれしくて脳が追いつかない、寝不足だし」

顔色を変えてまくし立てる雪菜に、冷静になって返事をする和哉。

それもそうだ、告白して断られる覚悟はあっても、

受け入れられることを想定していなかったからだ。


「昨日、葛城とバーガー屋にいたけど」

「あ、うん、告白されたけど他に好きな人がいるって言って断った」

和哉の当然の疑問を、雪菜はしれっと答える。

それに対して困惑するも、和哉は自分の喜びを優先する。

「そうか、小説を、必死になって書いたのって私が原因だったんだ」

雪菜は懐かしむように語る。

「中学時代、和哉はノートに何かを書き留めていたと思ったら小説みたいだったし」

「黒歴史ノートだ……思い出したくない」


和哉は思い出す。

ヒロインの描写や、表情、仕草など雪菜を参考にしていたことを。

そして、主人公に抱きつかせたり、脱がせたり、ラッキースケベイベントをこれでもかと描写していたことを。

これって好きな子をコスプレさせて好き勝手してる妄想小説じゃねーか……。

「あれ見てたのかよ……」

死んだ視線で雪菜を見る和哉。

「授業中にやるのはどうかと思うよ、だけど、内容は最後まで見られなかったけど

落書き見たいのも書いてあったからあれ挿絵のつもり?」

雪菜の台詞に和哉は思った。

ああ、俺、イラストの才能はないからバレてないけど。

あれお前と、そのときはやってたアニメのキャラクターを参考にして書いてたんだぜ。

それで、主人公は俺…だったら良かっただろうけど俺だとヒーローみたいに活躍できないからなあ……

だから、当時はやってたアニメや漫画やラノベの主人公をそれぞれ参考にしてた記憶がある……



「それで、私に告白した理由はどうして?」

「それは……、俺がある人に告白を受けた。

だけど、俺はお前が好きだ。だから受け入れられなかった」

「そう……」

「俺は、だから、彼女にどうなったか伝えなきゃ行けない気がする。

こうやって、俺たちが両思いになったのは、彼女のおかげでもあるからだ……」

正直言って、こんなことを言う必要はない。

もし、雪菜に振られたら、キープしてた彼女と付き合おうとした。

そんな感情が少しでもなかったかと言えば嘘になる。

だから、和哉は晴菜に伝えることを決意する。

彼女が先に進められるようになるために。

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