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132話

 「すみませんね、鍛錬場までお借りして」

僕が謝ると、フェリーペさんは軽く対応してくれた。

「いや、もともとは、パトリックの我儘から来ているのですから、気にしないでください」

「そう言ってもらえると助かります」

「それにしても、うちの鍛錬場で一番頑丈な打込み用の杭とは珍しい注文ですね」

「これですか」

「ええ、打撃武器での打ち込み用にミスリルに木を巻きつけたものです」

僕はコンコンと杭を叩いて確認して、すこしばかり躊躇したけれど、とりあえずフェリーペさんに確認をする。

「ミスリルですか。これ切っちゃっていいですかね」

僕の言葉に黙り込むフェリーペさん。少しばかりの時間で気を取り直したフェリーペさんが僕に聞いてきた。

「今、これを切ると言われましたか」

「ええ、まあパトリックさんに僕の攻撃を一応見てもらおうかと思いましてね」

「先にそちらの普通の木の杭でやってみせますけどね」

「そんなにですか」

「んん、多分ですけど、グランタートルの甲羅はミスリルより硬いです。そしてドラゴンの鱗は更に、しかも生きている時は何か魔法的な強化でもされているんでしょうね、死んだあとの素材としての鱗より相当に硬かったです」

「それをフェイウェル殿とミーア殿は」

「まぁどうにかって感じでしたけど」

そこに装備を身に着けたパトリックさんがやってきた。手には木剣を持っている。

「それで、先に見せたいものとはなんでしょうか」

「まあ、そう先走らずに。すぐですから」

僕はそう言い、まずは普通の木の杭に向かう。そして、手刀を一閃すると地に埋め固定された下部をそのままに上部が落ちる。そして次には木剣を手にしてミスリル製の杭に向かう。間合いを調整し、袈裟懸けに木剣を振るうと木剣が砕け、そして同時にミスリル製の杭の上部が落ちた。

「分かりますか」

僕のデモンストレーションを目の当たりにしたパトリックさんは目を見開き、何か口にしようとパクパクと口を開くが言葉が出てこない。

「僕たちは対人戦は出来ないと言いましたよね」

僕の言葉にカクカクと頷くパトリックさんに言葉を続ける。

「今のが理由です。手刀でさえ木の杭を断ち、木剣でミスリルの杭を切り倒す。手加減しても当たればただでは済まないのは理解していただけると思います。僕達の剣を全て避けることの出来る、もしくはこの剣に耐えられる方以外との立会は危険すぎるのです。それでもやりますか」





 僕たちはフェリーペさん宅を辞し、午後はギルドを訪れている。家族総出で。そうすると、まあ出てくるのは

「ここは遊び場じゃねぇぞ。あーん、子供なんか連れて邪魔なんだよ」

予想通りなんだけれど。この酔っ払いより多分うちの子たちの方が強そうだなあ。

「おじさん、臭い。あっち行って」

さっそく子供特有の歯に衣着せぬ言葉で傷を広げるイングリッドに

「な、てめぇ子供だからって大人しくしていれば」

大人げなく拳を振りかぶる酔っ払いだけれど、次の瞬間には”ダーン”埃を巻き上げながら床に転がっている酔っ払い。本人は何が起こったのかすら分かっていないようだけれど。

「ほら、イングリッドやりすぎだ。おまえならもっと優しく思い知らせてやれただろう」

「だって臭いもの」

「臭いって、おまえなぁ」

後ろで盛大な笑い声が響く。

「ぶはははは、さすがはサウザンドブレイカーとトルネードレディの子だな。いや今は帝国侯爵夫妻で、ドラゴンスレイヤーのリベンジジェノサイダーとルナティックレイディだったか」

「ゲーリックさん、堂々と帰ってきましたよ。あの時はおせわになりました」

「ああ、よく帰ってきた。しかし、派手な帰還だな」

「ええ、でも、もう何者にも手出しをさせません。それだけの力を手に入れたつもりです」

そこにまた酔っ払いの声が響く

「そっちのガキは何か変な力を使うようだがな、こいつの身が大事なら……」

エルンストを抱えて吠えているけれど、

「エルンスト、何遊んでるんだ」

「ええ、だって人質ごっこ楽しいよ」

「おまえじゃ人質にならんだろ」

僕が呆れたように言うと。

「な、何を俺様を無視して何を言ってやがる」

「ほら、エルンスト。もう行くよ」

「ちぇぇ、つまんないの」

そしてそこには泡を吹いて横たわる男の姿があった。


次回は7月15日18時更新予定です。

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