79.GW4日目 ~聖霊石 9 ~
本日1話目の更新。
夜7時にも更新します。
掲示板回ですけどね。
「教授、なんだその黒い本は?」
少なくとも今までは『本』なんて武器種は知らない。
「聞いて驚くのである。これは『魔導書』なのである!!」
教授が声高らかにそう宣言した。
「『魔導書』? 知らない武器種だな」
そう、本の形をした武器も知らなければ『魔導書』なんて武器種も聞いたことがない。
「知らなくとも当然である。これは『インデックス』が開発した武器なのである! まあ、他にも作ってる人がいないとは限らないのであるが」
急にトーンダウンしたな。
「私はこれを聖霊武器にしたくて、昨日『ライブラリ』を訪ねたのである。だが、トワ君はクエストでいなかったのである。トワ君が聖霊石を作ったのは聞いていたのであるからして、クエストとは『聖霊の試練』のことだと思ったのである。それで、昨日は謎解きのヒントだけメールで送って帰ったのである」
「ああ、あの時のメールはそう言うことだったのか」
「うむ、トワ君はまだ言語学レベルがそこまで高くないはずであるからなぁ。ひょっとしたらそこで行き詰まっている可能性が高かったのである。必要なかったであるかね?」
「いや、ジャストタイミングで助かった。というより【言語学】スキルのレベルが足りていなくて石版の文字がほぼ読めなかった」
「助けになったのであれば幸いである。しかし、まさかトワ君が『聖霊の試練』で負けて帰ってきたとは思いもしなかったのである」
「俺だって負けるときは負けるさ。普段はそんな事がないように、しっかり準備をすませているだけでな」
「準備したぐらいで失敗しないのであれば、それはそれで天才なのである」
そこまで言われることかねぇ……
準備しないとダメなんだから、せいぜい秀才くらいだと思うのだが。
「ともかく、この魔導書を聖霊武器にしてもらいたいのである」
「その前に、その魔導書貸してもらってもいいか?」
「うむ。構わないのである」
教授から魔導書を受け取る。
〈魔導書を入手したことにより【魔導書】スキルが覚えられるようになりました〉
魔導書を受け取った際にシステムメッセージが流れた。
どうやら基本スキルの1つのようだな。
ちなみに鑑定結果はこれだ。
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ネクロノミコン ★7
黒い装丁が施された魔導書
火・風・闇の魔力を宿し
使用者の魔力を高める
火属性攻撃ボーナス小
風属性攻撃ボーナス小
闇属性攻撃ボーナス小
装備ボーナスINT+50
MATK+140 INT+50
耐久値:150/150
―――――――――――――――――――――――
よりにもよってアイテム名がネクロノミコンか。
確かに有名な魔導書だけどさ。
「そろそろ返してもらってもいいいであるかね?」
「ん、ありがとう教授」
魔導書を教授に返却する。
「それで何でネクロノミコン?」
「魔導書といえばこれであろう?」
まあ、言いたいことはわかるけどさ。
「それにデフォルトネームがあまりにもダサかったのである」
「どんなアイテム名だったんだ?」
「『魔導書(火・風・闇)』だったのである」
……ダサいと言えばダサいけど。
拳銃やライフルも似たようなモノだよな。
素材名ハンドガン(魔石名)とか。
「まあ、魔導書の名前についてはどうでもいいのである。これは聖霊武器化の条件を唯一満たした魔導書なのである! さあ、早く聖霊武器化を!!」
「まあ、落ち着け。……ところで、どうやって聖霊武器化するんだ?」
「それは……『聖霊の器』に触れてもらえればわかる、はずである」
「どれどれ……」
教授から差し出された、教授の聖霊の器を触ってみる。
すると、その中に貯まっている魔力が感じられる。
その魔力は教授との間に確かなラインがつながっていて、互いの間を循環している。
ああ、なるほど。
確かに、これなら作り方がわかる気がするぞ。
「……ときに教授よ。1つ確認なんだが」
「うん? 何であるか? 報酬ならきちんと用意してるであるぞ?」
「うん、いや、報酬の話じゃなくて。というか、それもきちんとしないといけないんだけど、そうじゃなく。この魔導書★7なんだけどこれでいいのか? 製造法にもよるがもっと上等な武器を作れるかも知れないぞ『ライブラリ』が協力すれば」
「………………いや、これでお願いするのである。これは『 インデックス』が総力を挙げて作り出した、まさに血と汗と涙の結晶なのである。これ以上、私にふさわしい素材はないのである」
……大分迷ったようだな。
デフォルトネームを聞く限り、魔石を使ってるはずだから、俺が少し手を加えればもっと上質な装備ができるだろう。
だが、教授が『これがいい』と言っているんだし、これ以上聞くのも無粋か。
「わかった、教授。それで作ろう。それじゃ、魔導書と聖霊の器をこの上に置いてくれ」
差し出したのは錬金術の行使に用いられる石版。
単純に『合成板』とも呼ばれる板だ。
「うむ、これでよいのであるか?」
「ああ、それで構わない。それじゃあ、教授はその2つに手を載せていてくれ」
「うむ、こうであるな」
俺は錬金術士の直感に従い、教授と聖霊の器の間につながっているラインを拡張して魔導書を循環に加える。
この状態を維持しながら合成すれば…………!
合成の力を使った瞬間にまばゆい光が聖霊の器と魔導書から放たれる。
そして2つの光が1つに交わっていき、光が収まると魔導書だけが残されていた。
……ステータスを見るとMPが200も減っている。
これまた消費の大きい錬金作業だ。
だが【中級錬金術】のスキルレベルは上がっていない。
というよりも経験値自体入っていないような気もする。
……これは作業としてはとても美味しくないな。
できればあまりやりたくないモノだ。
「ふむ。かなり派手な演出であったがこれで完成なのであるか?」
「多分。MPもがっつり持って行かれたし」
「ふむ、ではネクロノミコンを調べてみるのである」
教授が鑑定を始めたので、俺も鑑定をしてみる。
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聖霊武器ネクロノミコン ★* 聖霊Lv1
黒い装丁が施された魔導書
火・風・闇の魔力を宿し
使用者の魔力を高める
聖霊が宿りその力を得た。
これ以降、この武器は教授とともに歩むだろう。
火属性攻撃ボーナス小
風属性攻撃ボーナス小
闇属性攻撃ボーナス小
装備ボーナスINT+60
MATK+160 INT+60
耐久値:200/200
譲渡不可
破棄不可
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ふむ、成功はしているようだな。
各能力値が少しずつ上昇している。
それにしても、このレベル表示はなんだ?
「ふむ? このレベル表示はいったい?」
教授が魔導書を手に持った、そのとき。
《とあるプレイヤーが『聖霊武器』を入手しました。これよりヘルプに『聖霊武器』についての項目が追加されます。詳しくは追加されたヘルプをご確認ください》
ワールドアナウンスがきた。
……少しタイミングが遅かったが『手に持つ』事が条件だったのか?
「ふむ、色々知りたいことが多いのであるな……まずは、ゆっくりヘルプを確認するのである」
「それがいいだろうな。それじゃ、談話室に移動しよう」
「ふむ。これ以上、工房にいる必要もないのであるしな。戻るのである」
俺達2人は連れだって談話室へと戻った。
――――――――――――――――――――――――――――――
「あ、おかえり、トワくん、教授さん。お茶飲む?」
「そうであるな。お願いするのである」
「俺も頼む」
「うん、今用意するからちょっと待っててね」
談話室に残っていたらしいユキにお茶をお願いする。
気分的なものでしかないが、少し疲れた。
「ああ、やっぱりいたのね、トワ。今のワールドアナウンス、あなたのせいよね?」
柚月が談話室に入ってくるなり失礼なことを言う。
……作ったのは俺だから、半分ぐらいは俺のせいかもだけど……
柚月の後に続いてドワンとイリスも談話室に入ってきた。
ユキは皆の分も追加してお茶を配り自分も席に着いた。
「それで、今度は何を作ったんじゃ、トワ?」
「うんうん、教えてほしいな、ボク」
そうは言われても教授のものだしな……
勝手に話すのも問題だろう。
「私の武器を作ってもらったのである。これが今回作ってもらった武器、聖霊武器である」
「教授? 話してもいいのか?」
「うむ、黙っている必要もなさそうであるからな。ヘルプページに、聖霊武器を作るための導入部から説明が載っているのである」
「どれどれ……本当だ、聖霊石の欠片を第4の街の錬金術ギルドに見せるところから書いてあるな。……ただし、錬金術ギルドに所属していない場合は所属ギルドの紹介が必要、そこまで載っているのか」
「うむ、最初のさわりの部分がしっかりと載っているのである。UWの運営としては椀飯振る舞いな情報開示であるな」
ヘルプページを読み進めると、聖霊石の欠片の話から、聖霊石の作り方、聖霊石ができた後の流れなどなど。
聖霊武器を作るための手順が、詳しい部分はぼかしながらもほとんど書いてあった。
……これなら後追いで作る人は楽だろうな。
肝心の使い方はと……
「ふむ、この武器は使っている間にレベルが上がり成長するのであるな」
「それに修理は魔石が必要ってなっているわね。自力で修理が可能みたい」
「うむ。聖霊武器を入手したときに3つのスキルを入手したのである。その中に【聖霊武器修理】があったのである」
「そうなのね。他にはどんなスキルを覚えたの?」
「まずは【聖霊開放】であるな。これはどうやら攻撃スキルのようである」
「攻撃スキル?」
「『武器に宿る聖霊を解き放つ』とだけ説明があるのである」
「つまり使ってみないとわからない、と」
「そういうことである」
入手までの流れと、入手した後の修理方法については言及があるけど【聖霊開放】については説明がないな。
やっぱり隠すところは隠すのか、ここの運営は。
「それから最後の1つは【聖霊武器強化】である。これはどうやら同一武器種を取り込むことで素体になっている武器をアップグレードできるスキルのようである」
「そんな事も出来るのね」
「おそらくは、素体に弱い武器を使ったプレイヤーに対する救済措置のようなものであろう。『吸収される武器が素体より弱いと吸収しても効果が少ない』とも書かれているのである。」
最後のスキルは救済措置か。
まあ、なにも救いがないとそれはそれで荒れる原因だからな。
「それでは私はこれで失礼するのである。新しい武器の試し撃ちをしてみたいのである」
「訓練所でよければうちにもあるけど?」
「いや、モンスター相手に試したいのである。それではさらばである」
教授はお茶を飲み干すと足早に去っていった。
俺も聖霊武器を作るための前提条件は揃っているんだよな。
ただヘルプページにも『聖霊武器の初期の強さは元の装備に依存する』と書いてあるから、作るのは慎重にならないと……
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