318.実戦テストを終えて
「ふう、なかなか有意義な時間だったぜ」
「そうだな。予想以上に面白い結果となった」
実戦テストを終えた2人、鉄鬼と次元弐は満足そうに戻ってきた。
連携をするにあたっての問題点などを絞り込めたのかな?
「外から見てると、特に問題なく立ち回れてるように見えたがな」
「トワ、あれは2人だから出来るようなもんだ。これがパーティ単位、さらにレイド単位になってくると話は変わってくるからよ」
「そうだな。基本的に、ショットガンは近距離戦での制圧戦闘向けで、距離を離して戦う場合にはあまり意味がない事がわかっただけでも十分な収穫だよ」
「そういうものか。戦闘はパーティ単位が基本だから、あまり考えたことはなかったな」
「まあ、そういうもんだ。それで、そっちのドロップアイテムはどんな感じだ?」
「目的通り、ワイルドパンプキンは十分に集まってるよ」
「ありがとうございます。鉄鬼さん、次元弐さん」
「いいってことよ。それより、俺達のドロップに貯まってるワイルドパンプキンも受け取ってくれや」
「……そうだな。これ以上、持ち帰ってもどうしようもないからな」
「ワイルドパンプキンで消耗品を交換するとかは?」
「そっちも備蓄に貯まっちまってるからなぁ」
「ワイルドパンプキン関係は、本当に何もいらない状態だよ……」
あらら、こっちの闇は深そうだ。
『ライブラリ』なら、ユキが有効活用してくれるだろうし、もらっておくかね。
「そういうことなら引き取るよ。お代は……俺の作ったポーションと、ユキの料理をある程度譲るってことで」
「おう。それで構わねーぞ」
「助かる」
「それなら、一度『ライブラリ』によってから帰ってくれ。ポーションと料理を渡すから」
「ああ、わかったぜ。とりあえず、ワイルドパンプキンは先渡ししておくわ」
「俺の方も受け取ってくれ」
こうして2人からもらった分も含めたワイルドパンプキンの総数は、400個を越える結果となった。
これだけあれば、もうワイルドパンプキン目当ての狩りに来ることはないだろう。
「よっしゃ、それじゃ帰るとするか」
「そうだな。実戦テストも十分に行えた。後は他のメンバーも含めた運用方法を模索する事になるだろう」
「そうだな。トワ達は帰る支度は出来てるか?」
鉄鬼に聞かれるが、帰る支度も何も、戦闘していないのだから何も困ることはない。
ユキの方を見て確認すると、鉄鬼に頷き返す。
「準備はいいようだな。それじゃあ、さっきのポータルまで帰るぞ」
「フェンリルを使えばすぐだろう。フェンリルに乗って帰ろう」
4人全員がフェンリル持ちなので、こういうときは楽に行動が出来る。
もっとも、今だとほとんどのプレイヤーは何らかの騎獣を持っているのだが。
やっぱり、移動時間の削減は大事だよな。
鉄鬼達と先程のポータルまで戻ってきたところで、鉄鬼と次元弐に一時的な『ライブラリ』への転移許可をだしておく。
わざわざ、街のポータルから来てもらう必要もないしな。
「それじゃ、『ライブラリ』に寄らせてもらうとするか」
「ああ、少しだがお邪魔させてもらう」
「どうぞ、ごゆっくり」
全員で『ライブラリ』まで移動、談話室に着いたらそのままそこで休んでいてもらう事に。
『ライブラリ』に移動するまでは問題なかった。
問題があったのは、『ライブラリ』に戻ったときであった。
「あっれー、鉄鬼君じゃん。そっちも『ライブラリ』に戻ってくるの?」
「よう、曼珠沙華。『そっちも』って事はお前は『ライブラリ』に所属を戻すのか? ちなみに、俺はアイテムを受け取るために立ち寄らせてもらっただけだ」
「そうなんだ。トワっち達とどこに行ってたの?」
「ちょいと、連携の確認をするために狩り場までな。そういうお前こそ、なんでこんなところにいるんだよ」
「わたし? わたしは『ライブラリ』の工房を下見に来たんだよ。今週末には『ライブラリ』に戻ることになったからさー」
「そうなのか? 俺も初耳なんだが」
「うん、そう。今日決まった」
「……そうか。柚月が反対していないなら、俺からいう事もないかな」
「うんうん、ありがとねー、トワっち」
「ああ、もう好きにしてくれ」
「言われなくても、自分の工房と自室の内装は自由にやらせてもらうけどね」
「そうか。それなら構わないが」
曼珠沙華がこり出すと、数日かけての大改装も普通だからな。
『ライブラリ』に復帰してもそれは変わらないだろう。
「そういえば、そっちの女の子がライブラリの新人さん? トワっちの彼女って聞いてるけど」
「はい、ユキです。よろしくお願いしますね、曼珠沙華さん」
「呼び捨てでも構わないよー。わたしの名前長いしね」
この辺、かなりゆるいのが曼珠沙華なんだよな。
……まあ、今はそんな事はいいか。
「鉄鬼と次元弐は適当に座って待っていてくれ。ポーションと料理を用意するから」
「おう、頼んだぜ」
「うん? ポーションと料理をあげるの? 一体何があったの?」
「……鉄鬼、説明をお願いできるか?」
「おう、任せろ」
曼珠沙華の相手は鉄鬼に任せるとして、俺とユキはそれぞれ自分の倉庫からポーションと料理を取り出す。
分量は適当にすることにして、ユキから料理アイテムを受け取ったら、鉄鬼に渡す事に。
「鉄鬼、こっちの準備は出来たぞ。……って、曼珠沙華、どうかしたのか?」
「うん、鉄鬼達のクランで余っているワイルドパンプキンの買取交渉をしてたところ」
「ワイルドパンプキンなら俺達が大量にもらってるんだが……」
「個人的に欲しいの。ワイルドパンプキンで染料を作ると、一緒に混ぜるアイテムでいろんな色を作ることが出来るステキアイテムなんだからね!」
「そうか、それはよかった。……それで、そっちの話はまとまりそうか?」
「大丈夫、もうまとまってるよ。この後、鉄鬼達のクランまで行って受け取りしてくる」
「……まあ、俺達にしたら、二束三文にしかならないようなイベントアイテムを引き取ってくれるだけでもありがたいからいいんだけどよ」
「そこはそっちの事情だから介入する気はないよ」
「わかってるって。それで、ポーションと料理の準備は出来たのか?」
「……ああ、スマン。これが今日の対価な」
「……もらい過ぎな気もするが、ありがたく受け取っておくぜ」
「ポーションや料理は消耗が激しいから助かる」
「俺達の方こそ、ワイルドパンプキンを大量にもらって助かったよ」
「はい。ありがとうございました」
「おう。それじゃあ、俺達は帰るとするわ」
「新しい銃、ありがとうございました」
「うん、またな」
「じゃあ、わたしも一緒に行ってくるねー。バイバイ、トワっち」
鉄鬼と次元弐は曼珠沙華を連れて、自分達のクランへと帰っていった。
……そうか、曼珠沙華は今週末から復帰か。
「曼珠沙華さんって、いつもあんな感じなの?」
「あんな感じだな。基本、軽いというか」
「そうなんだね。仲良くできるといいなぁ」
「あっちはグイグイ踏み込んでくるタイプだからな。疲れない程度に相手をしてやってくれ」
「うん、わかった。それじゃあ、私はワイルドパンプキンのお料理を試してみるから。また後でね、トワくん」
「ああ、また後でな」
ワイルドパンプキンを大量入手できたユキは、楽しそうに工房へと向かっていった。
さて、俺の方は……
「ああ、トワ。帰ってたのね」
「ああ、柚月か。今さっき帰ってきたところだ」
「そう。曼珠沙華とは会った?」
「ああ、今週末から復帰って聞いたけど」
「ええ。正確には明後日、日曜日にこっちに来るらしいわ」
「そうか。生産設備とかはどうするんだ?」
「そっちは新調する事になってるわ。元のクランに戻ったとき、すぐに活動したいからあっちの工房はいじらずに来るそうよ」
「了解。……大変だとは思うが、そっちは任せたぞ」
「ええ、任されたわ。……さて、それじゃあ、私も自分の工房に行くことにするわ。またね、トワ」
「ああ、またな」
少し疲れた様子の柚月を見送り、俺も自分の工房へ戻ることにする。
工房に戻ったとき、ユキは大量のカボチャと格闘していた。
こっちはこっちで大変そうであるが、頑張ってくれ。
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~作者からの連絡~
今後の更新予定について活動報告の方に記載させてもらいました。
UWではあまり関係ない内容ですが、できればご一読ください。





