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Unlimited World ~生産職の戦いは9割が準備です~  作者: あきさけ
第9章 カボチャ狩りの季節に
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289.10月度アップデートに向けて

 10月のアップデート内容およびイベント内容が公表された翌日、薬草類の買い出しを終えた俺はクランホームに戻ったところだった。

 転移先である談話室では1組の女性が互いににらみ合っている。

 片方は我らが柚月、もう一人は……


「あら、トワっち。久しぶり、元気してた?」

「ああ、元気だったぞ。曼珠沙華」


 そう、もう一人は元クランメンバーの曼珠沙華である。

 曼珠沙華がここにいる理由もわからないが、柚月と険悪な理由もわからないな。


「柚月、曼珠沙華、一体何があった」

「うーん、わたし的には大したことを頼んでるわけじゃないんだけどねー」

「30人分のドレス作成を2週間でとか十分に大したことよ! わたし達はそれ以外にも請け負ってる通常業務があるの。さすがにリソースを食い尽くす勢いのある仕事は受けにくいわ」

「うーん、そっかー。柚月ならできると思ったんだけどなー」

「さすがに量が多いって言ってるのよ。減らせばある程度は対応できるわ」

「おー、さすが【姐御】頼りになるぅ」

「まったく、それで、曼珠沙華、あなたがここに戻ってきた理由ってそれだけ?」

「うーん、あー……。【姐御】にはバレバレですかねー。自分、もう1ヶ月くらいでフリーになるので、しばらくの間『ライブラリ』に復帰させてもらいたいんですよねー」

「フリーになるって……。歌劇団はどうした?」

「その歌劇団が事実上の活動停止になるのだよ。理由はメインをはる役者や裏方のメンバー達、そう言った人達がゲームから『卒業』する事になったのよ!」


『卒業』ねえ。

 一般的な意味で考えると何らかの事情によりゲームを引退する事だろうが、今回の場合はおそらく……


「大学進学や就職に向けてゲームに割いていた時間を勉強に割り当てるようになったのか」

「トワ正解! 景品はないけど」

「それでクランは解体するのか? しっかりしたクランハウスも持ってて、解体するのはもったいないと思うんだが」

「そこは大丈夫だよ。進学や就職に関わりがない人達が何人かいるから、その人達で維持してくことになってる」

「それならいいんだが。それで、クラン自体は解散しないのにクラン移籍をしたい理由はなんだ?」

「裁縫を使ってアイテム作る感覚を忘れないためだよ。人気(ひとけ)のないクランで針をはわせてもいい作品になんてならないからね」

「ふぅ、それで本音は?」

「最近の『ライブラリ』装備って華がないというか、遊び心が少ないじゃない。トワの今の戦闘服だって見栄えはするけど、実務一辺倒だし。もっと装備を作るときは遊び心を取り入れた方がいいよ」

「その、遊び心とやらを取り入れた結果、まともな武器が生まれた試しはないのう」

「曼珠沙華の遊び心って、ロマン砲作りに特化してるよねー」

「曼珠沙華さんも、もう少し遊び心を抑えた方がいいと、おじさんは思うんだけどな」

「くっまさかの孤立無援状態。トワならわかってくれるわよね?」


 さすが劇団系クランにいただけあって声のメリハリだとか仕草・表情の作り方は完璧だ。

 ただ、なあ……


「却下だ。ロマン砲を作って遊ぶのは余裕があるときだけだ」

「余裕があれば作っても構わないんだね?」

「他人に迷惑をかけないならな。どうせ、止めたところで隠れて作るだろうし」

「さっすがマスター、わかってるー」

「ともかく事情は理解した。後はあっちのクランマスター、ないしまとめ役と話ができればいいんだけど」

「そっちは私が引き受けるわ。対外交渉もわたしの仕事の一つだからね」

「それじゃあ、柚月、任せた。早速で悪いんだけど、あちらのクランに行って曼珠沙華の一時移籍を承諾してもらってくれ」

「了解。それじゃあ、早速行くわよ、曼珠沙華」

「はーい。それじゃあ、皆、またねー」


 相変わらず嵐のような性格の曼珠沙華を見送り、残ったドワン達と今後の予定について話し合いだ。

 とは言っても、今日は当たり障りのない内容しか話せないんだけどね。


「とりあえず、席に着くかの。……トワ、ユキの嬢ちゃんはいつ頃来る予定じゃ?」

「うーん、そろそろだと思うんだけど。詳しい時間まではわからないな」

「そうか。まあ、今日の打ち合わせの内容は共有するし、誰かに負担がかかるような事をするわけでもないでな」

「そっか。それなら、もう始めて……」

「済みません、遅くなりました」

「おう、ユキ、間に合ったようだな」

「ああ、そうなんだ。よかった」

「今まさに始めようとしてたところじゃったからのう。ともかく、不在の柚月以外は全員揃ったので、10月のアップデートまでの活動方針と10月のアップデートが終わった後の活動方針を決めるぞい」

「ああそうだ、活動方針の前にユキにも報告だな。来月あたりから『ライブラリ(うち)』に一人メンバーが増えることになった。曼珠沙華っていうプレイヤーで、β時代はうちに所属していたこともあるプレイヤーだな」

「そうなんだね。その人の分野って何?」

「裁縫だ。裁縫と言っても柚月とは違って、コスプレ衣装をメインに作る感じなんだけどな」

「そっか。わかったよ。今度挨拶しなきゃだね」

「ふむ、曼珠沙華の件はもうよいかの。それで、活動方針じゃが……」

「……活動方針って言っても、基本『みんながんばれ』だろ? 他に何かあるのか?」

「あるぞ。トワやユキ、柚月はフォレスタニアとマナリーフに、イリスはフォレスタニアに、わしとおっさんはアイアンギウスにそれぞれ行けるわけだ」

「そうだな。あとは、帝国に人が行ってれば全国制覇だよな」

「まあ、それはよい。ともかく、各地を巡ってきたのはいいが、そちらは急ぎ足でスキル取得のためだけに移動してたんじゃろう? 新しく行った街の様子もまったく見てないのではないのか?」


 ……そう言われると辛いな。

 確かに、街中の探索などは一切せずにひたすらスキル修練だけを頑張ってたからな……


「そう言う訳で、わしらも含めてしばらくは各地の住人の好感度を上げてこようと思う」

「まあ、お手伝い系の反復クエストだね」

「あとは街中で発生する突発イベントとか?」

「そうじゃの。そういった、まだ受けていないクエストを色々と受けてみるべきじゃろう。ジパンではトワがいきなり大物と知り合いになったおかげで行動幅が広がっているが、他の国にはコネがないのでな。せめて住人の好感度上げくらいはやっておくべきじゃろう」


 他国へのコネね……

 いざとなったらセイメイ殿に頼んで一筆書いてもらえば、上層部は何とかなる気がするけど……

 まあ、現地の普通に生活している住人からすれば、『えらい人の紹介のよそもの』と『元から街に馴染んでいるよそもの』ではどっちがやりやすいかって話になるよな。


「とりあえず了解した。それで、実際にはどう動くんだ?」

「そこは大人しく、職業ギルド経由で仕事を受けていくしかないわい。その途中で突発イベントが発生したら、クリアできそうならクリアする。それで行くぞい」

「まあ無難なところか。他の皆も問題はないか?」

「おじさんからはないね」

「ボクも無しー」

「私もありません」

「結構、それではこの議題についてはここで終了じゃ」

「まだ他にも話し合うことがあるのか?」

「それはもう、具体的にアップデートが実装された後じゃ。トワは大変な事になるじゃろうよ? これまでのパターンで行くと、ショットガンの流通を復活させるクエストも用意されていそうじゃからな。それをクリアせねばなるまい」

「……それもそうだな」

「それ以外にも『錬金武器』とか、調べるのに時間がかかりそうなコンテンツが目白押しだからねぇ。アップデート後しばらくは何も出来ないんじゃないかな?」


 確かに、真面目にやってればそうなる可能性大だ。

 でも、俺がそんな真面目に検証をするはずもなく……


「一応、大まかな検証はするけど、『錬金武器』とか後回しだよ。さすがにショットガンは、自分も使うことになると思うから後回しにはしないけど」

「ま、その辺が無難じゃろうて。それで、イベントはどう行動する? クランでまとまって動くか?」

「その辺も個人の判断でいいんじゃないか? 何か難しいコンテンツを見つけたら集合って事で」

「……やっぱり『ライブラリ』はゆるい集団だよねぇ。そこがいいんだけど」


 その後は、誰がどの街を回って好感度稼ぎをするのかという話で盛り上がって終了した。

 俺とユキがペアになってとりあえず、フォレスタニアを軽く回ってギルド関係のクエストがないかだけ確認して、次の目的地、マナリーフ王国に行く事となった。


 好感度上げがメインの話だが、考え方によっては二人でデートとも取れる。

 ……たまにはこういうのもいいかもな。


「? トワくん、なにかあった?」

「いいや、なにも。明日からの諸国旅行楽しみだな」

「うん、楽しみだね」

いつもお読みいただきありがとうございます。

「面白かった」「これからも頑張れ」など思っていただけましたらブクマや評価をお願いします。

作者のモチベーションアップにつながります。

毎回の誤字報告本当に助かっています。

感想もありましたらよろしくお願いします。



~あとがきのあとがき~



名前だけ何度か登場していたプレイヤーで元ライブラリメンバー曼珠沙華、ようやく登場です。

本当なら都市防衛戦のあたりで、今日の事情を話してイベント後からの復帰の予定でした。

……でも、その短い会話を組み込む余力がなく断念した経緯があります。


ようやく出番を上げられて作者としても感無量です。

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