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間章3.ある日の喜多川昇平(おじさん)

3話目はおじさんの現実版。


260話と261話の間のお話です。


「ふう。わかってはいるけど、やっぱり、リハビリはしんどいね」


 夏休みイベントが終了したある日、私はリハビリのために病院を訪れていた。

 この病院との付き合いも、8ヶ月以上になるのだから驚きだね。


「喜多川さん、大分体力が戻ってきましたね。この調子なら、もう少しでリハビリも終了ですね」

「それは嬉しいですね。……まあ、でも、日常生活を送るにはもうしばらく体力作りを続けなきゃいけないでしょうが」

「そうですね。もうしばらくは基礎体力作りを続けた方がよいでしょう。ちなみに、会社の方はどうですか?」

「そちらの方は問題ないですね。私の場合は在宅でもある程度仕事ができますし、会社からは『仕事に支障がないレベルまで回復してから戻ってこい』と言われてますからね」

「そうですか。それはよかった。リハビリが終了してからもしばらくは定期的な通院は必要ですからね」

「ありがとうございます。それでは、今日はこれで」

「ええ、お疲れ様でした。それではまた次回のリハビリの時に」


 私は疲れた体に鞭打って家へと帰宅する。

 幸い、私の家は病院からも近いので一人で通院することが可能だった。

 毎回毎回、通院の度に家族に送り迎えしてもらうのは申し訳ないからねぇ。


 家に帰り着いたら、シャワーを浴びて汗を流す。

 もうすぐ9月とはいえ、まだまだ暑くてかなわないからね。

 病院から帰ってくる間でも汗をかいてしまうよ。


 汗を流した後は、自室に戻り仕事のメールが来ていないかチェックだ。

 仕事の方は在宅ワークに切り替えてもらった上で、あまり回してもらわないようにしているけど、それでも仕事の依頼が来ることはあるからね。

 こまめにチェックしないと後々まで響きかねないからねえ。


 幸い、と言うべきか、今日のところは仕事のメールは来てなかったようだ。

 となると、今度は夕食までの時間に何をして過ごすかという事になるけど……うん、ゲー(Unlimited)( World)を少しやるとしようかね。

 これはこれでリハビリになるからね。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「ふむ。細工スキルのレベルも大分上がってきたし、あとは細工ギルドのランクを上げて上級生産セットを買わないといけないねぇ」


 ゲームにログインした後、時間潰しも兼ねて少しアクセサリーを作成してみる。

 スキルレベル的にも使っている設備的にも作成できる上限は★8が限界なのだけど、よほどミスをしなければ安定して★8を作れるようになってきた。

 本当なら、上級生産セットを手に入れて、さらに上を目指したいところなんだけど……まだ、上級生産セットが買えないんだよねぇ。

 βの時は特に制限がなかった気がするけど、正式サービスが始まってからは、上級生産セットを入手するには王都のギルドまでたどり着いていて、その上でギルドランク10が必要らしい。

 幸いと言うべきか、他の皆のおかげで王都まではたどり着いているけど、まだギルドランクは9なんだよねぇ。

 8月のイベント中も暇を見つけてはランク上げに励んだけど、さすがにそこまで簡単には上がらなかったよ。


「さて、時間的にもぼちぼちいい時間だし、少し休憩をしてからログアウトするとしようかな」


 道具類を片付けて談話室に向かうと、そこには柚月さんの姿があった。

 まだ夕方なのにログインしてるとは珍しいねぇ。


「やあ、柚月さん。元気かな?」

「ああ、おじさん。見ての通り特に問題はないわ。おじさんこそこの時間にインしてるなんて珍しいけど、何かあったの?」

「そんな大したことはないんだけどね。時間が余ってたから、少しアイテム作りでもしようと思ってログインしただけだよ」

「そうなのね。……ところで、おじさんの方は調子どうなの? そろそろ上級に手が届くかしら?」

「そうだねぇ。もう少しで上級生産セットを手に入れることができそうかな。まあ、残り1ランクがなかなか上がらない可能性もあるけどね」

「ああ、それは大いにありうるわね。その辺も色々と修正されてるらしいけど、既にクリアしてる側としては修正されたかどうかわからないからね」

「なるほどね。まあ、気長に待っていてほしいかな。ログイン時間もまちまちだし、どの程度かかるか何とも言えないからね」

「わかったわ。まあ、無理しない程度にしてね。『ライブラリ(うち)』はノルマとかがあるわけじゃないんだし」

「そうさせてもらうよ。それじゃあ、おじさんはこれで失礼するよ」

「ええ、またね」


 柚月さん達との付き合いもそれなり以上に長くなってきたよねぇ。

 最初は、在野で活動してたところをクランを起ち上げるからってスカウトされたんだっけ。

 けど、βが終わる前にリアルで事故に遭ってそのまま入院、退院出来た頃にはすでに正式サービスが開始されてたからねぇ。

 このクラン(ライブラリ)に復帰できたのも7月の終わり頃だし、ゲーム内でこのクランのメンバーと過ごしてる時間はそんなに長くないかもね。

 まあ、ともかく、このクラン(ライブラリ)は居心地もいいしトラブルでもない限りは辞める理由はないかな。


 さて、ログアウトして夕飯にしようかね。

 奥さんが仕事の後にわざわざ作ってくれてるんだから、時間に遅れでもしたら申し訳ないからねぇ。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「それで、親父はいつくらいに会社に戻れるんだ?」


 夕食後のひととき、息子から質問を受けた。


「うーん、一応、復帰した扱いにはなってるけど、正式に戻れるのはもうしばらく先かな」

「だよね。お父さん、まだまだ体力が戻ってないもの」

「そうね。あれだけの事故に遭ったのだから仕方が無いけど、まだまだ体力的に本調子とは言えないものね」


 娘と奥さんからもそう言われてしまう。

 ……まあ、歩いて30分もかからないところにある病院にいくのさえ辛い現状じゃ否定できないよねぇ。


「心配しなくても冬くらいには復帰できるはずさ。……すぐに復帰するなと言うのも会社命令だからね」

「それならいいんだけどさ。……ところで親父、まだUnlimited Worldやってるのか?」

「うん? 手足のリハビリにもなるから復帰して続けてるけど、何かあったのかい?」

「俺もそのうち始めようかと思ってさ。親父、確か生産職なんだろ? 始めたら装備品見繕ってくれよ」

「うーん、構わないけど、お父さん細工士だから自分で作れるのは、基本的にアクセサリー装備なんだよね。それ以外の装備は他の知り合いに頼むことになるかな」

「ふーん、まあそれでも構わないからさ。とりあえず頼むよ」

「まあ、始めたら教えてくれよ。そうしたら装備の工面を考えるから」

「よっしゃ。頼むぜ、親父」

「わかったよ。その時は手伝ってあげるよ」

「その前に、あなたは勉強も頑張りなさいね。あまり出来が悪いようなら色々と考えなくちゃいけないわよ」

「わかってるって。それじゃあ、俺は自分の部屋に戻るから」

「ああ、それじゃあ、またね」

「お兄ちゃんは気楽でいいよね。私はMMOゲームまで手を出す余裕なんてないのに」

「Unlimited Worldを始めるんだったら、最初の方は手助けできるよ?」

「うーん、私はパスかな。VRMMOとかあまり興味ないし。それじゃあ、私も部屋に戻るね。お休みなさい、お父さん」


 うん、子供達2人は自室に戻ったようだね。

 中1の息子と小6の娘だけど、今のところ反抗期と言える態度が出てなくて助かるよ。

 もっとも、私の怪我を見てその余裕がないだけかもしれないけどね。


「あなたも、あまり無理しないでくださいね。あれだけの大怪我をした後なんですから」

「わかってるよ。だから、無理のない範囲でリハビリをこなしてるんだからね」

「それならいいですけど。……まだ、手を使った作業は違和感がありますか?」

「うーん、ゲーム内だと問題なく手先が動くけど、現実だとまだ違和感があるかな。引きつった感覚はなくなったから、もうしばらくリハビリをすれば違和感がなくなると思うけど……」

「それならいいんですが。重ねて言いますが、無理はしないでくださいね」

「わかってます。それじゃあ、後片付けをしようか」


 後片付けと言っても、もうほとんど終わってることだしあまりやることもないのだけどね。

 さて、今日のところはこれくらいにして、少し仕事のデザインを考えてから休むことにしよう。


いつもお読みいただきありがとうございます。

「面白かった」「これからも頑張れ」など思っていただけましたらブクマや評価をお願いします。

作者のモチベーションアップにつながります。

誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。



~あとがきのあとがき~



おじさんのリアル事情でした。

あまり出番がないため書くのに本当に苦労した……

そして文字数的にも、最初期を除けばもっとも少ない。

それでも3,000文字越えてるけどね!


以下、おじさんのパーソナルデータです。


リアル名 喜多川(きたがわ) 昇平(しょうへい)


奥さんと2人の子供を持つ39歳の社会人。

βテスト最中に交通事故に遭い、長らくリハビリ生活を送っている。

本業はジュエリーデザイナー。

ゲーム内でも細工士なので、ほとんど同じような作業をしている。

なお、ゲーム内の方がスキルアシストやゲーム的な補助があるので、ゲーム内の方が作りやすいと感じている。

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