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Unlimited World ~生産職の戦いは9割が準備です~  作者: あきさけ
第7章 都市防衛戦 都市ゼロ
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258.【防衛戦2日目】アークデーモン

 最終決戦のために転移させられた先は、荒野の中に広がる何もない岩場だった。

 その周囲だけ不自然と言えるほどに何もない。

 周囲には岩や石が転がっているというのに、俺達プレイヤーが転移させられた先にはただ平らな岩の地面が広がっているだけだった。

 これはまるで、この一角だけ何かで切り取ったかのような光景だった。


 そんな岩場へと、このイベントに参加していたプレイヤー達が次々と転移してくる。

 転移に多少のタイムラグがあったようだが、大した問題でもないだろう。

 実際、視界の端に表示されているボス討伐までの残り時間は減っていないし。


 およそ800人のプレイヤーが転移させられてきてもなお、この岩場には余裕があるくらいに広い。

 そんな岩場を巨大な影が覆った。


 空を見上げてみると、翼を持つとても巨大なデーモンが1体、姿を現していた。


「うわー、でっかいデーモンだねー」

「そうじゃのう。ひたすらにでかいのう」

「……あんなのと戦うことになるのかしら」

「うーん、グレーターデーモンよりも大きいね」

「……まあ、800人参加のレイド戦だからな。()も大きくなけりゃやってられないだろう」


 メタな事を言ってしまえば、攻撃対象が小さくては攻撃できる人数が限られてしまい、ゲームとして成立しない。

 だからこそ巨大な敵が必要になり、ああ言った巨体のデーモンというのは絶好の対象なのだろう。


『来たか、我々に逆らう異邦人どもよ』


 アークデーモンの口上が始まった。

 で、プレイヤーの方はというと……


「きたぜきたぜ……」

「ラストバトル、これ以上ない舞台だ!」

「こいつ相手に活躍できれば、夢のプラチナチケットにも手が届くかもしれないぞ……」

「さあさあ、早く戦闘開始を……!!」


 うん、前口上なんて聞いてないな。

 まあ、早いところ戦闘を始めたいという気持ちはわかるが。

 運営か開発かは知らないけど、頑張って作ったんだろうから聞いてもいいと思うのだがなぁ……


『さあ、始めよう。我らと貴様ら、どちらが勝利で締めくくるのかを決める戦いを!』


 前口上が終わったアークデーモンが地上に降り立ち、遂に攻撃可能となった。

 ……なお、前口上中にアークデーモンの下に潜り込んでいて待っていたプレイヤー達は、アークデーモンの着地時の衝撃で吹き飛ばされていた。


「ああ、よく飛ぶわねぇ……」

「抜け駆けするものはゆるさんという事なんじゃろうな」

「さて、ボク達もはじめよー」

「そうですね。支援、始めます!」

「さて、あまり気乗りしないけどこれで最後らしいし、さっさと終わらせますか!」


 俺達も一歩遅れて戦闘を開始する。

 ドワンは近接攻撃のために足の方へと近付いていき、ユキは神楽舞で支援に入る。

 俺とイリス、柚月は遠距離攻撃のため、前衛の頭越しにアークデーモンを狙って攻撃を始める。

 他のプレイヤー達も一斉に戦闘行動を開始して、周囲は派手なエフェクトが飛び交う場と化した。


 足の周辺に群がるのは、近接アタッカーやタンクの集団。

 時折、衝撃波で吹き飛ばされながらも、負けじと攻撃を重ねていく。


 遠距離アタッカーは、そんな前衛陣の遥か上を狙って攻撃している。

 射程距離が延長されているのをいいことに、アークデーモンの胴体や人によっては頭部を狙って攻撃している。

 アークデーモン側も負けじと魔法などで反撃しているが、反撃で吹き飛ばされる人数よりも攻撃に参加しているプレイヤー達の方が圧倒的に多く、攻撃は止まらない。


 800人のうち、どの程度が攻撃に参加しているのかはわからないが、アークデーモンのHPバーはかなり勢いよく削られていく。

 最初10本だったHPバーは数分で9本になり、9本目もすぐに減って行く。

 ……まあ、制限時間は60分な訳だし、遅くても6分に1本は減らせないといけないんだから、この程度の事は不思議じゃないか。


『うぬぅ……なかなかやるな。ならば、我も戦い方を変えるとしよう!』


 HPバーが8本に減ったアークデーモンは一度飛び立ち上空へと消えた後、戦場に4本の光の柱が突き刺さった。

 その周囲にいたプレイヤーは派手に吹き飛ばされたが、ダメージ自体はほぼない様子だ。

 そして、それぞれの光の柱の中からは、その大きさをグレーターデーモンサイズにしたアークデーモンが出てきた。


 各アークデーモンのHPバーは1本しかないので、これを破壊したら消えてなくなるのだろう。

 アークデーモンが雄叫びを上げると同時に戦闘が再開される。

 アークデーモンが4体に増えた事で、プレイヤーは分散されることとなったが、その総火力は衰えることはない。

 分散された分、時間はかかったが、戦闘開始から20分弱で4体のアークデーモン全てを撃破した。


 すると再び、戦場中央部に光の柱が突き刺さり、最初と同じサイズのアークデーモンが姿を現す。

 そのHPバーの数は予想通り4本に減っており、これで半分のHPを削ることに成功した形だ。


 再び姿を現したアークデーモンに対して、プレイヤー達は先程よりも激しい攻撃を繰り出していく。

 これが最終決戦である以上、出し惜しみをする必要などまったくなく、誰もが消耗を恐れずに最大火力で攻めていく。


 さて、そんな中、俺達がどうしていたかというと……


「……ああ、やっぱり最終決戦だけあって皆派手よねぇ」

「柚月、サボってないで攻撃に参加したらどうだ?」

「サボってるわけじゃないわよ。……大技が全てリキャストタイムだから回復待ちなだけで」

「小技も繰り出せばいいだろうに」

「そこまで火力を出したいわけでもないからね。別にダメージランキングに入りたいわけでもないし」

「……まあ、俺もそこまで出力上げてるとは言えないけどな」

「それでもこのペースで攻撃を続ければ、かなりいい線までいけるんじゃない?」

「さて、どうだろうな。上位100位にまで入れればいい方だと思うけど」

「あなたなら、50位以内でもいけるんじゃないかしら?」

「それはどうだろうな。……さて、十二天将の再使用が出来るようになったな。十二天将、朱雀!」


 こんな感じに程々の勢いで攻撃を続けていた。


 あからさまに出力の低い柚月、出せる火力技は全て出しているイリス、全力とは言えないまでも高火力技を連射している俺、と言ったところか。

 正直、これ以上ダメージランキングで目立つ必要もないからな。

 多分、今日もザコ相手の総ダメージランキングでは最上位の辺りにいるだろうし、ボスランキングでも上位に入るつもりまではない。

 だからと言って、手を抜くのは趣味じゃないから高出力ループで攻撃しているけど、これだけで50位以内は難しいと思うんだがな。

 なにせ、参加しているプレイヤーの装備の質は、俺達が装備している装備とほぼ一緒のはずで、今までは圧倒的に優位に立っていた装備品の力というアドバンテージがなくなっているんだからな。

 装備品が同条件なら、レベルが高い戦闘系プレイヤーの方が優位に立てるはずなのだ。


 ……さて、そんな事を考えながら攻撃すること20分あまり、戦闘開始から40分ほどが経過した頃、アークデーモンのHPバーの数が遂に残り2本となった。


『我をここまで追い詰めるとは……こうなれば、奥の手を使わせてもらおう!』


 漆黒だったアークデーモンの肌が、赤黒い光を放つようになる。

 それにあわせてアークデーモンの攻撃も激しさを増すようになり、足下への踏みつけや腕の叩きつけ、様々な魔法攻撃など、今までの攻撃全てにエフェクトが追加されて攻撃力と攻撃範囲が増したようだ。


 それをみたプレイヤー達は、言うまでもなく喜び始めた。


「よっしゃ、最終形態来たぞ!」

「これが最後の詰めだ! 火力もっと上げろ!」

「何でもいいから攻撃、攻撃だ!! とにかく攻撃あるのみ!」

「あのサイズの攻撃を受けたらどうせ即死級のダメージなんだ! 守りなんか気にすんな!!」


 ……まあ、最後の強化形態だものなぁ。

 そりゃあテンションも上がるという訳か。


 最終形態に移行してから数分、アークデーモンのHPは残りゲージ1本分を切り、最後のHPバーが半分程度まで減っていた。


「これはそろそろ終わるねー」

「ああ、そうだな。ようやく戦いも終わりだな」

「そうだね。あとちょっとだね」

「何というか、長い戦いだったわよね」


 俺達は攻撃の手を少々緩めて戦っていた。

 まだ残り時間を10分以上残した状態で、相手のHPバーは半分程度しか残っていない。

 ここまで来れば、負ける要素などほとんど存在せず、後は他のプレイヤー達任せでも終わってしまうだろう。

 まあ、完全に攻撃を止めることもしないけどな。


 やがて、HPバーが半分を切ったタイミングでアークデーモンが全身から衝撃波をだし、周囲にいたプレイヤー達を吹き飛ばした。

 ……このタイミングだし、最後の演出か?


 衝撃波の効果で周囲にプレイヤーのいなくなったアークデーモンは、膝をつき肩で息をするようになっていた。

 もちろん今でも遠距離攻撃自体は止んでいないが、アークデーモンのHPが減っていく様子はないし、演出中の無敵時間かな?


『おのれ、矮小な人間どもに我が負けようなどと……』


 最後の見せ場とばかりにセリフを述べるアークデーモン。

 セリフが始まったことで、遠距離攻撃も一応止むこととなる。

 おそらく無敵時間が終わったら、攻撃が一斉に始まるんだろうな。

 アークデーモンのセリフは続いていたが、その時、天空から何かが勢いよく降り立ち、アークデーモンの首をはねてしまった。


「な……何だ一体?」

「新手か?」

「アークデーモン戦終わったのか?」

「敵の増援? でも、それならアークデーモンを倒さないよな?」


 プレイヤーの間にも困惑が広がり、ざわめきが止まない中、アークデーモンの体が黒色の炎で焼き尽くされて消えていく。

 そんな中に残っていたのは、赤い髪に黒色の翼を持った天使だった。


「ふむ、愚か者の討伐に出向いてきたが、面白い者達もいたものだな。まさか、この悪魔を追い詰めるとは」


《アークデーモンが討伐されました。乱入者の存在でクエスト内容が変化します》


 ―――――――――――――――――――――――


『悪魔の軍勢の総司令官を撃破せよ』


 クエスト目標:

  敵性対象を撃破する

 勝利条件:

  アークデーモンの撃破 1/1

  ???の撃退

 敗北条件:

  なし

 クエスト報酬:

  イベントポイント(報酬ポイントは戦闘内容によって変化)

 特殊条件:

  デスペナルティなし(死亡判定となった場合、60秒後に後方にてリスポーン)

  攻撃時有効射程延長


 ―――――――――――――――――――――――

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