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Unlimited World ~生産職の戦いは9割が準備です~  作者: あきさけ
第7章 都市防衛戦 都市ゼロ
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253.【防衛戦2日目】戦況の行方

「おらおら、DPS上げていくぞ!」

「次、行くわよ!」

「ボルケーノショット発射!!」

「テンペストアロー、行くよー」


 開戦から30分ほどが経過した。

 櫓上からは昨日以上の高出力(DPS)で前線に攻撃スキルを叩きこんでいる。

 その甲斐もあってか、既にレッサーデーモンは全滅しており、デーモンソードマンやデーモンファイターなどのデーモン種が前線まで出てきている。

 昨日に比べるとかなり早めの展開だ。


 だが、あちら側もやられてばかりでいる訳じゃなく、新しい兵種をつぎ込んできている。

 その1種が、遠目でも確認出来た悪魔の重騎兵、デーモンキャバルリー。

 こちらは今のところ動き出してはいない。

 だが、重鎧を着込んだ騎兵という見た目だけでもかなりのプレッシャーがある。

 あれが動き出すタイミング次第では、前線が乱れることもあるだろう。


 そしてもう1種が……


「チッ、矢を受けちまった!」

「ヒーラー班、すぐに回復を!」

「わぁってる。ミドルヒール、リフレッシュ!」


 先程からこの櫓にも攻撃を仕掛けてきているデーモンスナイパーだ。

 悪魔の弓兵であるが、攻撃距離は非常に長い。

 少なくとも、プレイヤーが使う普通の弓よりもはるかに長い距離を狙い撃ってくる。

 こちらの攻撃はライフルや魔導弓ではない限り届かないのに、あちら側からは無制限に攻撃が飛んでくるのだ。

 それも通常攻撃だけならまだしも、時折チャージアローのようなノックバック効果のある矢も飛んできており、それを食らって櫓から落とされるプレイヤーも時々いる。

 櫓自体に矢が当たっても大したダメージにはなっていないようだが、櫓の上にいるプレイヤーにとってはなかなかの脅威だ。


「トワー。スナイパーを狙い撃ちに出来ないのー?」

「できたらやってるよ。あいつら、攻撃の度に移動してるんだ。だから、狙って当てるのが難しいんだよ」

「そっかー。それじゃあ、攻撃の瞬間を狙ってテンペストアローが効果的かな?」

「それができたらな。テンペストアローもテンペストショットもためがあるし、着弾まで少し間がある。その間に効果範囲外まで逃げられたら意味がないぞ」

「……それもそうだね。あの密集地帯の中をよくスルスルと移動できるよねー」

「確かにな。ともかく、今のところは範囲攻撃で巻き込めることを祈るしかないな」

「お祈りかー。もう少し確度のいい攻撃方法ってないのかなー?」

「それも調べながらやるしかないだろうよ。さて、リキャ開けたな十二天将、行くぞ!」


 今のところ、騰蛇の効果でデーモン全体を焼き払うのは妨害されていない。

 詠唱時間(キャストタイム)がそれなりにあるから、そこを狙い撃ちされると弱いのだが、相手の攻撃の隙をついて発動させることで発動失敗(ファンブル)はしていない。

 発動失敗(ファンブル)してしまうと、次の発動まで300秒待たなければならないから、非常に効率が悪くなってしまうのである。

 他の櫓でもそうだが、大技を繰り出すプレイヤーを援護するために、タンクが2名ずつ櫓に上がって盾になってくれている。

 デーモンスナイパーの攻撃間隔が一定の間はタンク無しでも俺はいけそうだけど、そのうち間隔もずれてくるだろう。

 そうなると、タンクに盾になってもらうしかない訳で……


「騰蛇、発動!」


 また発動に成功した超広範囲攻撃がデーモン達にダメージを与えていく。

 一発のダメージは少なくても、前線に来ているほとんどのデーモンにダメージを与えているので、戦果はかなり大きいはずだ。

 似たような広範囲攻撃持ちの【流星雨】がダメージランキング2位だったこともあるし、このまま進めば今日も同じようなランキングになるだろう。


「しかし、いつ見てもスゲーよな、そのスキル」

「簡単に覚えられるものでもないけどな。覚えたかったらジパンの重要住人の信頼を勝ち取ることだ」

「まずそれが出来そうにないわよね。ともかく、【魔銃鬼】は味方の訳だし気合い入れて行くわよ」

「そうだな。俺達だって活躍しないとな!」


 少なくとも、この櫓にいるプレイヤー達の士気は高い。

 この調子で攻撃を続けていけば、昨日よりも短時間でデーモン達を蹴散らせるだろう。

 ……まあ、そう簡単にはいかないようだけどね。


「指揮官に伝令! 背後に控えてるデーモンキャバルリーが動き始めた! どこを狙ってくるかはまだ見えないけど、タンク部隊に注意を促してくれ!」

『指揮官より通達。悪魔の重騎兵が遂に動き始めたみたいだ。タンク部隊は突破されないように特に注意してくれ』

「ありゃあどこに向かってるんだ? そのまま前に突っこんでくるつもりか?」

「それは無理でしょう? 前線にはデーモン側の軍勢もいるのよ?」

「……デーモンの前線に動きあり! 両翼が開き始めた! おそらく騎兵の狙いはそこだ!」

『指揮官より通達! 両翼を務めているタンクは防御態勢! アタッカー陣は前に出すぎないように注意!』


 デーモンキャバルリー達は左右両翼にできた穴から一気に突撃をかけてくる。

 勢いの乗ったその一撃がタンク陣にヒットすると、タンク陣が一気に押し戻される。

 どうやら、あの突撃にはノックバックの効果があるみたいだな。


 タンク陣が押し戻されてできた穴は、すぐ横にいるタンク達によって何とか塞がれる。

 タンクが押し戻された結果として乱戦に持ち込まれるのは防げたみたいだな。


「……これは予想以上に攻撃力があるな」

「デーモン全体が動くから事前察知がしやすいのが救いかしら?」

「どちらにしても、下手すると押し込まれるな。何とかして騎兵の足を止めないと」


 キャバルリー達は攻撃が終わると、すぐに引き返してしまうようだ。

 手綱さばきが見事というか、なんというか……


「次は突撃のタイミングに合わせて、テンペストショットを撃ちこんでみるか」

「ボクもテンペストアローを使うよー」

「……そうだな。突撃を仕掛ける瞬間に範囲攻撃で焼いてみるのが一番か」

「あと、勢いがついていて止まれないでしょうから攻撃をおいてみるのも手かしら」

「どちらにしても早めに勢いをそがなきゃな」


 櫓上の面々も攻撃タイミングを伺うように大技の連発を控えるようになった。

 突撃タイミングで大技が使えないんじゃ話にならないからな。

 上からならデーモン側の動きが丸見えだから予測はしやすいしな。


 待つこと2分弱、デーモンキャバルリーが次の突撃場所を決めたようだ。

 場所は陣地中央、ど真ん中をぶち抜くコースで突撃をかけてくる。


「よりによってど真ん中とはな、都合がいいぜ! 行くぞ、多重発動、ボルケーノブラスト!!」

「テンペストエッジ!」

「テンペストアロー!」

「テンペストショット!」


 デーモンキャバルリーの進路上に次々と範囲攻撃が叩きこまれ、その中にキャバルリー達が突撃していく。

 それによって、突撃の威力はそぎ取られ、タンクにぶつかるときにはほとんど勢いがなかった。


「よっしゃ、よくやった、遠距離班!!」

「近接班、突っこめ!! デーモン達を馬から叩きとせ!!」

「それよりも馬を攻撃して倒してしまうぞ! 馬がいなけりゃそこまで恐くもない!」


 突撃の勢いがなくなったことで引き上げるにも手間取っているキャバルリー達にプレイヤー側の追い打ちがかかる。

 少々攻撃班が突出してしまっているが、それ以上にキャバルリー達の馬をほとんど潰してしまった。

 陣地後方まで逃げることに成功した騎兵は……20体程度か?


「どうやら上手くいったみたいだね、トワ」

「……上手くいきすぎて恐いけどな」

「確かに。これだけの仕掛けじゃないと思うんだが」

「気にしすぎじゃない? それよりも私達も追撃に移りましょう」

「それもそうだな。気合い入れるとすっか!」

「……まあ、あまり気にしても仕方が無いか。十二天将、騰蛇!」


 大半のキャバルリー達が片付いたことで再びこちらの優勢状態になる。

 生き残ったキャバルリー達が再度左翼に攻撃を仕掛けてきたが、そちらも事前に待ち構えていた後衛陣による範囲攻撃の雨で潰されることとなった。

 これで、面倒なのはデーモンスナイパーだけになるな。


「後はスナイパーをやれれば一気に攻め込めるんだが……」

「どうもそうはいかないようだな。相変わらず移動しながら攻撃を撃ちこんで来るぞ」

「こればっかりはどうにも出来そうにないわね……」

「そうだな。前衛陣が今の壁を乗り越えてくれるまで待つしかないか」


 スナイパーに関しては事前察知ができそうにないので、スナイパーを潰す事は諦め範囲攻撃で手広く攻撃を当てていく。

 時折、スナイパーにも攻撃があたっているらしく、攻撃間隔は段々広がってきた。

 前衛陣も少しずつ押し込んで行ってるし、後は前線が押し込むのを待つだけか?


 そのまま十数分が経過し、遂にデーモンの軍勢が壁を構築できなくなってきた。

 スナイパーからの攻撃も途絶え気味で、こちらの攻撃がよく通るようになってくる。

 そうなれば後はデーモン達を撃破していくだけであり、近距離アタッカー陣をメインにした掃討戦を仕掛けることになるだろう。


「……スナイパーには手こずらされたけど、これで終わりか?」

「トワ? 何か引っ掛かるの?」

「いや、これだけで終わりなのは少し簡単すぎやしないかと思ってな」

「でも、向こうの軍勢はもう総崩れだよ? これ以上何もない思うけどなー」

「……だといいんだが。とりあえず攻撃は続けるか、十二天将、騰蛇発動!」


 残り少なくなってきた敵を炎で焼いていく。

 数が少ない分、ダメージ量は少ないだろうが、テンペストショットを撃ちこむよりは全体に対しての被害は大きいだろう。


 そんな風に最後の詰めを行っていたとき、突如街中から黒い炎の柱が何本も立ち上がった。


「……おい、あれはなんだ!?」

「知るかよ! 指揮官、情報はないのか!?」

『指揮官より各位。現在街中でデーモンの攻撃と思われる黒炎が立ち上ってる。状況がわかり次第、次の指令を出すから注意していてくれ!』

「……どうやら、そう簡単には終わらせてくれないらしいな」


 このタイミングで街中に吹き出した黒炎だ。

 どう考えても運営側の仕掛けた罠が発動したんだろう。


《悪魔の軍勢が市街地に出現しました。これより勝敗条件が変更になります》


 ―――――――――――――――――――――――


『都市ゼロを悪魔の軍勢から防衛せよ』


 クエスト目標:

  都市ゼロに攻め込んでくる悪魔の軍勢を撃退する

 勝利条件:

  グレーターデーモンの撃破 0/4

  ナイトメアリーパーの撃破 0/1

 敗北条件:

  街門の破壊 0/4

  市街地の60%以上の損害 損害率0%

  教会の破壊

 クエスト報酬:

  イベントポイント(報酬ポイントは戦闘内容によって変化)


 ―――――――――――――――――――――――


 ええい、市街地が直接狙われたのか!?

 今日は予備戦力も少ないからこのままじゃ守り切れないぞ!?


いつもお読みいただきありがとうございます。

「面白かった」「これからも頑張れ」など思っていただけましたらブクマや評価をお願いします。

作者のモチベーションアップにつながります。

誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。



~あとがきのあとがき~



街門外から街門内の様子が見えるのはそう言う演出だからです。

普通だと、防衛戦の最中は街門の内外は隔離されているため、様子をうかがい知ることはできません。

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