236.【3日目】モンスター達の異変
昨日の夜に設定資料を投稿しました。
内容は非常に薄っぺらいですが、興味のある方はそちらもご確認ください。
シリーズ登録してあるので、目次ページの上段にリンクができています。
なお、作者の頭ではあれが限界です。
……某骸骨魔術士さんとかインベントリアとかそういう本格的な設定を期待されても困ります。
……いや、書ければよかったんですけどね、ああいう本格的に読み応えのある設定資料集。
イベント3日目。
午前中は自由行動という事でリアルの方で家事を終えた後、ジパンの屋敷で巻物の解読作業を行う。
途中からユキもやってきて、休憩の時にお茶を用意してくれたり、それ以外の時はモフモフや精霊達とおしゃべりをしていた。
それから昼食を挟んで午後のログイン。
午後も昨日決めた予定通り、イベントサーバーへと向かいアイテム作りを行う。
メインはポーション作成だったが、途中から銃のオーダーも入ったらしく、各種銃を作成しておいた。
オーダーしたプレイヤーには優先的に売り渡し、残った銃は他の装備と同時に売り出すこととなった。
そして、イベントサーバー上で5時間ちょっとアイテム作成を行っているとワールドアナウンスが流れてきた。
《都市ゼロのプレイヤー達によってイベントポイントの交換が可能になりました。交換場所は教会になります》
どうやら昨日から続いていた魔封石納品クエストがクリアされたらしい。
柚月の話だと、ほとんどのプレイヤーはイベントポイントが余っているらしいし、これでイベントポイントのやりとりが活発化してくれるだろう。
「トワくん、今のワールドアナウンス聞いた?」
同じ部屋でせっせと料理を作っていたユキが話しかけてきた。
「ああ、聞いたぞ。ようやく昨日のクエストがクリアされたようだな」
「そうみたいだね。えーと、私も結構ポイントが貯まってるから、様子見も兼ねてポイント交換に行きたいんだけど、一緒にどうかな?」
「……そうだな、息抜きも兼ねて行ってみるか。柚月達にも声をかけてみるか?」
「そうだね。時間があるようなら皆で行ってみよう」
俺とユキは後片付けをした後、他のメンバーの工房を訪ねてイベントポイントの交換に行ってみないかと提案する。
俺達以外の3人はそれなりに忙しかった様子だが、イベントポイントが有り余っているのは同じらしく、全員で行ってみることとなった。
クランホームを出て教会に向かう途中、先程のアナウンスについて柚月から疑問の声が出てきた。
「それにしても大分時間がかかったわね。私の予想だと今日の昼過ぎにはクリアできてたはずなんだけど」
「深夜帯にログインできたプレイヤーが少なかったとかなんじゃないか? 俺達が納品した時点で23,000個くらい残りがあったんだし、これくらいかかってもおかしくはないだろ」
「そうじゃのう。自分達で稼いだわけではない以上、予測が外れることも多かろうて」
「そうだねー。とりあえずポイント交換は開放されたんだし、いいことなんじゃないかなー?」
「ともかく、行ってみましょう。何があるか楽しみですし」
「それもそうね……って、すごい人だかりね」
教会の前は大勢のプレイヤー達でごった返していた。
俺達と同じようにイベントポイントの交換にきたのだろう。
教会の中に入れば、インスタンスフィールドなので混み合うことはないが、入り口前はどうしても混み合ってしまうようだ。
「……とりあえず、しばらく人が減るのを待つとするか」
「そうね。流石にあの人混みの中を入っていく気にはなれないわ」
教会近くのベンチに座って待つこと20分あまり。
ようやく人混みが減ってきたので、俺達も教会内へと入ってみることにする。
教会内には相変わらず、司祭のアレスと巫女のユーノの2人しかいなかった。
「いらっしゃいませ、皆様。皆様もアイテム交換でしょうか?」
「ええ、そのためにやってきたわ。交換ってあなたにお願いすればいいのかしら?」
「正確にはあちらの女神像にお願いすることになります。私では対応できませんので……」
「そう? それならあちらを調べてみることにするわ」
「お願いいたします。それでは何かありましたら声をかけてください」
「ありがとう。それじゃあまたね」
ユーノに教えてもらった女神像に近づくと、システムウィンドウが表示された。
ここからイベントポイントの交換ができるようだ。
だが、イベントポイントの交換には一つ制限がついていた。
「……装備品の交換は1つだけしか行えないのね」
「ふむ、そしてその装備品はイベント終了までトレード不可か。また絞ってきたのう」
「ボク達はそれでも構わないけど、困る人も沢山いるだろうねー」
「……あ、でも、見てください。竜帝装備のレンタルもしてくれるみたいですよ?」
「あら、本当。イベント終了までの間のみ使える竜帝装備ね。こちらはポイントも少なくて済むし、こっちがメインになるのかしら?」
「どちらにしても、何と交換するかは決めておいた方が良さそうだな。……ひとまず俺はパスするが」
「私もパスね。輝竜装備は持ってるわけだし、他の装備品も使わないと思うのよね」
「わしもパスじゃのう。カースドメアか? 邪竜装備とやらは気になるが、ひとまず保留かのう」
「ボクは邪竜装備の魔導弓にするよー。他に使いそうな装備ってないからねー」
「私も邪竜装備の薙刀にします。これを聖霊武器に取り込むことができれば、一段階上の性能になりますから」
「それじゃあ、とりあえずはこれで終了ね。……イベントサーバーへのアクセス可能時間も減ってきたし、一度通常サーバーに戻りましょうか」
夜に何かあった場合、イベントサーバーで活動できる余裕を残すことを考え、俺達は通常サーバーの方へと帰還する。
その後は自由行動となったために、俺は通常サーバーでのポーション作成を行うことにした。
……昨日から大量のポーションを作っているからキツくなってきたけど、消耗品は何かと使う機会が多いから仕方があるまい。
そして、夕食や寝る支度を調えての夜時間ログイン。
クランホーム側からログインしてメッセージボードを確認したら、柚月からのメッセージが残されていた。
「えーと、イベントサーバーにいるモンスター達の様子が変わってきたので注意すること、か。何かあったのかな?」
これだけじゃ詳しい内容がわからないので柚月を探してみることに。
だが、談話室にいたイリスに話を聞くと、一回戻ってきた後にまたすぐ出かけていったらしい。
何でも今日の攻略会議がまだ終わっていないんだとか。
モンスターの情報は急ぎで伝える必要があるため、一度戻ってきてメッセージを残していったとのこと。
「攻略会議か。そんなに時間がかかるような内容を話しているのか?」
「ボクにはよくわからないかなー。とりあえず、自分が帰ってくるまでイベントサーバーに行くのは禁止、って言ってたけどね」
「そうか、まあいいだろう」
「それじゃ、時間が空いてるトワに依頼だよー。★12のライフルを10丁ほど作成依頼が入っているから、対応よろしくねー」
「……また、随分と大口の注文だな。そんなに資金力に余裕があるクランだったのか?」
「正確には個人で発注してきたプレイヤーが10人かなー。でも、この様子だとまだまだ増えるかも?」
「……依頼として成立してるんなら文句は言わないさ。素材はもうできてるのか?」
「クラン倉庫に入れてあるからそれを使ってねー。ドワンの分も入れてあるってさ」
「そう言えばドワンは?」
「自分の受けた依頼をこなすために工房で装備作りの最中かなー。それからつけてほしいボーナスの種類は、このメモ通りにしてほしいって」
「了解。それじゃあ、俺も工房に行くとするよ」
「うん、頑張ってねー」
イリスに見送られて、俺は工房へと向かう。
工房ではユキが料理を作っていた。
「あ、トワくん。トワくんもアイテム作成?」
「ああ。銃の依頼が入っているらしいからそっちの対応」
「そうなんだ。私の方は、装備作りがないから、こういうときは楽かな?」
「俺だってそこまで忙しいわけじゃないさ。……さて、それじゃ俺も生産を始めようかな」
「あ、うん。引き留めちゃってゴメンね」
「気にしてないさ。ユキも生産頑張ってくれよ」
ユキと別れて自分の作業スペースへと向かい、クラン倉庫から銃のパーツを取り出す。
今回は★12の装備作成という事で一切妥協がない最高品質のパーツが揃っている。
俺の方も素材を厳選しつつ生産作業を開始した。
流石に最高品質品を10丁ともなるとそれなりに時間がかかり、全て完成したのは1時間ほど経過してからだった。
ステータスボーナスも指定通りに付与し終わったし、とりあえずこれで完成だろう。
メモによると依頼を引き受けたのは柚月のようなので、完成した銃は一度俺の個人倉庫に入れておくことにする。
柚月が戻ってきた後にでも引き渡せばいいだろう。
ユキの方も一段落ついたようなので一緒に談話室へ向かって休憩することにする。
少しの間、まったりとお茶を楽しんでいたらホームポータルから柚月が出てきた。
何やら大分疲れた様子だが、大丈夫か?
「柚月、今帰ったのか?」
「見ての通りよ。……これからドワンとイリスも呼んでくるから少し打ち合わせね」
「わかった。それじゃあ、ここで待ってることにするよ」
「お願い。私は2人を呼んでくるわ」
「あ、ドワンさんとイリスちゃんは私が呼んできますね。柚月さんはここで待っていてください」
「そう? それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわ」
柚月が談話室に残り、代わりにユキが2人を呼びに行く。
柚月はやはり疲れた様子で机に突っ伏していた。
「そんなに疲れるような内容だったのか?」
「疲れるというか、頭のいたい状況ね。皆が集まったら説明するわ」
程なくして『ライブラリ』で都市ゼロに参加しているメンバーが全員揃う。
全員が揃ったところで、柚月が今日の会議の内容について説明を始めた。
「まずはイベントポイントの交換が解放されたことね。これのおかげで★12装備の需要は幾分落ち着いたものになりそうよ」
「たしかに。イベントポイントで装備がレンタルできるのであれば、そちらでも構わないというプレイヤーは多いじゃろうからの」
「どちらにしても、素材を余らせておく必要はないから明日以降もイベントサーバーでの装備作成は継続ね。それから、イベントサーバーで生産系スキルのレベルを上げる方法も判明したわ」
「それってどうやるのー?」
「イベントポイントの交換品の中に『生産スキルレベルアップチケット』って言うのがあるらしいわ。それを持っていれば、生産スキルの経験値が貯まってレベルアップできるらしいわね。ただし、1レベル上がる毎に1枚消費するらしいけど」
「それだと、私達が入手する必要はあまりないでしょうか?」
「一応、1枚くらいは手元に置いておいても構わないと思うわ。そんなに高いポイントじゃないみたいだし」
「ちなみに、頭を抱えていた問題はそこじゃないんだよな?」
「ええ、もちろんよ。ここからが本題だけど、イベントサーバーのモンスターが全体的に強化されているみたいね」
「モンスターの強化か。具体的にはどういう風に変わったんだ?」
「私達が戦っていたウサギだと、逃げようとしたときに逃げ道を塞ぐようになったという事かしら。あとは、全体的にばらけて行動することで範囲攻撃に巻き込みにくくなったと言うところね」
「他のモンスターも強化されたのかの?」
「報告によるとそうらしいわ。全体的に凶暴化しているとのことね」
「……何となくだけど、嫌な感じだな」
「ええ、そうね。モンスターの強化されたタイミングが、今日のお昼頃って言う話だから、イベント開始から48時間頃なのよね」
「って事は、この先もモンスターが強化される可能性はあるって事か」
「どうもそうらしいわね。……難易度ナイトメア設定は本当のことのようね」
イベント期間中に強化されていくモンスターとか厄介事以外のなにものでもないな。
これでは経験値を稼ぐのも一苦労だろうに。
「ともかく、しばらくの間は装備の充実を図っていくことで生産系クランとプレイヤーは一致したわ。周りが生産を始めれば、今生産を止めているプレイヤーもいつまでもサボっている場合じゃなくなるでしょうから」
「希望的観測ではあるがの。スキルレベルを上げる方法も見つかっているならばいつまでもサボっているわけではあるまいて」
「そう言う事ね。それじゃあ、今日のところはこれで解散しましょう」
「わかった。それじゃ、解散だな」
「うむ。柚月、お疲れ様じゃ」
こうして3日目の話し合いは終わりとなった。
モンスターの強化というのが気になるところではあるが、それをこれから確かめに行くのは、柚月が辛いだろう。
俺としてもこれ以上やることはないので、柚月に注文されていた銃を渡してログアウトすることとなった。
さてさて、明日はどうなることやら。
いつもお読みいただきありがとうございます。
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