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閑話19.5.クランホーム

第1章を終えての活動報告を書いていたら衝動的に書きたくなった間話です。

1話の長さとか内容の濃さ薄さはいつも以上に気にしてません()

勢い任せに書いた(ほぼ説明回に近い)話です。


本日2本目の投稿になります。


もし、12時55分以降に最新話から訪れた方は1話分飛んでますので、前話もお読みいただけますようよろしくお願いします。

「トワ、クランホームを買いに行くわよ」


 3月も終わりという頃のある日。

 柚月に呼び出されたと思ったら、そんな宣言をされた。


「……ずいぶんといきなりだが、何かあったか?」

「『何かあったか?』じゃないわよ。クランホームを買うのに十分なお金が手に入ったから買いに行こうって言ってるの」


 クラン口座の金額って、柚月任せにしてて自分じゃ確認してないんだよな……


「……そこまで稼いでたっけ?」

「何言ってるの? 稼ぎ頭はあなたとユキよ?」


 ああ、なるほど。

 ポーションと薬膳料理か。


 現在の市場において、高品質ポーションはほぼ、というよりは完全に俺の独占状態だ。

 ★4品ですら滅多に出回らない、出回ったとしても1個単位の販売なのに対し、俺の場合は★4品なら10個単位、★5品でも5個単位で販売している。

 そしてそれらはかなり強気な値段設定でも売れている。

 なぜなら、このゲームにはポーション中毒の概念があるからだ。


 ポーション中毒とは短時間に大量のポーションを使用すると発生するバッドステータス(バステ)で、中毒状態になるとポーションを使用することで逆にダメージを受けるようになる。

 さらに、ポーション中毒中は各種ステータスも下がり、中毒を治す方法は時間経過による自然回復しかない。


 そのため、ポーションの使用機会が多い前線での攻略組ほど高品質なポーションを求める傾向がある。

 だからこそ、強気な値段でもある程度の範囲なら飛ぶように売れるわけだ。

 それに、たまにあえて俺の考える適正価格より高値をつけているポーションも売れている。

 それだけポーションの需要は供給を多く上回っているのだろう。


 また、ユキの売っている薬膳料理もバカみたいに売れている。

 ★4品でHP・MPが30上昇、★5品になるとHP・MPが50上昇する料理は、死線に立つ最前線組にとっては文字通り生死を分かつアイテムになっているのだろう。


 薬膳料理はβのときに存在を確認出来なかったため、かなり強気な値段で売りに出したが1時間もしないうちに即完売した。

 あまりにも売れるのが早かったため、追加を並べる際にはさらに高値にしたのだが、これも1晩持たずに売り切れていた。


 そもそも、バフ付き料理がまだあまり出回ってない中に、異常とも言えるバフがついた料理が並んでいるのだ。

 ボス攻略など重大な局面では無理をしてでも使いたいのだろう。


 前線組は冒険者ギルドの依頼も数多くこなしているはずだし、懐事情もまた違うのだから。


「それで、クラン口座にはどれぐらいたまってるんだ?」

「聞いて驚きなさい。……6M(ロクメガ)よ」

「6Mって……600万か。それまたずいぶんと入ってるな」

「内訳を見るとね、やっぱりユキの料理が大分大きいのよ。あの子、自分の売上から口座に振り込む割合を結構高い割合にしてるらしくてね。私的には2割でも十分て言ってあったのだけど……」

「何割が振り込まれてるんだ?」

「売上の5割、半分が振り込まれる設定になってるわね。……私が言うのも変だけど、原価計算とか大丈夫なの?」

「ああ、そっちは問題ない。薬膳料理は原価が高くないからな。普通の料理に薬草系の代金が上乗せされるぐらいだ。……薬草の下処理に代金が発生しないなら、だが」


 ちなみに、ユキが売っている薬膳料理に使われる薬草の下処理は全て俺がやっている。

 錬金術と調合のスキルが必要になるせいで、ユキでは高ランクの素材にできないためだ。

 薬草類はユキが用意しているが、下処理の代金については受け取っていない。

 そのため、原価はかなり安くすんでいる。


 そんな料理が1日に十個以上のペースで売れて、しかも単価が1万Eを越えているわけだ。

 クラン口座にも資金が貯まるというものだろう。


 ちなみに、俺のポーションは売上の3割がクラン口座に行くようになっている。

 他のメンバーも売上の3割前後をクラン口座に入れているはずだ。


 なにせ、クランホームを準備するのは今後の事を考えると急務なのだから。


「ともかく資金はがっつり貯まったわ。あとはいい物件を見つけて改修してしまうだけよ」

「……それもそうだな。それで、他の皆には伝えてないのか?」

「伝えたわよ。でも、その辺は『私達に任せる』で終わってるわ」

「……相変わらずだな、皆。お店も出すのに場所にはこだわらないのか」

「逆に私がこだわるから気にしてないんじゃないのかしら? あと、ユキは『よくわからないからトワくんに任せる』ですって」

「まあ、正式版から始めてるユキにクランホームの場所を考えろと言ってもきついか」

「そう言う事よ。これ以上、ここで立ち話をしても始まらないわ。早いところホーム屋へ向かいましょう」


 ホーム屋とは、一言で言えば不動産ショップだ。

 ホーム用の土地や建物、あるいはホーム内で使用する各種オブジェクトの販売を一手に担っている。

 ……まあ、ゲーム的にいろんな場所に散らばると大変だから、と言う理由もあるだろうが。


「いい物件は早い者勝ちだからね。急ぐわよトワ!」

「はいはい、わかったよ。今の時点でそこまでお金のあるクランなんて少ないと思うけどな」


 柚月の勢いに引き摺られるようにして俺はホーム屋へと向かうのだった。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「うーん、立地条件としてはここが最良よね。予算の範囲だと」


 ここは第2の街の中央広場から北門に向かう大通りの途中にある建物の前。

 ホーム屋で柚月が希望条件を伝えたら、この建物へと案内されたというわけだ。


「お客様の要望を満たすのでしたら、ここが一番かと」

「確かに立地条件は最高よね。……ただ、ちょっとボロイのが気になるわね」


 目の前にある建物はレンガ造りの立派な建物だが、少しばかり年期が入りすぎている。

 一言で言うなら、柚月の言う通りボロイ。


「確かにこちらの建物は、建築されてから、そして人が住まなくなってからかなり年月が経過しております。その代わりといては何ですが、取り壊し費用は私どもで負担いたしましょう」

「へえ、気前がいいわね。それじゃあ、ここは土地代だけでいいって事ね。ちなみにおいくら?」

「そうですね、こちらの土地は立地条件がいいためお値段も高めですが……今でしたら100万でお譲りしましょう」

「100万Eか……トワどう思う?」

「悪くないんじゃないか? もっとも、この上に建てる建物の代金次第になるが……」

「そちらにつきましても勉強させていただきますよ。それでは一度私どものお店に戻りましょう」

「わかったわ。行きましょう」


 とりあえず、土地の方はこれで構わないだろう。

 一等地とまでは言えないが、アクセスが悪いわけじゃない場所がこの値段で買えるのだから。


 ホーム屋に戻ってきた俺達は、次に建てる建物の設計に入る。

 これも要望を口頭で伝えていけばそれに見合った形の建物ができてくるので楽でいい。


 そして、デザイン関係は柚月の得意分野だから丸投げしてもとりあえずは問題ない。


「うーん、大体こんな感じかしら。トワ、確認お願いできる?」

「どれどれ……」


 外観は元のレンガ造りの建物を洗練したようなものになっている。

 周囲の建物もレンガ造りが多かったからな、それに合わせたのだろう。


 ただ、最大の違いは元の建物が2階建てだったのに対して、新しい方は3階建てになっていることだ。


「柚月、3階建てにした理由は?」

「1階は予定通り店舗スペースに、各人の工房スペース、あと、休憩用の談話室。2階には来客用の応接間と会議室その他予備の空き部屋。3階は各個人用の私室ね」

「……2階って必要か? それに来客用スペースと私室が同じ階でも問題なくないか?」

「来客スペースはあった方がいいに決まってるじゃない。それに、私室は来客用スペースとは分けたいのよ。個人がくつろげる空間って大事なのよ? 特に外部の人間が出入りできないようなスペースはね」

「……そんなものか?」

「そんなものよ。プライベート空間の大事さを少しは理解しなさい」

「……まあ、そこまで言うなら反対はしないが。ちなみにどれくらいの金額になるんだ?」

「工房や店舗スペースに置く予定のオブジェクト費用込みで250万よ」

「土地代とあわせて350万か……予算ギリギリに近くないか?」

「まあ、それはそれでいいんじゃない? お金を使わないと経済ってまわらないわけだし」

「ホーム屋に支払う金額はデータの海(うんえいのもと)に消えるけどな。ちなみに、各人の中級生産セットの代金は含まれているのか?」

「それは別ね。ただ、それぞれの生産セットの値段は事前に把握済みよ。合計で70万あれば揃うわ」

「じゃあ、総計420万Eか……本当に余裕がない予算だな」

「まあ、いいじゃない。今のペースならクラン口座に入る金額も落ち込まなそうだし」

「……まあ、いいか。それじゃ、これで決めることにしよう」

「おっけー。それじゃ、これでお願いしますね」

「かしこまりました。……ちなみに中級生産セットでしたら当方でもご用意出来ますよ?」

「あらそうなの? でも手数料とか発生しない?」

「お客様には大量に購入いただいていますから、逆に多少でしたら値引きも可能かと」

「本当!? それならここで頼むわ!!」


 柚月がすごい勢いで店員の言葉に食らいつく。

 ちなみに、必要な生産セットを全て揃えてもらう事にした結果、合計で50万Eまで値引きしてもらえた。

 これで使用する金額は400万Eちょうどになった。


「……はい、確かにクラン口座より、代金をいただきました。それではこれより各種工事を行わせていただきます」

「え? すぐに使えるようになるんじゃないの?」

「元ある建物をそのままご利用いただくなら別ですが、今回は既存の建物の撤去から新しい建物の建築まで必要ですからね、大体これほどのお時間がかかります」


 店員から提示された完成予定日はそれなりの期間を要するものだった。

 ちなみに、完成予定日はゲーム内時間で日付と現実時間での日付の両方が書かれていた。


 βテストのときは建て替えや改修を行ってもすぐに使えるようになってたから、ここも正式版からの変更点かな。


「うーん、これは結構かかるわね。工期って短縮出来ないの?」

「こればかりは私どもでもどうにも。申し訳ありませんが……」

「……それなら仕方が無いわね。これで手を打ちましょう」

「申し訳ありません。よろしくお願いいたします。また、増改築や設備を増やすようなことがおありでしたらまたおこしくださいませ」


 クランホームに関して全ての用件がすんだので、俺達はホーム屋を後にする。


 そういえば気になることが1つあったな。


「なあ、柚月。購入する施設の一覧にホームポータルが無かったが大丈夫か?」

「ああ、あれね。結構いいお値段だったから今回は見送ったのよ。さすがに値引きはしてくれないみたいだったし」

「そうか、あると便利なんだがな」

「まあ、便利系の施設は完成してから皆で考えましょう。それじゃ、私は皆にクランホームが決まったってメール出すから」

「わかった、頼んだよ、柚月」


 こうして、クランホームの購入という一大イベントは幕を閉じた。


 クランホームが使えるようになるのは春休み明けだが、まあ仕方が無いだろう。


 新生『ライブラリ』のクランホームがどうなるか。

 それが今から楽しみで仕方が無かった。

誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。



~あとがきのあとがき~



前話(19話)で書かないと言っていたエピソードをいきなり突っこんでみるテスト。


思いつきで書いてしまった閑話ですが、普段の倍近い勢いで書けてしまいました。

キャラのはっきりしているトワと柚月だけ動かすのって楽だなあ。


あ、あと、第1章を終えての所感を活動報告に書かせていただきました。


ページ下の方の『作者マイページ』のリンクから見に行けますので、興味のある方は是非お読みください。

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