表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/466

19.ガンナーギルドと拳銃の製法

 明くる日、俺は第2の街にある生産ギルドの談話室に『ライブラリ』のメンバーを集めていた。

 理由は俺が手に入れた1つのレシピを見せるためである。


「……トワ、確かにこれはわしも欲しかったレシピだ。だが、これをどこで手に入れた?」


 鍛冶士であるドワンが俺にそうと問いかける。


「それは、そのレシピ『拳銃』が指し示すとおりガンナーギルドだよ」

「ふむ、ガンナーギルドか。あるとは思っていたがどこにあった?」

「第2の街の町外れにぽつんと。あれは誰かに場所を聞かないとわからないだろうなぁ」


 俺だってあんな町外れにまで行ったことはなかったもの。

 誰も場所を知らなくても無理はない。

 むしろ、前を通りかかっていたとしても気付かないかもしれない。

 それくらいひっそりとしたギルドなのだ。


「それにしても、拳銃を作るには【鍛冶】【工芸】【錬金】が必要とはねぇ……」



 ――――――――――――――――――――――――――――――



 前日、俺はゼノンから指定された場所、ガンナーギルドを訪れていた。

 ぱっと見の印象は、はっきり言ってギルドに見えない。

 むしろ大きめの民家のように見える。


 だがゼノンに指定された場所は間違いなくここだし、クエストマーカーもこの建物を指し示している。


「とりあえず入ってみるか……」


 見ていてもしょうがないのでこの建物に入ってみることにしよう。


 すると、


「いらっしゃーい、ガンナーギルドへようこそ!」


 やたらとテンションの高い受付嬢から出迎えられた。


「いやー、ここに訪ねてくる人なんて本当に久しぶりだよ。他のギルドにはよく異邦人達も来てるって聞いてたのに、うちのギルドだけ全然人が来なくてさー。ねえ、君どうしてだと思う?」


 テンションが高い上に、やたらとなれなれしいな。

 よっぽど暇だったらしい。


「見かけがただの民家にしか見えないからじゃないですかね? 多分、異邦人達もこの街にガンナーギルドがあると思ってませんよきっと」

「あーやっぱり見た目かー。でも、改築するようなお金はないしなぁ。せめてギルドエンブレムだけでも外に掲げておいたら違うかな?」


 うん、そうだと思うよ。


「君もガンナーみたいだし、まずはギルド登録だよね。……はい、これで完了。それで今日はどんな用事かな?」

「錬金術師のゼノンさんからここに来るように言われたんですけど」

「ゼノンさんから? っていうことは君も錬金術士かな? 助かるわ、これで滞っていた作業ができる!」


 元々高かったテンションがさらに上がった。

 俺が錬金術士であることと何か関係があるのだろうか。


「とりあえず君にお願いしたいのは『拳銃』の製造よ! 素材は全部そろっているから早速で悪いんだけどお願いね!」

「拳銃の製造!?」


 思わず聞き返してしまった。

 今まで誰も手に入れた事のないレシピ、それが『拳銃』だった。

 そのため、ガンナー達は弾で攻撃力を稼ぐことしかできなかったのだ。


「そう、拳銃の製造。あれ、ひょっとしてゼノンさんから何も聞いてない?」

「はい、聞いてないです」


 すると受付嬢さんは仕事の内容を説明してくれた。

 ガンナーの武器、つまり『拳銃』はいくつかの素材を【錬金】スキルで合成して作るらしい。

 少し前まではゼノンさんが引き受けていたが、増加する薬の需要を満たすために薬作りに専念する必要ができた。

 そのため、今では拳銃を完成させることができず、売ることができなかったという。


 ここまでの説明を聞いたタイミングでシステムメッセージが表示された。


 〈Wクエスト『拳銃の製造』を開始します。このクエストが達成された時点より、拳銃の流通が行われます〉


 ……Wクエスト、つまりワールドクエストですね。

 どうやらこのクエストを完了しないと、拳銃を買うことはできないらしい。

 これは面倒とか言ってられないな。



 ……

 …………

 ………………



 〈Wクエスト『拳銃の製造』をクリアしました〉

 《とあるプレイヤーが条件を満たしました。これより装備『拳銃』の流通が再開されます。なお、街により販売開始までの日数が異なります》


 久しぶりにワールドアナウンスを聞いたね。

 拳銃の入荷まで数日かかるのか。


「いやー助かったよ。やっぱり魔力の高い人が錬金をやってくれると仕事が早いね!」


 いや、魔力(MP)足りなくてポーション使ってましたから。

 まあ、それに見合うだけの【錬金】スキル経験値が入ったらしく、スキルレベルが3も上がってしまった。

 これ、それなりに錬金レベルが必要な作業なんじゃなかろうか。


「がんばってくれた君に朗報です。特別にガンナーギルドのランクを5まで上げます」


 ランク5? がんばったにしては半端なランクだな。


「そしてギルドランク5の特典、『拳銃のレシピ()()()』を購入出来るようになりました!」


 なるほど、素材を見ているから作り方も開示すると。

 そのためのランク上昇ね。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「とまあ、そういう経緯で俺は『拳銃のレシピセット』を買えるようになった訳だ」

「なるほどのう。そして、これがレシピというわけか」


 目の前にあるレシピは3枚。

 銃身・グリップ・拳銃の3つだ。


 銃身を作るには【鍛冶】、グリップを作るには【工芸】、最後に拳銃として組み立てるためモンスターの魔石を使い合成する【錬金】。

 これらが全部そろって始めて意味があるレシピだ。

 ちなみに、魔石が火薬代わりとなって弾丸を飛ばすことが出来るようになっている、らしい。


「しかしあれだ、ようやくレシピが手に入ったと思えば、そんな面倒な行程が必要だったとはのう」

「それで、ボク達に素材の作成をお願いしたいと」

「まあ、そういうわけだ。あと、この情報を『インデックス』に流すかどうかだな」

「情報は流しておかないと面倒なんじゃない? ようやく拳銃を買えるようになったところでプレイヤーメイドの拳銃がいきなり出回り始めたら話題になるなんてものじゃないし」

「それじゃ、後で教授に連絡しておくよ。それで、拳銃の素材なんだけど作れそう?」

「可能かどうか、で言えば可能じゃな。ただ、まずはブロンズで試さないと不安じゃ」

「同じく低ランク素材で作ってみないと不安かなー。レシピランク高いし」

「その辺は任せるよ。あと、耐久値が減ったときの修理は【鍛冶】扱いみたいだからよろしく」

「それじゃ、今日は解散ね。まったく、いつもの事だけど変わったもの拾ってくるんだから」


 まるで俺がいつも変なことしてるみたいなことを言われた。

 ……でも、反論出来ないような事してるよなぁ……



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「はっはっは、それじゃあ今でも拳銃の製造は請け負ってる訳だな!」


 あの集会から数日後、ゼノンさんの笑い声が響く。

 今日もゼノンさんの店で、錬金と調合の修行である。


「ええ、まあ。報酬も出ますし、錬金の修練にちょうどいいので」


 そう、結局、あの依頼の後もガンナーギルドには通って拳銃の製造を行っている。

 今は通常依頼扱いになっているが、錬金経験値がうまい上に1日に数回分請け負える。

 素材も向こう(ガンナーギルド)持ちなので、俺が使う費用はせいぜいMPポーションぐらいだ。


 教授と話し合って決めたガンナーギルドの情報拡散は上手くいっているようで、ここ数日は俺以外にもガンナーギルドを訪れる人が増えている。

 だが、拳銃の製造クエストは『拳銃』レシピを持った【錬金】スキル持ちしか受けられないため、実質独占状態だ。


「そうだろう。あれはお前さんレベルの錬金術士にはちょうどいいんだよ。俺以外に引き受ける錬金術士がいなかったから俺がやっていたけど、任せるのにちょうどいい弟子ができたなら任せてやらんとなぁ」

「それはどうも。でも、最初にいく前に事情を説明してもらえるとうれしかったんですがね」

「最初からネタバレしていたら面白くないだろう」


 うん、ゼノンさんはこういう人なのだ。

 悪気はないが豪快というかめんどくさがりというか。


 それでいて調合や錬金の指導は的確で、俺のスキルレベルはめきめき上昇している。

 ユキの方も料理人修行に励んでいて、あちらも順調なようだ。


 ちなみにサブジョブの方は1段階目のクラスチェンジ済みで『初級錬金術士』となっている。

 また、称号の方も『見習い錬金術士』を手に入れている。

 メインジョブの方は、狩りに行く時間が足りなくてここ数日はまったく上がってない。


 これは『ライブラリ』のメンバー全員に言えることで、狩りに行く時間を生産修行と商品作成に割り当てているためである。


 あくまでも生産職の戦闘力なんておまけみたいなものなので問題ない。

 最初のころに急いでレベル上げていたのは、第2の街に行けるようにするためだった。

 次は鉱山街に行かなきゃならないのだが、それは後日攻略組のクランに手伝ってもらう事になっているため、こちらも問題ない。


 それから、クランの拠点を作る事も出来た。

 第2の街の北門広場へ向かう通り沿い、そこにあった売り家を改築してクランホームとすることにしたのだ。

 1階は店舗スペースと各自の『工房』施設、それから休憩場所として談話室、2階は来客対応用の応接間や会議室など、3階が各個人の個室となっている。

 この建物を買ったり、建物内の設備を色々改装したり、あとは新しい各自の生産設備を購入したり等々。

 各自の販売利益から一部分を割り当てていたクラン口座――要するにクランの共有資産――の残額が一気に減ってしまったが、満足のいく買い物ができた。

 ただ、βテストのときはどれだけ改築や改装を施しても一瞬で完了していたが、正式サービスからは改築や改装を施すと時間がかかってしまうらしく、完成して引き渡しまではまだ数日を要するとのこと。

 これも、後は完成を待つばかりなのでまったく問題がない。



 問題があるとすれば……


「あ、ゼノンさん。明日からは大体1日おきにしか来られなくなりますので」

「うん? そりゃ毎日来なくても構わないが、何か用事でもあるのか?」

「ええ、まあちょっと」


 ……本来的な話をすれば問題ではない。

 現実(リアル)での本分を果たすだけだ。


 そう、つまるところ、昼間に予定ができる。

 明日からは高校生になるのだ。


第1章はこれにて終了。

次回掲示板回を挟んで第2章になります。


誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。


~あとがきのあとがき~


最後のところで数日分の時間がいきなり飛んでいますが、これは特に面白い事をやっていなかったため、文章に起こすのを省いたためです()


やっていたことと言えば、修行→商品作り→販売→修行→(以下略)になります。


これ以外には、クランホームを建てるために場所を探しに行ったりとかしていましたが……

あまり面白い話になりそうにないのでカットした記憶があります。

(この話を書いていたのは6月頭)


まだ掲示板回が残っていますが、第1章を終えての所感を後ほど活動報告に書かせていただきます。

活動報告書き終わりました(午前8時46分頃)


ページ下の方の『作者マイページ』のリンクから見に行けますので、興味のある方は是非お読みください。


書いてる内容はいつもの『あとがきのあとがき』に近いですが、かなり長くなったので活動報告に回しました。


それだけでは味気ないので、トワの第1章終了時のステータスを載せておきます。


名前:トワ 種族:狐獣人 種族Lv.19

職業:メイン:見習い銃士Lv.15

    サブ:初級錬金術士Lv.4

HP:104/104 MP:150/150 ST:107/107

STR: 8 VIT:16 DEX:34

AGI:19 INT:36 MND:20

BP: 0 SP:64

スキル

戦闘:

【銃Lv12】【格闘Lv9】

魔法:

【魔力Lv18】【火魔法Lv10】【水魔法Lv17】【風魔法Lv14】

【光魔法Lv10】【回復魔法Lv12】【魔力回復上昇Lv18】

生産:

【錬金Lv28】【調合Lv26】【料理Lv11】【生産Lv27】【道具作成Lv1】

その他:

【気配察知Lv15】【魔力感知Lv15】【夜目Lv10】【隠蔽Lv20】

【看破Lv16】【罠発見Lv1】【罠解除Lv1】【罠作成Lv1】

【奇襲Lv10】【隠密Lv18】【採取Lv20】【伐採Lv10】【言語学Lv10】

特殊

【AGI上昇効果・中】【風属性効果上昇・中】【風属性耐性・中】

称号

【初心者講習免許皆伝】【風精霊の祝福】【かつての英雄に連なる者】

【見習い錬金術士】【見習い調合士】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍版 Unlimited World 第1巻
2019年12月20日発売です!
UW表紙

小説家になろう 勝手にランキング


↓モフモフ好評連載中です お時間がありましたらこちらもよろしくお願いいたします↓

【新装版】うちのモフモフが最強! ~かわいさ最強(当者比)ワンコと行くVR冒険記。目指すはモフモフパラダイス!~


↓新作VRゲーム小説連載始めました 応援よろしくお願いします!↓
銀翼の冒険者がゆくVRMMO冒険譚~ときどき(彼女が)配信中~
仮面鍛冶士は今日も装備を作る ~Braves Beat~


小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ