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16.第2の街とクラン【ライブラリ】結成

「とどめ、フレイムランス!」


 お昼を軽くすませた後、改めてログインしてユキと合流。


 その後、「ライブラリ」のメンバーも集まり、【第2の街】へ向かいたいという話になった。

 そのため、先ほどのメンバーが再集結し、レイドチーム――複数のパーティで1つのパーティとするシステム――を使って「ライブラリ」の3人を第2の街まで護衛することとなった。


 本日2戦目となるキラーマンティス戦だったが、レイドチームによって若干ステータスが強化されていても特段問題なく撃破した。

 むしろ羽の部位破壊が出来るとわかった2戦目の方が簡単に片付いてしまった。


「それじゃ、護衛はここまでで大丈夫だよね、お兄ちゃん」

「ああ、護衛ありがとな、皆」


 転移門から始まりの街に戻っていく、ハルのパーティやリクを見送り一路生産ギルドへと向かった。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



「第2の街への移動、簡単にできて良かったねー」

「まあ、あっちからしてみれば、良質な装備を安く譲ってくれたお礼もかねてって話だからな」


 とりあえず生産をするわけではないが、談話室代わりに生産スペースを借りて今後の予定を確認する。


「無事【第2の街】にたどり着けた訳だが、今後の予定はどうする?」

「まず私達3人は、第1の街に戻って種族レベル上げね。多分、この周辺じゃまだ戦えないでしょうから」

「わしとしては早いところ【鉱山街】に向かいたいところなのじゃが……」

「それはまだ無理だよー。最前線組ですら鉱山街へのボス『ロックゴーレム』を倒せてないんだから」

「今日のようにレイドチームを組んでも無理だろうな。装備の質もレベルもまだ足りていない」


 鍛冶担当のドワンとしては、鉄鉱石が簡単に手に入るようになる【第3の街】別名【鉱山街】への移動を優先したいのだろうが、まだ攻略情報もそろっていない状況では無謀過ぎる話である。

 それは本人もよくわかっているだろうから、否定されてもあまり反応をしめしていない。

 昨日売りに出した装備が役に立ってくれるとうれしいのだが。


「【鉱山街】への移動については時期を見て考えるとしてだ、市場に流した商品ってどうなってる?」


 クランの結成もそうだが、何かとお金が必要になる生産職としては、商品の売り上げはやはり気になるところである。


「ボクの商品は全部売れてたよー」

「わしもほとんど売れておるのう。売れ残りは使用者の少ない大斧ぐらいじゃ」

「私もほぼ売り切れね。っていうか、トワの方はどうなのよ」

「俺も出品してた分はすべて売り切れてるな。さすが消耗品だけあって回転が早い早い」

「えっと、私の料理も売り切れてます。特に★4料理とか、あんなに高かったのに売り切れなんて……」


 予想通り全員ほぼ売り切れ状態のようだ。

 そもそも供給の少ない高品質アイテム群だ。

 お金を出せば買える状況で買わないと言う選択はなかったのだろう。


「うーん、それじゃあせっかく第2の街に来ていることだし、先にクラン設立だけしちゃいましょうか。お金にも余裕があるし」

「さんせー。出遅れて名前を使えなかったとかになっても困るしね」

「わしも異議なしじゃ」

「私もいいと思います」

「じゃあ決定だな」


 クラン設立の申請は第2の街以降の冒険者ギルドで可能となっており、設立費用5万Eを支払えば誰でも設立が可能となっている。

 早速、俺達は冒険者ギルドに向かいクラン設立申請を行った。


「クラン名【ライブラリ】で登録っと、できた!」

「それじゃ私達をクランに参加させてね、クラマス」


 柚月、ドワン、イリス、ユキをクランに参加させて、柚月にサブマスター権限を設定っと。


「あら、私がサブマスターでいいの? てっきりユキにするものだと思ってたけど」

「えっと、私じゃまだまだこのゲーム慣れてないので無理です!」

「冗談よ。初心者に面倒な役割を押し付けたりしないから安心して」


 柚月はなんだかんだ責任感あるからサブマスにはちょうどいい人選なんだよな。


「あの、そういえば皆さんはどういった経緯で集まったんですか?」


 ユキのその質問に全員が苦笑を浮かべる。


「それについては、そんなに深くはないけど理由があるんだよ。ここじゃ落ち着かないし、落ち着ける場所に行って話そうか」


 俺はそう言ってユキ達を連れて冒険者ギルドを後にした。



 ――――――――――――――――――――――――――――――



 街の大通りから一本外れた所にある喫茶店。

 そこで俺達は一息つくこととなった。


「ふう、この紅茶おいしいな」

「こっちのミルクココアもおいしいですよ」


 俺達5人が頼んだのは、ケーキセット。

 それぞれが好みのケーキとドリンクを頼み、舌鼓をうっている所だ。


「それで、このクランを結成した経緯ってどういうものだったんでしょうか」


 先ほども出た疑問を改めて聞いてくる。


「ああ、それね。ぶっちゃけていうと、他のクランからの勧誘がめんどくさかったからよ」


 柚月があのときの経緯をかなり端折って話す。


「え? クランの勧誘ですか?」


 案の定、ユキには伝わっていないみたいだなぁ。

 俺でも今の説明だけじゃ、理解出来ない自信があるぞ。


「あー、その前に私達の立場から話さなきゃダメか。私達4人、まあクラン結成当初はもっといたんだけど、全員、生産職としてはトップクラスの実力を持っていたのよ。もちろん、今でもトップ生産者を目指そうという目標はあるんだけどね」

「うむ。βテストの時にクランシステムが実装されたとき、激しい勧誘合戦があってな。そのときに、わしらのような上位生産スキルを持つ人間は、それはもういやになるほど勧誘を受けたのじゃよ」

「ホント、あの時はめんどくさかったよねー。酷い所になると、転移門に張り付いてつきまとってくる連中とかもいたしさー。ああ、そいつらはまとめて運営に通報(GMコール)で対応させてもらったけどね」


 あの頃は本当に大変だった、としみじみ語る3人。

 ちなみに、俺の所にも勧誘の話は来ていたが、一度断れば粘着してくるようなバカは『ほとんど』いなかった。

 それでも粘着してくるバカはPvPでぶちのめして、お引き取りいただいたのだけど。


「それでね、同じような悩みを持つ生産者で集まってどうしようかって話し合いをした訳よ。で、そのときに出た案が『自分達でクランを立ち上げてしまおう』って事だったのよね」

「複数のクランには所属出来ないからの。あくまで『自分達はもう別のクランに所属している』という事を示せれば、うっとうしい勧誘も減るだろうと考えたわけじゃな」

「それで、今度は誰がクラマスをやるかって話になったんだよ。できれば、ある程度戦闘もこなせて有名な生産プレイヤーがいい、って話になってねー。それで白羽の矢が立ったのがトワだったってわけなんだよねー」

「『生産プレイヤーの寄り合い所のようなクランを起ち上げるからクラマスになってくれ』、って頼まれたときは何事かと思ったけどな」


 βテストの時、俺は生産職としてもそれなりに有名ではあったが、それよりも前線に立つ攻略組プレイヤーとしての方が有名だった。

 そのようなプレイヤーを捕まえて『生産プレイヤークランのマスターになってくれ』という話はいっそ面白かった。



「俺もその話を聞いたときは、驚いたよ。でも、自分も何度か追い回されてる立場だったからな。事情は多少とは言え理解出来るし、何より自分も追い回されることがなくなるからって引き受けることにしたんだよ」

「ただ、クランの運営にトワがあまり口を出すのは好ましくないって話になってね。実質的な運営は、サブマスである私が行うって事になったのよ」

「そうしてできた生産職の隠れ家クランが【ライブラリ】と言うわけじゃな」


 懐かしい話を語る俺達を、ユキは楽しそうに話を聞いていた。


「それで、どうして今は4人しか残っていなかったんですか?」

「わしらはうっとうしい勧誘がいやであっただけで、クランに所属する気がなかったわけではないからな」

「普通の生産プレイヤーとして過ごしているうちに、良識的なクランとのおつきあいが増えて、条件面で折り合いがついた人達はそっちのクランに移籍していったんだよねー。で、最後に残ったのがボク達4人ってわけ」

「あ、辞めていったプレイヤーとも仲が悪いって訳じゃないのよ。今でもお互いに連絡を取り合っている人も多いしね」

「まあ残った俺達は、どこか特定のクランに所属する気がなかったメンバーって事になるな」


 あくまでも隠れ家という意味では、最初から所属する気がなかったプレイヤー以外が全員所属クランを見つけられた、というのは喜ばしいことだろう。

 おかげで隠れ家(ライブラリ)は閑散としてしまったが。


「なるほどです。でもそんなクランに私が所属してしまって良かったのですか?」

「ユキはトワの知り合いだしね。普段なら入団試験みたいなものをやるんだけど、特別枠って所かな。もっとも、あの料理の腕前なら十分入団試験も合格だけどね」

「βの時はわしらのことを『生産職の養成機関』とか『生産職の秘伝を教えてくれるクラン』だの勘違いしてくる連中もいたからのぅ」

「そういった人達は悪いけど入団を断ってきたんだよねー。で、ソッチの勘違いはなくなったけど、今度は『生産の秘伝を隠蔽してるクラン』なんて噂が出てきたりして大変だったなぁ……」

「まあ結局は、俺達しか残らなかったことでその辺の噂も自然消滅したわけだがな。俺達生産プレイヤーは、横のつながりも強かったりするからあまりにも態度の悪いプレイヤーは、生産プレイヤーのほぼ全員から総スカンくらうことになってたし」

「一時期は『生産プレイヤーには逆らうな』って話が広まった事もあったわね」


 今となっては懐かしい話をしながら、午後のゆったりとしたひとときを俺達は過ごすのだった。

誤字・脱字の指摘、感想等ありましたらよろしくお願いします。

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