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ヒロインがスパイ! ~~女神様にリサイクルスキル貰いました~~  作者: かのね
第一章 学園編という名のプロローグ
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第五話 残念光魔術よ、言わないけど

 

「へぇ君が噂の光魔法?」


 隣から此方に発せられた言葉に振り向く。そこには眼鏡をかけた深い青の髪の男子が薄く笑いながら話しかけて来ていた。そして私は前世でも思った軽いツッコミを心の中で入れる、私は光魔法ではないと。一週目はそのままの意味で、二周目は魔術的な意味で。


「えっと……」

「あぁ僕の名前はライト・ヴァーデルだ、君の魔法に興味が有ってね、同じAクラスという事で色々と実験させて貰えないかと思って」

「カーラ・ルクレンです、ライトさんって呼んでもいいですか?」

「……構わないよ」

「わぁありがとうございます! でもライトさん、いきなり女の子に実験させろなんて言わない方がいいですよ!」

「……へぇ、面白いね」


 既定路線。ゲームでこんなこと言ってたなぁと思い出しながら発言してみたら掛かった。自分では不気味に見せていて何を考えているのか分からない男を演出している魔術師団長の息子ライト。実際は仲のいい第三王子に取り入ろうとやって来る人間の選定を行っている仲間思いの一面を持っている。でも自分は研究者であって権力者としては向いていないとヒロインとは研究所で働くエンドとなる。

 なので政治的に関わり合いになりたくないというのも本当であり、だが友人の為に一肌脱いでいるというところだ。


 そんな彼は基本不敬罪にならない程度に無礼を働いている、今回もその一つだ。いくら爵位的に向こうが上であると言っても一応貴族令嬢、しかも光属性持ちにいきなりモルモットに成れと言っても、何を言ってるんだと白い目で見られるか露骨に嫌悪されるかどちらかだ。

 しかしヒロインちゃんは真っ向勝負して仲良くなろう的な発言(名前呼び)までするので、こいつはなんだか面白そうな人間だと目を付けられるわけである。そしてライトと一定数仲良くなると第三王子を紹介してもらえるのだ。なので先ずはこいつから優しく好感度を上げていきたい。


「ついでに言うと此処の席順も爵位順だから君はもっと後ろに行くのが道理だよねぇ?」

「えっそうなんですか! 空いてたから座っちゃって、教えてくれてありがとうございますライトさん!」

「でも君の場合光属性で特異だからここでもいいんじゃないかな? 良かったら僕と一緒に講義を受けるかい?」

「いいんですか! ライトさんて優しいんですね! 私初めてだから色々教えて貰えると嬉しいかな」


 えへっと苦笑いしてみると相手は此方をしげしげと見つめてきた。


「僕が優しいって? いきなり君をモルモットにしようとした僕が」

「でも本気ではやりませんよね? それにこうして教えて貰ってなんとなく感じました」

「なんとなくねぇ」

「女の直感は当たるんです、お母さんが言っていました!」

「……僕は直観とか信じないけど、君はあれだ阿呆だ」

「ちょっと、いきなり失礼ですよ! これでも私テスト満点だったんですからね!」

「では天然と言い直してやろう」

「そんな事言われたことないです」

「君の周りは見る目が無い」

「む~」


 唸りながらニヤニヤ顔のライとを睨む。だが飄々と何事も無いように教科書を取り出し始めたので、私も慌てたように取り出す演技をする。


 それからすぐに担任がやって来て今後の授業に関する説明があった。

 先ずはAクラスに配属され事への激励、そしてBクラスに落ちないように気を付けるようにという脅し。

 授業カリキュラムは午前中は座学として為政者として覚えるべき歴史であったり税の計算が主な内容、午後は剣術と魔術の授業。これはどちらか日によって好きな方を選べるのでゲームだと育成方法や好感度を上げたいキャラによって好きな場所に行くことが出来た。勿論魔法が使えない人は剣術を選ばざるを得ないが。


 その後は現地にて解散となり、放課後はサロンや自らの部屋でお茶会を開いたりと各々好きに過ごす事が出来るようになっている。


 そんな説明を受けた日でもいきなり授業が始まった。先ずはこの国の歴史から始まり次に算術の授業。知っている内容や算術に関しては前世の知識で乗り越えた後お昼休みとなった。お昼休みは各自寮で侍従に用意させておくか学園の食堂から貰う、または学園にある大食堂でご飯を食べるかである。基本爵位の高い人たちは各自食べるか何処か場所を抑えて食べるかの二択である。

 ライトは授業が終わるとさっさと消えてしまった。これから第三王子と食事に行くのだろう、此処で誘われるようになると一定の好感度が溜まったという事になる。

 私は一つため息をついて教室を後にした。いくつか視線を感じたが、座った場所に関してはライトが許可したことで注意しにくい雰囲気になったのだろう、彼は周囲からどう扱えばいいのか分からないと評判なのだ。家柄的には悪くないが性格が悪いのと権力を欲していないことから嫁いでもいい事が無さそうというのが共通認識らしい。


 そんな事を考えながら寮に戻ってリリアにご飯を用意してもらう。


「初授業は如何でしたか?」


 普通のメイドなら此方から話さない限り話かけてくることは無いが、彼女の場合帝国への報告があるので仕方ない。


「ライト・ヴァーデルに話しかけられた、光魔法に興味があるらしいわ」

「成る程、では三の方を?」

「うん、一先ずはそこからだと思うわ」


 ライトと第三王子の仲が良い事は帝国でも学べるくらいに周知されている事なのでリリアが知っていたところで何もおかしくはない。私は用意された料理に一応解毒の魔術をこっそりとかけてから食べる。いくら状態異常耐性があると言っても怖い、リリアの事はまだ信頼しているわけではないのでこれくらいは必要だろう。


 朝食も食べ終わり、今度は制服から質素なドレスを着て地下の広々としたスペースへ。此処では魔法の練習を行うことが出来る。また魔法を撃つことに必要な魔力の制御なども理論と実技を交えながら教わることが出来る。

 私は目を動かさずにライトを探る。彼に第三王子を紹介してもらってから仲良くなるまでは、基本午後は此方に顔を出したい。しかし早めに剣術の授業にも出ないといけないので焦りが生まれる。一度目を閉じて気持ちを落ち着かせてから開くとライトが私を見つけて寄って来るところだった。


「やぁルクレン譲、君が来るなら僕は君の事を観察させてもらうよ」

「ライトさん! 良かったらカーラって呼んでください!」

「……それならそうするよ」


 本当に呼び捨て同士で呼び合うのは婚約者くらいなので本来はあり得ないことだが、ライトはまた面白そうにニヤリと笑った。


 始まった魔法の授業は先ず魔力を感じ取り体にしっかりと馴染ませることから始まった。魔法というよりも何事においても身体強化や魔力制御というのは基礎の基礎として押さえておかなくてはならない事だ。自信がある人は先生に合格を貰ったら今日は好きに練習をしてよい事になった。

 隣のライトが先生に許可を貰ったので、私もお願いしますと元気よく手を上げて合格を貰った。


「もしかして光属性を持つ人物の魔力が多いというのは本当なのか」


 私の隣で私の練習という名のボール連発を見ながら唸るライト。その後は彼の使える魔法を見せて貰って凄い! と煽てたり、ぽつりと零した本当は薬師になんて言葉を拾ってなんだか似合うかもとか、今度薬草の事教えてとか言ったらまんざらでもなさそうな顔をするライト。女性からは気味悪がられてあんまり話したことがないのかもしれない。私としてはその方がやりやすくていいから歓迎だけど。


 初日が終了して部屋に戻る。しかしリリアの姿が無かったのでどこかで諜報活動をしているのかもしれない、ばれなければなんでもいいけど私に迷惑がかかる事だけは止めてほしい。


「あっ、おかえりなさいませ」


 リリアは私が帰っていたことに少し驚いたようで、そのまま頭を下げた。


「どうして驚くのよ」

「いえ、初日ですので張り切ってらっしゃるかと思い、ライト様と放課後も過ごしているのかと」

「いいえ、ライト、様は基本第三王子と共にいるでしょうから、まだあの方を紹介されていない私が行くわけにはいかないわ、それであなたはどちらへ?」

「報告と此方の協力者との顔合わせに」

「誰? 私の知っている人?」

「はい、Aクラスの担任です」

「……その男に私の事も伝えたの?」

「伝えましたが?」


 余計な事を……。

 私がじっとりと睨むと、居心地が悪そうにするリリア。


「できれば今後は協力者でも私の情報は極力与えないで、任務に支障が出ます、特にあの担任は」


 色恋で全部裏切れる男なんて信用できない。


「もしやあの方の女性関係でそう思われているのですか? あれは情報収集の一環ですので」

「違うわ」


 だが根拠がゲームと言ったところで分かるはずもないだろう。現実となって違う性格になっていればいいが、あの男は裏切りの他に脅迫も得意だったはずだ。今のうちに何かしらの対策を取っておかなければならないだろう。そして脅迫して来たら此方もなりふり構わず私の記憶を消さなければならない。

 

 私はこの三年で学んだんだ、やらなきゃやられるって事を。それが現実なんだという事を。









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