第三話 貴女は私で私は貴女、でもこのスキルは隠さなきゃ
恋愛まで程遠いので一旦『ハイファンタジー』に設定しました。恋愛が本気を出したら戻すかもしれません、また殆ど考えていないので軽く恋愛となる可能性もあるのでジャンルを変更いたしました。
「それではここ三年のカーラ・ルクレンの動向を報告します」
「はい」
私はゆるふわピンクゴールドの髪をした優しそうでもあり、話してみるとはつらつとした女の子と相対している。
実は彼女ここ三年の私の影武者だ。髪型も似せて顔の造りも似ているが、よく見れば別人とわかるだろう。しかし私は子爵に引き取られるまでこの街に居なかったので、私を知っている人がいない。そのため彼女こそがカーラなのだ、この街ではね。
実際私は影武者と今日初めて会った。まぁいないという事はあり得ないからどんな子かちょっと気にはなってたけど。
なにせ私の素性を調べられたら三年も帝国にいたなんて怪しすぎる。だから私が旅立った日の夕方にはカーラはこの家に戻って来たという事になっている。幸い領主はずっとあの調子だから私が偽物にすり替わっているということに気が付いていなかった。だから調べられてもカーラはここ三年このルクレン領にいたという事実が出来上がる。そしてこの少女は私としても有難い人材だった。
この世界にカメラなんて物は存在しない。またそれに似た魔道具も同じく存在しない。そんな中で私の話を聞こうとすると先ずピンクゴールドの髪が目に付くだろう。そして元気な感じも伝えることで私だと認識する。だから元の街だろうとこの街だろうとカーラは居た事になる。そして私が目の前の少女になる事によってそれは完璧になるはず。
本当はもっと身長とか弄って超別人にするつもりだったけれども、よく見れば別人にすることに決めた。なにせその方がこの街で過ごしたという信憑性が増すからだ。そのため、この影武者さんと三年内にあったことや知り合った人の話など、資料を見ながら聞いている。
彼女はそこまで外に出ることはせず、しかしカーラがこの街にいたという事を印象付けるために週に一度は外に出ていたようだ。そこで肉屋や八百屋などの店主と話したりして自分がさもこのルクレンに居るように見せかけていたのだとか。
そして私が出発すると同時に帝国からの指示で商業国家周辺の街に息をひそめることになるらしい。それは私の逃走の為だ。この国に隣接しているのは三つ。帝国と商業国家と教国の三つね、この国と教国は手を取り合って帝国と敵対、商業国家は我関せずといったところ。
だから私が逃げる事態に陥った時にゆるふわピンクゴールドの少女が商業国家に抜けたという事実を作るためである。しかし門番にその情報が伝わっている場合は別の場所で潜伏となる。まぁ見つかったとしても彼女はカーラでは無いので観衆の目の前でそれを証明してしまえばいいだけなのだけどね。例えば冒険者ギルドを使うとか。
そしてこの二日は私とカーラによるすり合わせが行われ、その隙に彼女の事をよく観察しておいた。
夜寝室で一人になってから称号を発動させると、昼間見た女の子が鏡の前に立っていた。私と似ているけど他人で、この街だと私。身長は同じくらい、顔は正直言ってベクトルがちょっと違う、私は元気っ子だがこの子はどちらかと言うとおっとり可愛く中身元気だ。そして私よりも胸部装甲が……もにゅっと出来る。
そんなこんなで出発の日、私はリリアと共に学園の制服といくつかのドレスを持って出発した。馬車での道中は特に何があるわけでもなかった。出来るだけ進んで街の宿に泊まるだけ。流石に令嬢が野宿というのはあり得ないので、必ず夜は街か村に泊まったのでそこまで大変では無かった。……ここ三年で大変の感じ方が緩くなった自覚はあるけど。
学園があるのは王都だ。
学園都市とかでも面白味があったと思うんだけれども、何かあった時に王子達が直ぐに駆けつけられないので仕方ない。
王子についてだが攻略対象になるのは一年先輩の第二王子、それから同学年の第三王子となる。第一王子は体が弱く養生中で他国にいる、最も王子と言っても継承権は自ら破棄しているので次期王はこの二人から決まることになるだろう。王弟もいるが、彼も現王の子共が二人生まれた時に継承権を破棄しているので問題ない。しかし第二王子は正妃の、第三王子は第二夫人の子なのでこのまま行けば第二王子が次期王になるだろう。
……だが第二王子が次期王になる事を望まない者もいる、因みに帝国もそうなので私は第二王子にへまをさせて第三王子を勝たせないといけないのだ。だがこれは私の思惑通りに事が嵌まればそこまで難しくないと思っている。それよりも嵌めた後逃げる事の方が難しい。
まぁ今からそれを考えても仕方ないね。
因みに一日一度だけ姿を変えられるという能力だけれども、解除しなければ一日中姿を変えることが出来る。しかしシンデレラよろしく深夜零時になると強制解除されるのでかけなおさないといけない。……夜中に誰と会う訳でもないのでどうでもいいと言えるけど。令嬢たちのお泊り会なんぞあるわけもないだろうし、あったとしても流石に複数で寝る事は令嬢としてありえないだろうしね。
なので馬車に揺られている今も姿を変えている。私の監視のリリアには姿を変えることは言ってあるし問題ない。それにこれくらいなら変装の範疇だ。それにリリアの立場もそこまで高くはないようなので、変装姿を見たら帝国にある事無い事言ってやると少し脅しておいた。
それが功を奏したのか今のところ深夜零時に覗かれている気配は全くない。
そんな旅路も終わり、私は無事に学園へと辿り着くことが出来た。
王都と言われるだけあってかなり大きい。基本的な区分は聞かされていたけれども、実際見るのとでは大違いだ。人が行きかい冒険者的な人も多い。露店を開いている人数も結構いる。
私の乗った馬車はそのまま学園へと到着した。今は質素な青いドレスを着ている。
馬車を降りて学園を目の前に見る、やはりゲームの画面で見たのと似ているけれども現実になると結構威圧感がある。王城の近くに建つこの学園は本当にお城の様でもあった。なのでお城が二つあるようにも感じるが王城の方が勿論ご立派です。
学園の近くにはこれまた大きな寮が二つ。貴族の子息たちは家からも通えるが基本的に寮に入る事となる。実家から通えるのはある意味ステータスだ。たとえ王都に家があろうとも寮に入る、許されているのはそれこそ王家とか公爵家とかだけだ。彼らはいつ何時何があるか分からないからね。
今日はまだ入寮だけなのでそのまま女子寮へと歩を進める。荷物は全てリリアに持ってもらっているので私は手ぶらだ。あと技術的に教えて貰った走法やらが出ないように気を付けて歩く。こんなところで「ややあの女の子出来る」とか目を付けられたくは無いのだ。一応学園では戦闘の授業もあるので実力の違いを指摘されては困る、そこもイベントがあるのだから。
寮を監督する中年女史に挨拶と名前を言って部屋を教えて貰う。寮の中もフワフワなカーペットが敷き詰められているので足が痛くなることはない。私は三階の一室を割り与えられた。
部屋は結構広い。テーブルに椅子ベッドにクローゼット等が置かれていて、どれも新品のように綺麗だ。この部屋の続きはシャワールームと侍従の部屋、侍従の部屋には簡易キッチンが置かれていた。一階の造りはリビングとベッドルームが別でお風呂もついているらしい、此処はもっと位の高いお嬢様が住むのだとか。
入学式は明後日なのであまりやることが無い。乙女ゲームの開始は入学式からで、入学式前日の夜について大変だったと作中語っているので、開始前に王都でのイベントは無いだろう。ゲームの中でもあの時会ったなどという話は出てこなかったと記憶している。
後はそうだ、暇になったのでスキルリサイクルでも試してみよう。リリアは先ほどから侍従の部屋に入って出てこないし此方を伺っている様子もない。此処に来るまでにそこまで仕事熱心な人ではないという事も分かったので割と自由はある。
私は手に入れた魔石を一つ手のひらに乗せて、スキルを発動させてみた。
すると魔石が淡く光り綺麗な透明な石へと変化した。私はそれを見者という名の鑑定を使い調べてみる。
経験値石中(C)
経験値が入る不思議な石
……は?
けいけんちせき? けいけんちがはいる? ちょ、ちょとまって! これを使えばレベリング簡単すぎない? 今までの苦労的な物は……。いやでもレベルが高くても弱い人と言うのは結構いる、これを使えば私もレベルは高くなるだろうが技術的に甘い部分を付け狙われるだろう。でもレベルが高くて悪い事はない。なので手のひらにある石に魔力を流しながら使いたいと念じてみると、石が淡く光り消えた。
そしてレベルが上がった……。
それからは取った魔石21個を全てリサイクルしてみた。その結果はこんな感じ。
経験値石小(C)×11
経験値石中(C)×3
経験値石大(D)×1
リサイクル石×4
スキル経験値石中(C)×1
低級ポーション×1
取り合えず経験値石はすべて使った。レベルが上がった……。
多分だけどかっこの中のCはC級の魔物の魔石だからだと思う。私が潜っていたのはC級ダンジョンだけど最後はDだったのでダンジョンの階級じゃなくて魔物の階級で決まるのだと思う。勿論階級が上がれば得られる経験値が大きいから狙うならそちらだろう。だけれども無理をしても意味が無いので技術と合わせながら頑張るしかない。
次のリサイクル石に関しては、取っておくといい事があるとしか書かれていないのでアイテムボックスの肥やしだ。
そして問題の二つ。ポーションね、ポーションが出来た時は流石に驚いた。手のひらに乗る魔石が淡く光ってうにょんと大きくなったと思ったらポーションが出てきたのだから。速攻でアイテムボックスに入れてからもう一度取り出してしげしげ眺めてみたけれども、私も使ったことがある普通のポーションだ。
まぁ神様から貰ったスキルだし何も言うまい……。
それよりも問題なのはスキル経験値石とか言うぶっ壊れ性能なこいつ。一応状態異常耐性に使いたいと念じて取り込んでみたけれども剣術のレベルが上がったので、ランダムではあるのだけれども……。この世界って結構スキルレベルが上がりにくい。なのでそれこそマックスはレベル10だけれども6あれば周囲から憧憬の眼差しで見られるレベル。基本は2か3だ。剣術で例えれば4あれば一歩抜きんでた剣士、5は中々の剣士となる。なのでスキルのレベルを上げられるという事はかなりすごい、それこそ成長チートと豪語出来る物なのだ。
一応懐に忍ばせている短剣を振るってみたけれども、今迄よりもかなり綺麗にそして素早く扱うことが出来ている。勿論技術的には足りないけれどもそこは仕方ない。逆にレベルでカバーできてしまいそうなことに戦慄した。
名前:カーラ・ルクレン Lv34(カーラ・ルクレンLv13)
種族:人間
職業:暗殺者(子爵令嬢)
スキル:【剣術Lv3】【体術Lv2】【気配察知Lv3】【状態異常耐性Lv3】【楽しいリサイクルLv-】【アイテムボックスLv1】(【体術Lv1】【光魔法Lv1】)
称号:<巫女><ルーファアースの加護><見者>()
ステータスを見るとレベルも結構上がっていた。この世界レベル50を超えればAランクと言われているのを考えるとかなり高いレベルだ。因みにカッコの中は私が偽装している内容となる。称号は無しに見えているはずだ。
かなり有用なスキルではあるけれども、それこそばれた時が怖いのでばれないように使わないといけなさそうだ。