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アビリティリングの秘密  作者: 9741
第8章 それぞれの願い
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皆の望み

「……ゴホっ、ゴホっ」 


 突然、空くんのお母さんがせき込みだした。


「だ、大丈夫ですか!?」

「ええ、ゴボ、大丈、夫。すぐに収まりますからっ、ゴホ」 


 大丈夫と彼女は言うが、どう見ても大丈夫には見えない。むしろ席が悪化しているように思える。


「おーい、凩! 売店でメロン買ってきたぞ! これ喰って、元気……!?」

「……!! お母さん!!」 


 車田くんと空くん、二人が戻って来た。 

 母親の異常な状態を見た空くんが、売店の袋を持った車田くんを押しのけて、病室に入ってくる。


「お母さん! お母さん!」「やつでさん、ナースコールを!!」 


 氷華ちゃんに言われるがままに、私はナールコールのスイッチを押した。 






 しばらくして看護師さんとお医者さんがやって来て、ストレッチャーに乗せてママさんを手術室へ連れて行った。 


 手術室の前で、私達四人は治療が上手くいくように祈る。


「空くん。お母さん、どこか悪いの?」 


 私は空くんに尋ねた。


「……名前は難しくて分からないけど、働きすぎが原因の病気。……治すには、たくさんお金がかかるらしい」 


 ママさんは親戚から借りたお金を返すために、かなりの無理をしたらしい。そのせいで病気になったという。 


 お金がかかる。その言葉で、私はピンっときた。


「もしかして、空くんがNEXに出場したのって、お母さんの治療費を稼ぐため?」 


 空くんは頷いた。 

 私は、凄いと思った。こんな小さな子が母親の病気を治すために、戦っているなんて。


「空くんは偉いね。ちゃんとお母さんを守っていて」

「……お父さんはもういないから、僕がお母さんを守らないと」 


 寡黙少年暗い目の向こうに、決意の色が見えた。


「誰かのために、何かをする。素敵なことですわね」 


 氷華ちゃんが空くんの頭を撫でる。


「実は、わたくしにも両親がいません。わたくしは小さい頃から孤児院で暮らしていました。……唐突とは分かっていますが、仲間である皆さんには聞いてほしいのです」 


 氷華ちゃんが改まったように話し始める。


「孤児院には私より小さな弟や妹が大勢います。でもお金が足りなくて、現在の経営はとても不安定なものです。もし閉園などという結果になれば、子供達全員が路頭に迷うことになってしまう。そんな時です、DCからNEXの開催が発表されたのは」 


 氷華ちゃんはNEXで優勝し、賞金で孤児院の経営を立て直そうと試みていたらしい。その目標は、エンダーとの戦いに発展しても変わらないようだ。


「常盤空くん」 


 膝を曲げて氷華ちゃんは、空くんと同じくらいの目線の高さになる。


「方向は違えど、私とあなたは崇高な目的を持つ者、同志です。共にエンダーを殲滅し、夢を叶えましょう」 


 そう言って氷華ちゃんは空くんに手を差し伸べる。彼女は握手を求めているのだ。


「……」 


 空くんは静かに、氷華ちゃんの握手に応じた。相変わらずの無言だったが、がっちりと閉まった状態だった彼の心が、少しだけ開いた気がした

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