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異世界という名の死後の世界  作者: ヒコ
序章 始点と終点編
1/47

第一幕 『生』と『死』


『生きる』か『死ぬ』かの選択を迫られた時、貴方ならどちらを選択する?



余程のことがない限り『生きる』を選択する。



なぜ『生きる』を選択する?


それは夢を叶えるためや人生を謳歌するためのような前向きな理由ではなく、ただ『死にたくない』からだ。自分が何のために、何を目的として生きているのかを考える人はほぼいないし、考える必要もない。人にとって『生きる』ことははただ渡るだけの1本の長い橋に過ぎず、渡る切ることは人生の終着点である老死を意味する。

しかし、全ての人が橋を渡り切れる訳ではなく、事故死や病死により思わぬところで橋から落ちてしまうこともあるが、それは抗いようがない。交通事故での死なら「あの時、ちゃんと信号を見ていれば...」、癌による死なら「もっと早く病院へ行き、診断を受けていれば...」と後悔の念に苛まれるが、予期できなかった時点でどうしようもない。



ーーーそれと1つ、大きな勘違いしている



人生の終着点が老死であることは間違いでないが、事故死や病死も人生の終着点である。つまり、『死』そのものが終着点を意味し、病死や事故死はその人に定められた終着点であり、その先はない。事故死、病死、自殺、全ては起こるべきして起こった事象であり、回避することは不可能。


では、一体誰が終着点を定めているのか?


神?仏?それとも閻魔?


どれも違う。

人の死についてはどの者も関与しない。


人生の終着点、死の判定を下す者......それらを総称して『死神』と呼ばれている。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「現世での進捗はどうなってる?」


「ちゃんと予定通り死を与えているから安心して」


「俺も問題ないぜ」


薄暗い空間に黒い傷んだローブを身に纏った者たちが円を作り、各々の発言が交錯する。


「っつーか態々集まって報告する程でもないだろ」


「まさかあの失態を忘れたのか?」


「別に忘れてる訳じゃねーよ。ただ、この集まりに意味はないだろ」


「これは我々に課せられた役割であり、僅かな失態が均衡を崩すことになる。それを経験してる君ならわかるだろう?だから、こうして集まり、それぞれの役割を再度向き合うようにしている」


「ったく、面倒くせぇな。そもそも言う相手が違うだろ、なぁ?」


彼は傍観している右隣の者に強引に話を振る。


「あぁ......」


ただ一言だけで言葉を継げることはない。


「相変わらず面白みのねぇ奴」


単調な返しに彼は舌打ちをし、颯爽と姿を消した。


「相変わらず勝手だね」


「仕方ないさ。では、気を取り直して他の進捗状況を聞こうか」



引き続き、各々の進捗状況を報告し、解散となった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ジリリリ、ジリリリ


「......」


ジリリリ、ジリリリ


「...うるせぇな」


電話の着信音が家中に響き渡り、俺は目が覚めた。

電話は一階にあるが、二階の部屋で寝ているため取りに行くにはかなり遠い。

だが、現在家にいるのは俺だけ。

もちろん無駄な労力を使いたくないので、ただ電話が鳴り止むのを待ち、数十秒で耳障りな音が鳴り止んだ。


カーテンの隙間から差し込む朝日に釣られてゆっくりと上半身を起こし、手元の時計に視線を移す。


「9時か」


この時間に掛かってくるは間違いなく高校の教師だろう。


「ほんとにしつこいな」


もう1年も高校へ通っていないが、いじめを受けたからとか授業が面倒くさいからとかそんな理由で登校を拒否してる訳ではなく、単純に学校へ行く意味がないからだ。


「飯でも食うか」


俺は深いため息を吐いてベッドから降り、一階のリビングへ向かう。

一軒家の二階立てで一般住宅並みの広さがあるが、1人だけだと不要な広さだ。

また、年季も入っているため、扉を開ける音、廊下を歩く音、階段を降りる音は家内の何処にいても鮮明に聞こえる。

リビングに辿り着くとテーブルの上に作り置きの朝食と1枚の紙が置かれていた。


「あいつ、また...」


俺はその紙を手に取り、裏を返すと短い文でこう書かれていた。


『残さず食べること 彩絵より』


彩絵とは幼馴染で昔から家が隣同士だったため、小学生の頃とかよく遊んでいたが、昔の話だ。

俺は彩絵だけでなく出来るだけ人と関わらないようにしている。


その理由は全て5年前の『あの日』に収縮している。



家族が殺されてた日、そして俺が終わるべきだった日ーーー。


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