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地味女子ですが、異世界来ちゃいました!  作者: フランスパン
アルバート編
36/100

第三三話 邪魔すンな!



 玉座の間は得体の知れぬ恐怖に包まれていた。

 その場にいる全ての者の視線を奪い、何人も眼を逸らす事を許さない、それほどの異形が、唐突に現れたのだ。

「アレは……間違えない、あの時の」

 カルミナが差し向けたケルベロスを倒した、謎の黒い靄の人形。

 ソレが再びここに現れた。

(アレはハルドラの魔法使いが……キーコから切り離したはずだ)

 魔法使いクロノが、君子から切り離して、それ以来人形は出なかった。

 正体を確かめるチャンス、そう思ったのだが、肝心の君子は玉座にぐったりともたれかかり気を失っている。

 これでは彼女からアレの正体を聞く事が出来ない。

『あぁううぅぅ』

 まるで獣の唸り声だ、前回同様知性は感じられないが、あの時よりもずっと生物らしい声に聞こえる。

(アレは『複製(コピー)』の特殊技能(スキル)でキーコが造ったと言っていた、ならば『設計者(デザイナー)』に進化した今は、あの時以上に精度が高い物が出来ているのではないか)

 だとすればまずい、手負いとはいえケルベロスを倒した。

 こちらはアレについて何も知らない、この場にいる全てを殺戮し始めるかもしれない。

 しかしヴィルムが退避を呼び掛ける前に、人形は動き出した。

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――――っ!』

 咆哮を上げると、階段を飛び降り真っ直ぐこちらへと向かってくる。

 ヴィルムは剣を抜き、迎撃を試みる。

「なっ」

 しかし人形は、ヴィルムには眼もくれず、彼の脇を物凄い速さで通り過ぎていく。

 振り返ると、後方に立っていたアルバートへと襲いかかった。

『あ゛う゛あ゛ぁっ!』

 近くにいたルールアやメイド、目の前にいたヴィルムも無視して、人形は一直線にアルバートへと向かっていく。

(アルバート様を狙っている?) 

クロノは、防衛本能がアレを造り出したと言っていたが、君子は命にかかわる様な事は何一つされていない。

 唯一何かされたとすれば――。

(まさか、キスされたくらいで、アルバート様を狙っているのか?)

 たかがキスくらいで防衛本能が働いて、アレを造り出すなど大袈裟すぎる。

 しかし、それしか考えられない。

 この人形は、キスで君子が造り出してしまったのだ――。

「――――っ!」

 人形は腕を振い、アルバートへと殴りかかったが、その攻撃はしっかりと見られていた。

 拳は実体のない胴体をすり抜ける。

 どうやら、得体のしれない人形の攻撃は『絶対回避』で避けられる様だ。

 アルバートはすぐさま剣を構え、迎撃しようとする。

「駄目だ、ソレに攻撃は利きません、アルバート様!」

 ヴィルムは、そうアルバートへと叫んだのだが――、剣は人形の腕を斬り落とした。

「な、にぃ?」

 黒い靄で出来た腕は、空気中に霧散する様に消えて行く。

 この黒い靄に剣撃が効いた、チリシェンで戦った時は、ヴィルムの剣は効かなかったと言うのに――。

(あの時は実体が無かったのに今はある……、前よりも人に近くなったから、実体があると言うのか――?)

 『設計者(デザイナー)』によって造られ、より生物らしくなって来た。

 生物に近くなり実体が出来たと言うならば――、君子は何を造り出そうとしているのだ。

(こいつは一体――なんだ)

 




************************************************************





『ああああうううううううぁぁぁぁっ!』

 人型は叫ぶ、まるで痛がっている様にも聞こえるが、傷口から出るのは黒い靄だけ。

 血液の代わりの様に大量の靄が溢れ出し、ソレが徐々に形状を変えて行く。

 すると、肘が出来て、手首が出来て、最後に指が五本生えて、腕が復元された。

 生物に近くなっているといえども、やはり異質な存在である事に変わりはない。

「……ならば」

 アルバートは、人形へと左手を向けた。

「雷霆は走り、我が敵を討ち抜く」

 紫色の魔法陣が展開され、光輝く雷が人形へと走る。

「紫魔法『雷霆撃破(ライトニング)』」

 雷は人形を討ち貫き、電流は全身を焼いた。

 四型の魔法に成す術なく、人形は吹っ飛ばされた。

『あ゛あ゛あああああああぁぁぁぁぁ――――っ』

 まるで悲鳴の様な声を上げる。

 現に雷魔法は効いたのか、かなりの量の黒い靄が空気中に霧散して消えて行った。

「ふん……何かと思えば、大した事ないな」

 得体のしれない物に警戒していたのだが、アルバートの攻撃は確実にダメージを与えている様に見える。

 オールAランカーにとっては、この得体のしれないモノも大した事は無いのだろうか。

『ああぁぁううぅぅ』

 人形は立ち上がると、後方へと跳ぶ。

 敵前逃亡かと思えば、人形は玉座で気を失っている君子の元へと向かった。 

そして彼女に向かって、右手を伸ばす。

『いいおぉぉぉ』

 すると君子の体から再び、黒い靄が放出された。

 闇魔法よりも黒いその靄を、人形が掴み取ると、靄は形状を変えて行く――。

 刀身があるが、柄は剣よりもずっと長い、剣というよりも槍、黒い靄の奥に金属の刃と朱色の柄らしき物が見える。

(キーコが、あの人形の為に武器を造ったのか……)

 気絶していても、武器を造れると言う事は、君子とあの人形は、生体リンクの様に何らかの形で繋がっているのだろう。

 だが冷静に分析出来たのもここまで、人形は武器を手に再びアルバートへと襲いかかる。

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――――っ!』

「……ふん」

 先ほどとなにも変わらない、戦法を変え死角を突く訳でもなく、ただ真っ直ぐアルバートへと襲いかかる。

 彼にとって眼で見え、眼で追える攻撃は攻撃ではない。

 だから真正面から人形の攻撃も、避ける必要など無い、ただ見ているだけで良いのだ。

 そして槍は、実体のないアルバートの腹部へと突き刺さる。

「……所詮は獣以下か」

 彼にとって、知恵も無くただ暴れまわるだけの人形は、獣以下の存在だ。

 見た事のないソレに驚きはしたが、もういい興ざめである。

 魔法で吹き飛ばす、先ほどよりも出力を上げよう、アルバートは左手を人形へと向けた。

 しかし――その時、人形は槍を握る両腕に力を込める。

『え゛い・お゛うう゛』

 そして、その一撃を叩き込んだ。



 瞬間、爆発した。



 いや、爆発なのかアルバートは良く解らなかった。

 爆裂音の様な物を立てたのは、彼の腹部に刺さった槍だったのだから――。

「がっ、はっ……」

 アルバートはこの感覚に驚愕した――それは、久方ぶりに味わう痛み。

 蒼い服が、彼の血で真っ赤に染まっていく。

自分の血を見るなど、一体何十年ぶりの事だろう。

「アルバート様!」

 戦いを見ていたルールアが声を上げた。

 『絶対回避』の特殊技能(スキル)を持つ、アルバートが傷を負う、ましてや血を流す所など、初めて見る光景だ。

 アルバートは、人形から距離を取った。

 一体何をしたのか解らないが、怪我を負ったのは事実、とっさに危険を判断したのだ。

 そして、激痛が走る腹部を確認する。

「…………棘?」

 傷口から出て来たのは、金属で出来た棘の様な物。

 槍で貫かれた所ではない、そこから離れた所に、この棘は突き刺さっていた。

 それも、まるで内側から外側へと突き刺した様に、先端を外へ向けて――。

「……まさか」

 アルバートが人形の槍を見ると、刀身が半分以上無くなっている。

 考えられるのはただ一つ――槍が棘となって、アルバートの内側から彼を貫いたのだ。

『うううううぅぅぅ』

 人形が槍を振ると、欠けていた刀身が一瞬で再生する。

 元通りの槍を構えると、人形は襲いかかった。

「――くっ!」

 アルバートは迫り来る人形から距離を取り、逃げた。

 突いた瞬間、敵の体内で棘となって飛散する槍など、このベルカリュースが如何に広くとも、そんな物見た事が無い。

 まして槍には再生機能がある、あの攻撃は無制限に放つ事が出来る。

 アルバートの特殊技能(スキル)『絶対回避』は、眼で見える事が絶対の条件、自身の体内は見えないので、槍の攻撃は避けられても、その後の棘の攻撃が避ける事が出来ないのだ。

『ああああああああ――っ!』

 人形は、逃げるアルバートへと追撃をする。

 しかし動くたびに腹部に激痛が走る、どうやら棘はまだ何本か体内に残っている様だ。

 アルバートは半魔半吸血鬼、この程度ならばまだまだ戦えるが、それでも痛みは彼の動きを鈍らせていた。

逃げるアルバートに追いつき、槍を突く。

『う゛あ゛ぁっ!』

 心臓を狙って放たれた槍、しかし特殊技能が無くともアルバートはその攻撃を十分避けられる。

 半身を引いて槍を回避すると、アルバートは剣を振う。

『え゛い・お゛うう゛』

 しかし、人型の叫びと共に槍は爆発し、鋭い棘を撒き散らす。

 棘はアルバートの体に突き刺さり、彼の肉を引き裂く。

「ぐあっ――」

 オールAランカーのアルバートが、この得体のしれない槍に翻弄されていた。

 理屈も技術もまるで解らない、こんな槍はベルカリュースには存在しない。

 長期戦になれば、アルバートはより一層不利になる。

「雷霆は走り、我が敵を討ち抜く」

 左手を向けると、紫色の魔法陣が展開された。

「紫魔法『雷霆撃破(ライトニング)』」

 淡い光を放ちながら雷が発射されて、人形を撃ち抜き、吹っ飛ばす。

 電流は黒い靄を削り取り、空気中へと霧散させた。

『あ゛あ゛ああああああ――――』

 吹っ飛ばされながら悲鳴を上げる人形。

 長期戦にさせない為にも、一気に叩く必要があるが、人形には弱点らしい弱点がない。

 ならば狙うは一つ。

「――はっ」

 アルバートは、人形へと一気に距離を詰めると、剣を振るった。

 右足を断ち斬られて転倒する人形の横を通り、アルバートは走る。

 彼が狙っているのは、人形を出した君子。

(高位の土人形(ゴーレム)は、創造主と感覚を共有するという)

 所詮は造られた物、命を造り出せるのは万物の創造神だけ。

 つまり生きている様に見える人形の五感や意識という物は、創造主である君子の物を間借りしているだけの偽物。

 君子と人型は生体リンクの様な物で繋がっている、それを切断すれば人形を無力化できるはず。

『ああああああうううううう――――』

 君子を狙っていると分かると、人形はそれを阻止しようとするのだが、まだ足が再生されておらず走れない。

 アルバートはその隙に、一気に君子の所へと向かう。

 勿論殺すつもりも怪我をさせるつもりもない、あの小賢しい人形を倒す為、幻術魔法で精神に介入して強制的にリンクを解除する。

 そして階段を駆け上がる――――のだが。

『あ゛あ゛あ゛あ゛――――っ!』

 人形は咆哮を上げる、それは悔しさからでも悲しいからでもない。

 槍を持った右手に力を込める為の、気合いの咆哮であった。

『あ゛あ゛っ!』

 ありったけの力を込めて、人形は槍を投げる。

 投げ槍は、投擲武器としては弓矢よりも古く存在していた。

 古代ローマの時代は、戦の要に使われるほどの武器だった。

 しかし、槍を投擲武器として使うのは、そもそもそぐわないのである。

 長すぎる槍は投擲には向かず、射程が短く、更には持ち運びが困難などなど、デメリットどの方が多い。

 投擲武器として槍は、弓矢の進化によって次第に廃れて行き、現代日本ではスポーツとして行われる程度である。

 このベルカリュースは、弓矢さえも魔法と言う強力な技術によって、遠距離武器として地位は低くなっている中、投げ槍など話にならない戦術である。

 ましてや人形の持つ槍は大きすぎる、そもそも投げる事を設計して造られていない。

 明らかに当たらない、所詮は悪足掻き、そう思ってアルバートは眼を逸らす。

『え゛い・お゛うう゛』

 しかし――その瞬間、槍が分裂した。



 槍は、いくつもの(やじり)となってアルバートへと迫った。



 数え切れないほどの鏃は、軌道を変え回転しながら降り注いでくる。

 まるで雨の様に降り注ぐソレは、絶望しかない。

(しまっ――)

 当たらないと思い、視線を逸らしてしまったアルバート、攻撃に気が付き、振り返った時には、全てを認識できないほど近づいていた。

 見えなければ避けられない――より正確には、攻撃を視認しなければいけないという事。

 見えていても認識できなければ、『絶対回避』では避けられないのだ。



 そして鏃はアルバートを撃ち抜いた。



「がっ――」

 腹部と左脹脛と右足首に、鏃は被弾した。

 とっさの判断で、重要器官がある上半身だけ『絶対回避』で避けた。

 だが鏃はアルバートを貫き、傷口から血が溢れ出て来る。

 足をやられ、立つ事もままならなくなったアルバートは倒れた。

(……この私が、こんなモノに……)

 完璧な王子と言われたアルバートが、こんな得体のしれないモノに追い詰められている。

 血を流す所か倒れるなど、この数十年無かった事だ。

『う゛う゛う゛ぅぅぅ』

 足の再生が終わった人形は、階段で倒れるアルバートの元へと近づく。

 思った以上に腹部からの出血が多く、起き上がる事が出来ない。

『ああああうううう』

 人形が右手を上げると、周囲に飛散していた鏃が集まって来て、元の槍へと戻った。

 そして槍を振り被り、アルバートの心臓を狙う。

(……槍は避けられても、棘は避けられない……)

 体内で槍が爆発し、棘を発射するだろう。

 心臓の一撃は避けられても、体内で炸裂する棘を避ける事は不可能。

(……剣は、さっきの衝撃で飛んだか)

 鏃に射抜かれてた時、手を離してしまい、剣は彼の手の届かない所に落ちている。

(……一か八か、魔法を放つしかない)

 剣が無くなった今、残された手段は魔法だけ。

 人形が気が付く前、槍が炸裂するその前に、この魔法を叩き込むしか残されていない。

(刺し違えても……やってやる……)

 ありったけの魔力をここにつぎ込んで、消し飛ばしてやる。

 アルバートは、気が付かれない様に全身の魔力を集中させた。

『あ゛あ゛ぁぁぁ!』

 両者のその一撃を、誰も止める事は出来なかった。

 それほどこの戦いは、誰にも入り込む隙など与えられなかったのだ。

 ある一人を除いては――――。




「やめろ」




 そう言ったのは、後ろから槍を掴んだギルベルトだ。

 人形を睨みながら、槍を振り下ろせない様にしっかり握る。

「ぎっ……ギルベルト様」

 人形の乱入によって完全に意識の外だったが、ギルベルトはアルバートに腹を刺され、戦闘不能になっていたはず。

 あんな怪我だというのに、ギルベルトはアルバートに振り下ろされようとしている槍を、しっかりと握り、離さない。

「なっ……」

 ギルベルトが、アルバートを助けようとしている。

 腹の傷からなおも出血しているというのに、ギルベルトは槍をしっかりと掴み続ける。

『あああうううぅぅ』

 人形は邪魔をされて怒っているのか、振り返り赤い双眼で睨みつけた。

 しかしそれでも、離さない。

「邪魔すンな」

 何を言っているというのだろうか。

 アルバートを憎んでいるのなら、このまま人形にやらせておけばいい、そうすれば彼に大怪我あるいは瀕死の状態に追い込む事が出来るはずだ。

 それなのに、なぜ――。



「こいつは俺が倒すンだ、邪魔すンな!」


 

 二週間前、君子がアルバートに連れて行かれた時、ギルベルトは死ぬほど悔しかった。

 絶対に彼女を取り返す、その為に、その為だけにここに来たのだ。

 自分が、アルバートを打ち負かして、君子を取り返す為にここにいる、他の者がそれを邪魔するのは絶対に許せない。

 それが例え、君子が出した人形だとしても――。

『うううううぅぅぅ』

「てめぇは、すっこんでろ! 俺はキーコに言ってンだ!」

 そう、ギルベルトは人形とは話していない。

 人形と生体リンクで繋がっている、君子に向かって言っているのだ。

 普通、そんな事は出来ない。

 例え繋がっているとしても、リンクで繋がっている者に補助をしてもらわなければ、会話などとても成り立たないだろう。

 しかし、それでもギルベルトは、君子へと話しかける。

「キーコは、俺が勝つまで待ってればいいンだ!」

 フェルクスと戦う前、絶対に勝つと言った。

 そう、君子は待っていればいいのだ、ギルベルトがアルバートに勝つまで――。

『う゛う゛う゛ぅぅぅぅ……』

 人形は赤い双眼でギルベルトを睨みつける。

 眼しかないというのに、その表情はどことなく怒っている様に見えた。

 しかしそんな人形とは裏腹に、身体の黒い靄がどんどん吹き出て来て霧散して消えていく、身体の維持がままならないくらいに――。

 造形の特殊技能(スキル)で造った物は、製作者が念じれば消す事が出来る、故にこの人形を消しているのは、製作者である君子。

 人形越しに、ギルベルトの言葉が届いたのだ。

『ううぅぅぅぅ』

 消え際に人形はギルベルトを睨む。

 体も槍も消えていく中、その赤い双眼は消え切るその瞬間まで、ギルベルトの事を睨み続けていた。





「いっ、一体……何だったの」

 アンネが呟いたが、誰も状況を理解できる者などいない。

 だが、人形が消えたという事だけは分かった。

「……馬鹿な奴だ、止めなければ、私は死んだかもしれないぞ」

「けっ、ふざけんじゃねぇ、俺がてめぇをぶっ倒すンだ、他の奴に横取りされてたまるか」

 既にギルベルトもアルバートも満身創痍の状態である。

 これ以上血を流せば本当に死ぬ、今すぐ治療しなければいけないというのに――。

「いつまで寝てやがンだ、とっとと起きろクソ野郎」

 ギルベルトは階段から降りると、グラムを構えた。

 腹部と肩からは依然として流血が続いているというのに、当たり前の様に仕切り直そうとしている。

「…………」

 アルバートは胸のポケットにある薬へと、手を伸ばそうとする。

 上位回復薬(ハイ・ポーション)ならば、全て飲めば、この傷をほとんど癒す事が出来るだろう。

先ほどはとてもそんな暇は無かったが、今なら出来る、自分の怪我だけ治す事は可能だ。

しかし――。

「ふっ……先ほど様な絶好のチャンスはもうないぞ」

 アルバートはポケットに入れた手を出すと、剣を拾い上げる。

 なぜか回復薬(ポーション)を使うのは、道理に合わない様な気がした。

 傷つき、ふらつきながらもグラムを構えるギルベルトに、むしろ負けたような気がする。

「関係ねぇ、てめぇに勝って、キーコを取り返す!」

「………ふっ、せいぜい無駄に足掻けばいい、ひねり潰してやる」

 両者既に限界、この一勝負で、全てを決める。

 アルバートも剣を構え、最早誰にも止められない状態になってしまった。

 二人の闘いを止める事は誰にもできない、この勝敗が決するまで、二人は戦い続ける。

 そして――最後の闘いが始まった。

「――はっ!」

 真っ先に動いたのはアルバート、右から左へと真一文字に剣を振るう。

「るあっ!」

 ギルベルトは、グラムを振るい剣を防ぐ。

 噛み合う金属が、音を立て火花を散らし合う。

「――だっ!」

 ギルベルトは一歩踏み出しながら、グラムに力を込める。

 そして柄でアルバートを剣ごと弾き飛ばす。



「おぉっ!」

 それには見ていたヴィルムも、歓声を上げた。

 アルバートの特殊技能(スキル)、『絶対回避』は、剣には適応されていない。

 鍔迫り合いに持ち込んで、弾き飛ばし体勢を崩させれば、隙が生まれるはずだ。

「……ギルベルト様、冷静さが戻っている」

 頭に上っていた血が出血で下がって来たのだろうか、怒りに任せて剣を振るっていた先ほどまでとは打って変わって、ちゃんと考えている。

 だが、問題は双方の怪我だ。

 本来戦える傷ではないのだが、それでも二人は止めようとはしない。

 立っている事さえも辛いはず、勝負は、この瞬間に決まる――。




「だああああああっ」

 ギルベルトは更に踏み込み、接近する。

「――っ!」

 あわや衝突、まるでタックルするくらいの距離になる。

 だが、それは――。

(……剣が、見えない!)

 アルバートの視界を、ギルベルト自身の体で遮る。

 後方に大きく振りかぶったグラムを、自身の体で隠し、その一撃を見させない。

 見えなければ、特殊技能『絶対回避』は使えない。

「あああああああああああああああっ!」

 渾身の、全力の一撃が、炸裂する――――。

「雷霆は走り、我が敵を討ち抜く」

 その詠唱は、あまりにも一瞬の事で、聞き取れないくらい速かった。

 アルバートの左手に紫色の魔法陣が展開される。

「紫魔法『雷霆撃破(ライトニング)』」

 そして、ギルベルトの一撃よりも速く――雷は放たれる。



 電流が、ギルベルトを撃ち抜いた。



「があああああああああ――――っ!」

 吹っ飛ばされるギルベルト。

 ただでさえ怪我を負っているというのに強力な四型魔法を喰らい、ギルベルトはグラムを握る事もままならず、柄を離してしまった。

 そして床に打ち付けられ、仰向けで倒れた。

「ぐあっ……」

「ギルベルト様!」

 まさかあの速さで魔法を放つなど、オールAランカー、アルバートはやはり強い。

(……だが、もう撃てぬな)

 この傷に四型魔法の連発、身体には相当の負荷がかかっていて、これ以上は使えない。

 しかし、もう十分ギルベルトに傷を与えた。

 アルバートは吹っ飛んで動かない彼の元へと近づく。

「ふっ、言っただろう、お前は私に一太刀も浴びせる事は出来ないと」

 冷静さを取り戻し、途中の奇襲は良かったが、それでも足りない。

 肩と腹、そして手の怪我はギルベルトの力とスピードを奪い、本来の実力が出せなかった、もしも今完全な状態だったら――アルバートに怪我を負わせるくらい出来たはずだ。

「ぐっ……うっ、うっせぇ」

 ギルベルトにはもう力が残っていない。

 グラムははるか向こうに飛んで行ってしまったし、殴ろうにも、もう拳を握る力さえも残っていない。

 もうギルベルトには力が、残されていないのだ。

「負けを認めろ、お前は私には敵わない」

 アルバートはギルベルトの首筋に剣を向ける。

 最早勝負は決したも同じなのだが、ギルベルトはまだ諦めない。

「うっせぇ……俺はおめぇに勝つンだぁ……」

 ギルベルトは絶対に認めはしない。

 例えこのまま斬り殺されたとしても、そんな事はしないだろう。

 それは、彼の信念を曲げる事になるのだから。

「ならば……今ここで、その意志ごと切り捨ててくれる――」

 アルバートは剣を振り上げる。

 これが本当にとどめの一撃、加減などしない、全力で斬る。

(これで、終いだ!)

 そして、剣は振り下ろされる。




 しかし――、その瞬間。

 アルバートが剣を振り下ろそうとしたその時、ギルベルトは手を伸ばした。

 そして、そこに魔力を込める――。



「『浮遊(フライ)』!」



 灰色の魔法陣が展開されて、魔法が発動する。

 最弱の一型魔法、物を浮かせる事しか出来ない初歩の初歩の魔法。

 それを、ギルベルトが、このタイミングで発動させた。

(『浮遊(フライ)』……だと!)

 そう、アルバートの様に強力な四型でもなければ、攻撃魔法でさえない、『浮遊(フライ)』の魔法。

 それで一体何が出来るというのだろうか。

 ただ物を浮かせるだけ、それになんの意味があるというのだろうか。

(いや……可笑しい)

 そう、ギルベルトは一体何を浮かせたというのだ。

 アルバートは浮いていないし、もちろん剣も浮いていない。

 ならば一体――ギルベルトは今、何をしているというのだ。

「――――っ!」

 アルバートはとっさに振り返った。

 そこには何の意味もない、ただなぜか後ろが気になったのだ。

 だから意識などしていなかった――、『見よう』とはしていなかった。



 瞬間、グラムが真横を飛んで行った。



(なっ――)

 ギルベルトが手を離し、遠くに放っておかれた剣。

 ちょうどアルバートの死角にあった剣。

 それを浮かばせ、飛ばした。

 グラムを振るう為の力が無くとも、拳を握る力が無くとも――ギルベルトにはBランクと言う魔力が残っている。

(ギルベルトが……魔法を)

 今まで面倒という理由で使う所か、覚えようともしなかったし、そもそも知らなかった。

 しかしこの魔法だけは違う。

 この『浮遊(フライ)』は、君子が一生懸命練習して、披露した魔法だ。

 だから知ってる、だから覚えている。

 ギルベルトが唯一使える、最弱の一型魔法。

(……愚かだったのは、私の方かもしれないな)

 自分の方が上、全てにおいて勝っていると、慢心していた。

 その油断が、致命傷となったのだ。

「…………」

 アルバートは、左腕を見る。

 二の腕の服がバッサリと切れていて、肌が露わになっていた。

 



 そして――うっすらと、血が滲んだ。




 それは、傷。

 ギルベルトが放ったグラムの一撃が、かすって出来た傷。

 人形の放ったものに比べればただのかすり傷だが、間違えなく、ギルベルトが負わせた傷だった。

(不覚……だな)

 ベルカリュースの中でも屈指の特殊技能(スキル)を持つアルバートが、最弱の一型魔法でギルベルトに傷を付けられた。

 アルバートは、ギルベルトを見下ろす。

 もう立つ事も出来ず、意識を保つ事さえ限界だというのに、ギルベルトはそれでも力強い眼で、こちらを睨んでいた。

 約束してしまったからには、認めるしかない。

 たとえそれがかすり傷であっても――。

アルバートは痛む左腕を抑えながら、口を開いた。


「私の、負けだ……」




************************************************************






「おい、おい」

 誰かが呼んでいる。

 肩を揺さぶっているのか、身体が揺れている。

 声と振動で徐々に意識が目覚めて行き、今見ている暗闇が瞼の裏だと理解した時――。



「起きろ、キーコ!」



 眼覚めの一喝。

 目覚まし時計よりも強烈なその声で、君子は覚醒した。

「…………あ、れ?」

 瞼を開けると、目の前にギルベルトがいた。

 その後ろにはヴィルムとアンネが立っていて、三人ともこちらを見つめている。

「眼、覚めたか?」

 ぶっきらぼうだけど、どこか心配そうにギルベルトがそう言った。

 君子がしばらく彼を見つめていると、頭の回路がようやく結合して、状況を理解した。

「ぎっ……ギルぅ」

「おう」

 目の前にいるのはギルベルトだ、本当に、間違えなくギルベルトだ。

 久しぶりの彼の姿に、君子は―――。

「遅いよ、ギル!」



 勢いよくタックルした。



「うごっ!」

「何が『眼、覚めたか?』だよぉぉぉ! 遅いよぉぉぉ!」

 回路が結合した君子は、二週間も待たされた事に対しての怒りをぶつける。

 自分が一体どんな気持ちで待っていたと思っているのだ、今更その感情が爆発した。

 更にEランクの拳で、ぽかぽかと腹部を殴る。

「二週間だよ、一四日だよ、ほとんど半月だよ、遅すぎだよ! 遅すぎるよぉぉぉぉぉぉ!」

「うおっ、どあっ!」

「…………せっかく治した傷口が開くのでやめなさいキーコ」

 痛がるギルベルトを見て、ヴィルムがそう注意する。

 外側はほとんど治ったが、まだ中はぐちゃぐちゃで、絶対安静が必要な状態なのだが――君子はそんな忠告などまるで無視して、感情をぶちまける。

「馬鹿、ばぁかぁ! なんでもっと早く迎えに来てくれなかったの! ずっとず~っと、待ってたのに、待ってたのにぃ!」

 そう、君子はずっと待ってたのだ。

 この地獄のシューデンベル城から連れ出してくれるのを――。

「メイドさんに体洗われるし、着替えはさせられるし、部屋は豪華だし、ご飯はもっと豪華だし、コルセット辛いし、甘ロリの服着せられるし、もうほんっと~~~に、モブで脇役の君子さん的には、死んじゃいそうだったんだからね!」

 現代日本人の君子には、シューデンベル城のあまりにもセレブな生活は体に合わなかった、マグニでも十分だというのに、それ以上に豪華な生活は、もうモブの脇役がしていい事ではない。

 この数日のストレスを大爆発させている、理由が理由でなんだか拍子抜けしてしまいそうだ。

「……悪かった、キーコ」

 ギルベルトは、君子の頭を撫でる。

 久しぶりに君子に触れる、なんと言われようと、こうやって言葉を交わし触れ合える事がどんなに嬉しい事か、今はただ、彼女の温もりを感じる。

「あっしょっ勝負はどうなったの! フェルクスさんに勝ってその後どうなったの!」

 必死に尋ねる君子を見て、ヴィルムとアンネは顔を見合わせる。

「……何も覚えていないのですか?」

「へっ? なっなにがですか?」

 どうやら特殊技能が進化した事も、あの黒い靄の人形を出した事も、何もかも覚えていない様だ。

 この様子では、結局アレが何だったのか尋ねる事は不可能だろう。

「…………キーコ」

 そんな事を話していると、傷を治療したアルバートがやって来た。

 しかしアルバートの顔を見た瞬間、君子の脳裏にあの惨状が蘇る。

「ひっ――」

 無理矢理奪われたファーストキス、それを思い出して怯え、震え出す。

「なンの用だこのクソ野郎、キーコは俺ンだ、とっとと失せろ!」

「……別れを、言いに来ただけだ」

 お別れという事は、自分はマグニに帰れるのだ。

 その事をようやく理解した君子は心から喜ぶ。

 もうメイドに体を洗われる事も、着替えをさせられる事もない、元の生活に戻れる。

「……あっ、じゃっじゃあ、アルバートさんおっお元気で」

 正式なお別れの挨拶など知らないので、軽く手を振ってそう言ったのだが、アルバートは黙って君子を見つめるだけで、何も言わない。

 間違った事でもしたのだろうかと思っていると――アルバートが君子へと手を伸ばす。

「――ひっ!」

 まさかまた、キスされるのではないだろうか、三度あの惨状がフラッシュバックする。

君子はとっさに口を手で覆い隠した。

 もうキスなどさせない、そう強く思ったのだが――。

 アルバートの手は、君子の右耳へと伸ばされた。

 耳に触れ、一体何をするのだろうか。

「――いたっ!」

 耳に痛みが走った。

 引っ張られたというよりは、何かに刺された様な痛みで、大した事では無い。

 だが一体アルバートは何をしたのだろうか、戸惑っていると彼はゆっくり手を離した。




 すると、君子の右耳に銀色のピアスが付けられていた。




 金色のピアスの隣、どこかで見覚えのある銀色のピアスが付けられている。

 アルバートの右耳に二つあったはずの銀色のピアスが一つ欠けている。

 彼は自分のピアスを君子に付けたのだ。

「なっ、なにしやがんだだてめぇぇぇぇぇえぇぇ!」

 声を荒げるギルベルト。

 すぐさま、君子の耳につけられたピアスを取ろうとするのだが、外れない。

「王族のピアスは、付けた本人しか外せない……忘れたのか」

「ふっふざっ、ふっふざけっ」

 そんな事分かっている。

 問題なのは、このピアスがどういう意味で付けられるかという事――。

「私も王子だ、一度言ったからにはキーコを返すが……ピアスを付けるのは私の自由だ」

「おっ俺の、俺のがもうあンだぞぉ! ふざけンな取れぇぇ!」

「ふっ、一つ目のピアスなど意味はない、二つ目のピアスを付けてから言うのだな」

 一つ目のピアスは、あくまでも思いを伝えた時に渡す物。

 交際しているという証でもなければ、他の王子がピアスを付けてはいけないというルールもない。

「アルバート様……じょっ冗談ですよねぇ……何か作戦があるんですよねぇ」

 後ろでその光景を見ていたルールアも、顔を青ざめている。

 何か作戦、ギルベルトを蹴落とす良い作戦があるからやっている、そうだ、そう自身に言い聞かせるのだが――。

 君子を見つめるアルバートの顔は、ルールアが見た事ないほど穏やかで、どことなく名残惜しそうにも見える。

 それはまるで、恋人を見送る時の様な、そんな表情。

「えっうっうそ……、完璧なアルバート様が、あんなあんな子を……」

 あまりにありえない事で、立ちくらみを起こすルールア。

 一体何人の令嬢が、あのピアスを欲しがっている事か――。

「うぅぅ、帰るぞキーコぉ!」

「えっわっ、ちょっとギルぅ」

 ギルベルトは君子の手を引っ張ると、城の外へと歩いていく。

 すると玄関の前に、翼のないワイバーンが引く、豪華な馬車が止まっていた。

「ファニア殿、馬車と御者まで貸して頂いて申し訳ありません」

 幾ら治療したとはいえ、ギルベルトはまだワイバーンに乗って帰る事が出来ない、だからシューデンベルの馬車を拝借した。

 乱暴に馬車に乗り込むと、ギルベルトは自分の隣に君子を座らせ、ヴィルムとアンネの乗り込んだ。

 早くマグニに帰りたいのだが――アルバートが窓を叩く。

「キーコ、コレを」

「ふぁっ! すっスラりん!」

 何か忘れていると思ったら、スラりんの事を置いてけぼりにする所だった。

 君子は窓から身を乗り出して、大切なスラりんを受け取る。

 すると、アルバートは彼女の耳元で囁く。

「返事、待っているぞ」

 それはプロポーズの事、あの時の恥ずかしさが蘇って来て、君子は顔を赤く染めた。

 アルバートはそんな彼女を見ると、口元に小さく笑みを浮かべる。

「早く出せぇ!」

 イライラしたギルベルトの一声で、馬車は走り出す。

 アルバートはどんどん小さくなっていって、見えなくなる。

 今更あんなに長く感じた二週間が、あっという間に過ぎて行ったような気がした。

「…………」

 窓から乗り出した体を戻すが、顔は赤いままで、ちっとも元には戻らなかった。

 まだ、あの声が耳に残っている。

「……キーコ、なに顔赤くしてンだ」

「ふぇっ、ちっちが、これは外が寒かったからだヨ!」

 明らかに動揺してる、そんな下手な嘘で誤魔化せるほど、ギルベルトは単純ではない。

 疑惑の眼でこちらを見て来る、その視線に困っていると、アンネが話題を振る。

「そっそう言えば、ファニアさんからキーコの荷物受け取ったわよ、確認して」

「ふぁっ、ありがとうございます!」

 君子が袋を受け取ろうとした時――馬車が大きく揺れて、袋から荷物が散乱する。

 綺麗に洗濯されて、しわ一つなくアイロンがけされた制服に、新品以上に綺麗になるまで磨かれた靴、スラりんバッグなどがまき散らされ――そして最後にスケッチブックが落ちた。

 落ちた拍子にページがペラペラとめくられ、一番最近描いた絵が露わになる。

 そう、今日描いたばかりのアルバートのページが、ばっちりと開いた。

「いやあああ私の駄目絵が!」

 自分の絵を人様に見せるなんて耐えられない、君子は急いでスケッチブックを拾い上げるのだが――その絵はギルベルトにばっちり見られていた。

「……おい、キーコぉ」

「ひっ!」

 ギルベルトはまるで鬼か般若の様な顔をしている。

 歯をカチカチと鳴らして、それはもう滅茶苦茶怒っている。

「なンであいつの絵なンか描いてンだよぉぉ……、あのクソ野郎と何があったンだぁ~」

「ぷぇっなっ何も、何もないよぉ! これはあっアルバートさんが描けって言うから……」

 幾ら君子が事実を話しても、嫉妬の炎で身を焦がすギルベルトには聞こえない。

 アルバートの為に君子が何かをしたという時点で、もうムカつくのである。

 そして嫉妬に狂う彼を止める事は、ヴィルムにもアンネにも出来なかった――。

「キィィィィィィコォォォォォォォ!」

「ヤダぁぁっ、抱っこしないでぇぇ~変なとこ触らないでぇ~~」

 一気に騒がしくなった、だがこれがいつも通りなのだ。

 騒がしくも楽しい、いつも通りの日常なのだ。

「……やれやれ、騒がしいですね」

「えへへっ、でもコレが良いですよ!」

 ヴィルムとアンネは、呑気にそんな事を言いながら、二人を見詰める。

 いつの間にか当たり前になった、この光景をただただ見ていた。




「ひょぼおおおおおおおおおおお~~~~」



 シューデンベルの寒空に君子の奇声が、響きわたるのだった。





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