わたしのばしょ
魔法建築はやはり難しかった。
そもそも、魔法の知識は身についたが、建築の知識はない。
魔法を使っていろいろと計算をしながら、ああでもないこうでもないとするうちに、おそらく歳をまた重ねただろう。そうしてようやく、予定地を決め、設計図を完成させた。
続く資材集めはそこまで大変では無かった。魔法を使い、森の木を大量に切り、家の予定地に転移させる。今回、魔法建材の使用は諦めているため、使うのは全て木だ。
資材に魔法を刻む段階に入ると、今度はかなり大変だった。なにせ、術式に適合する魔法的な意味を付与する手順がある。魔法を使わず自分の手で、血を塗り込めながら、儀式をしつつ、術式を刻まなければならないのだ。資材の量が多いこともあって、異常に時間がかかった。
実際の建築に入ると、すでに魔法で各計算を済ませていたため、あとは魔法で組み上げるだけだった。そこは簡単だった。
結局、殆ど設計までと術式構築に時間を使った。他の作業は合わせても五日に満たない日数しか使っていないだろう。だが、全体では歳を三度重ねる程度には時間を使っていると思う。
そうして、家が完成した。
かつて、ここにあった村には、こんな巨大な家は無かっただろう。
三階建ての、異常に広い家だ。
私の呪いに有効な術式を組もうとしたら、こんな大きさに成ってしまった。
そして、こんなにも大きいのに、内装らしい内装、家具らしい家具は皆無。非常に寒々しい家だ。
私はそんな寒々しい家に入って、けれど家の様子とは真逆の、夢の様な気持ちになった。
なにせ、ようやく呪いが制御出来たのだ。
もちろん、家の外に出ると、すぐに制御できなくなる。外で、制御魔法を使っても、長くは続かない。
だが、この家の中ならば、ほぼ完全に制御出来る。魔素も、風にのって流れてくる、世界の魔素を使用するため、自分の魔素を使う必要も無い。温度管理も自在、強度も非常に高い。
これ以上の場所は無かった。
家を建てて数日は、興奮で夜も眠れなかった。
そして、興奮が収まったところで、例の本をまた読み始めなければと思い出した。
この家を作っている間、読んでいなかったのだ。
一番大事なことを思い出し、これからはそれを第一にしなければ心に決めた。そして、それをやりながら、食料を捕るついでに、少しずつ家具なども作っていこうと思った。
思った矢先……今日から本を読もうと決めたその日、私は家の扉を叩く音を聞いた。
次回は火曜の予定です
追記:すみません。用事から帰宅したらこの時間です。木曜こそは更新するつもりです。