伸びる枝の一端
私が村の人々を埋葬したのは、あれから何度も同じことを繰り返した後だった。
死のうとして、死ねなくて、頭がおかしくなって、正気にもどると死体が減っている。
私は死ぬのを一度諦めて、相変わらず腐らない死体達を埋葬した。
きっと、火葬のほうが良かったのだろうけれど、どうすればうまく燃やせるのかわからなかった。
その後は、村の人達を××しなくて済むように、森の動物を食べるようになった。
なぜか、森に入るといつもどこかに動物が死んでいて、そして腐っていなかった。
血抜きをして、解体して、焼いて、食べる。
そんな日々を繰り返しながら、首を吊ったり、崖から落ちたり、自分を縛って焼いてみたり、ナイフで首を切ってみたり、いろんな方法で自殺を試みた。
そんなことを繰り返し、何度も夜が来て、何度も朝が登った。
そして、一つの事に気づいた。
森にある植物の芽が、どれだけ日にちが経とうと成長しないし、枯れもしない。
それで、ここの木々も死んでいることに気づいた。
考えてみれば人や動物の死体も、腐らないだけでなく乾きもしなかった。
私の呪いはそういうものなんだろう。
そんなことを考えて、なんでかまた泣いてしまった。
また、死のうと思った。
かつて私を処刑するために用意された槍、その穂先で胸を刺した。
痛くわあるけれど、やっぱり死ねはしない。
泣きながら食事をして、眠った。
それから、また日々の繰り返し。そして、たぶん何年かの日々が過ぎた。
ある日、大勢の魔法使いが来た……らしい。空に大きな魔法陣が浮かんで、大地にも大きな魔法陣が表れた。そのままの状態が、たぶん七日ぐらい続いて、突然森と村が消し飛んだ。私の体も信じられない痛みが走った。
たぶん、すごく大きな攻撃魔法を使ったんだと思う。
森も村も巻き込んだ、巨大な魔法。残ったものは私と、大きかった家の基礎だけ。……これでも死ねないことに、私は呆然とした。
ふと気づいて、皆を埋葬したところに行ってみた。
私の掘った穴の大きさがまちまちだったのもあって、消滅しているものも、そのまま残っているものも、部分的に消し飛んでいるものもあった。
焦った。
これではまた、××てしまうかもしれない。
魔法で吹き飛ばされた範囲の端までは遠い。食料を取りに行くのは大変だ。
それに、あの魔法の範囲が、おそらく私の呪いの範囲だったのだろう。随分広い。私が端まで行けば、またそれで死ぬものが、きっとある。
途方にくれて、仕方ないのでその日は眠った。
そして次の日、あの二人に出会ったのだ。
紫の髪に、緑の瞳をもつ美少年。
漆黒の長髪を持つ、瞳を閉じた美女。
あの二人組は私に近づいても死ななかった。
その二人は、私に気づくなり、まずは服と食料と刃物をくれた。その間も、少年は愉しげな表情、美女は憐れみの表情を浮かべていた。
気づいていなかったけれど、例の魔法で私の服も、食料の解体などに使っていた刃物も消滅していた。正直、服が消し飛んでも気づかないのは自分でもおかしいと思う。
もらった食料にはすぐ齧りついた。信じられない程の美味しかった。食べながら、少年に訊かれるままに私の事を話した。話すほどに、少年は愉しげな表情を深めた。
私の話を聞いた後、少年は皮肉げな笑みを浮かべ、私がやっぱり死ねないということを教えてくれた。……あの二人なら殺せるけれど、殺してはくれないらしい。
最後に二人は、初代勇者様が残したものだという本をくれた。
その日から、私はそれを読んでいる。
なんでかわからないけれど、本を受け取るまでは文字なんて知らなかったのに、今は文字が読める。
本を受け取ったときになにかが流れ込んできた。あれのおかげかもしれない。
これを理解しきれば、もしかしたら――
そんな希望を抱いて、私は今日も本を読む。
もう一個書いている方と交互に投稿。ただし、平日のみ。たぶん土日は書かない。
次はおそらく火曜。