表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

演劇部

 今年の文化祭で、演劇部はロミオとジュリエットをやることになった。脚本は原作をかなり短くしてあるのは、時間的な問題があるからだ。与えられた時間は1時間。なので、シーンは大雑把に仮面舞踏会から始まる。敵対する両家についてはその舞踏会でナレーションとして説明をいれるという形式にした。

「有栖川って文才あるね」

脚本をみながらロミオ役の志水咲夜しみずさくや先輩がそう言った。あたしはどきどきしながら、ありがとうございますと答える。志水先輩は演劇部の看板役者だ。特に男装が素敵だと他の生徒からも慕われている。女ばかりの高校だから、見た目のカッコイイ先輩たちはアイドルのような存在だった。

 あたしにとってもそうだったらよかったんだけど。あたしは志水先輩に恋をしている。文芸部に入るのをやめて演劇部の脚本担当に応募したのだ。演者として演劇部に入部するのは、他の部と同じように入部届けをだせばいいのだが、脚本担当を希望の場合は有名な戯曲を現代風にアレンジしたものを提出しなければならない。

 あたしが入部希望を出したときの課題は「夕鶴」だった。要するに現代版鶴の恩返しを書いて来いというもので、期限は一週間だったと思う。何がどうよかったのかわからないけれど、あたしの脚本は選考を通り、入部を許された。

「有栖川……私、褒めてるんだけど。うつむいたままありがとうはないんじゃない?」

「……すみません。恥ずかしくて……」

うれしくてと言えない自分がなさけない。折角先輩が褒めてくれたのに。そう思ってると、ふいに先輩の長い綺麗な指が視界を横切って、がちっと顎を捕まえられた。

 無理やり顔を上にあげられ、志水先輩をまともに見てしまった。あたしは一気に熱が頭を汚染する感覚に犯される。志水先輩は、なぜかうれしそうに微笑んだまま、顔を近づけてきて……触れた。

 先輩の唇とあたしの唇がほんの微かに触れた!

「ねぇ、キスしていい」

「え……」

「キス。私、有栖川が好きだからキスしたいの。有栖川も私のこと好きでしょ。だからね」

 極上の笑みでなんてとんでもないことを言ってるんですか先輩!

と内心突っ込みながら、驚きのあまり口を鯉のようにぱくぱくさせてしまうあたし。

「そんなにじたばたしないでほしいなぁ。これでもめいっぱい真面目にくどいてるのに」

「く、口説くって……な……」

 なんでといおうとした瞬間、半開きになってしまった口を志水先輩はなんなく塞いでしまった。まるで大好きな食べ物をたべるように、優しく激しく口づけられる。唇がほんの少し離れた瞬間、あたしは思わず咳き込んだ。

「有栖川、キスするときは鼻でいきするのよ。覚えておきなさいね」

 志水先輩はそう耳元でささやき、あたしの頬に軽くキスした。

「さて、そろそろ警備員さんが来る時間だね。帰ろうか」

 あたしは差し出された手に、おずおずと手をあずけた。


一言感想いれていただければ、はげみになります。よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ