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あやかし商店街 五

と、いうわけで、店から出ることも出来ない真司は店の案内をお雪と菖蒲にしてもらうことになったのだった。

「ここがかわやだよぉ~」

「と、行っても現代を取り入ってウォシュレット付の洋式だかの。因みに、便座の温度調整も可能だぞ」

少し自慢気に言う菖蒲。

それを見て真司は苦笑したのだった。

次に案内された所はお風呂場だった。

「え・・・ここ、お風呂ですか?」

「他に何がある?」

「ねぇ~」

と、ポカンとしている真司に菖蒲とお雪は首を傾げた。

(お風呂って・・・こう・・・一人が入る浴槽があって・・・・・・これじゃぁ)

「露天風呂、ですよね?」

「そう?」

「うむ。やはり風呂だな。」

真司の目に映る光景・・・それは、石のタイルに良い香りがする(恐らくひのきだろう)大きな浴槽が中央にドンッと設置してあった。

四人は普通に入れるスペースだった。

そして何より、天を仰ぐと今はまだ明るいが綺麗な青空が見えていた。

誰がどう見ても露天風呂そのものだったのだ。

「あの・・・これ、周りは塀に囲まれてますけど、その・・・。の、覗きとか無いんですか?」

言うのが少し恥ずかしかったのか、真司の頬は少し赤くなっていた。

「わ~照れてる~!可愛い♪」

「うっ、煩いなっ!」

「これこれ、喧嘩はよさんか。」

「・・・菖蒲さん・・・・・・手を離して下さいよ・・・」

と、真司は恥ずかしがって言った。

真司の頭の上には菖蒲の手があり、クスクスと笑いながら撫でていたのだ。

(なんか、この人の性格わかってきた気がするよ・・・はぁ)

「さて、真司の質問の答えだがの、そこは安心おしや」

「はぁ」

「ここはね、基本的に菖蒲さんの結界が張ってあるの」

「結界?」

「うむ。世の中には変な輩もいるからのぉ。」

「変な輩、ですか」

「うむ」

そこはあまり深く聞いちゃ駄目なのかと思った真司は、これといって菖蒲に追求しなかった。

「ほれ、次に行くぞ」

「あ、はい!」

「はーい」


そうやって真司は店の中を色々案内された。

台所や余っている部屋など。

店の外見からにしたら、さほど広くない平屋の筈なのに、実際入ってみるとまるで旅館みたいな所だった。

そして、最後に案内されたのは、真司が初めて入った年季の入った骨董が沢山ある売り場だった。


「やっぱり凄いですね」

「何が?」

お雪は言った。

「ここに入ると、なんか・・・雰囲気が変わるというか・・・。それに、色々置いてあるし。」

「ほぉ。」「我等の事がわかるとは流石だ」

「ん??」

真司は菖蒲の方を見た。

「あの、何か言いましたか?」

菖蒲は微笑みながら

「いや、何も言っておらぬ」と言った。

真司は首を傾げた。

「でも、声が聞こえたような・・・」

「「クスクス」」

「なんと、からかいのある人間だ」「人間に会うのは久しぶりですわ」

「え?え?」

今度は、どこからか話し声が聞こえて来た。しかも、ハッキリとだ。

お雪は、腰に手を当て。

「もう、皆、真司くんをイジめちゃ駄目だよ!!」

お雪の言葉に、真司は更に頭が「???」状態だった。

それを見かねた菖蒲は、真司の肩に手をポンッと置いた。

「真司や。お前さんが聞こえた声の主はの、全てここの骨董達ぞ」

「えぇ?!」

「言っただろう?物には生命いのちが宿ると」

「そ、そうですが・・・」

すると、周りの骨董達はクスクスと笑いあった。

「因みに、お雪もその一人であるぞ」

「えぇ?!?!」

真司はお雪の方を見た。ガン見した。

(どこからどう見ても、人間の女の子に見える・・・のに?!)

視線を感じたお雪は、真司を見るとニコリと笑った。

隣にいる菖蒲は、カウンターの傍に飾られている陶器を指さした。

「真司。あれを見んしゃい」

「へ?」

「あれがお雪の本体ぞ」

「・・・・・・・・・」

菖蒲が指さした陶器には、以前目にした物だった。

湯呑の陶器なのだろうか?少しだけ端が掛けていたが、相変わらず綺麗な陶器だった。

そして、その陶器には雪兎が描かれていた。

真司はお雪を再び見た。

(着物も雪兎、髪飾りも雪兎・・・)

そして、真司は自分の前髪を留めてある髪留めにそっと触れた。

「雪兎・・・・・・」

「納得したかい?」

「は、はい…少しだけ…。でも、どうして人の姿に?」

「お雪は強い想いから作られ、そして、強い想いで大事に大事にされんだよ。年月が経つと生命が宿る。しかし、強い想いから作られた物・大事にされた物はね、時には実体化も出来るんだよ。まぁ、普通の人間からは基本は見えないがね」

「付喪神ですか」

「そうだね。ここにいる物も所謂いわゆるは付喪神に入るが、お雪は別だよ。あぁ、がしゃ髑髏と同じだねぇ」

「え?」

「がしゃ髑髏は、怨念の塊。しかし、お雪はその逆。想いの塊なんだよ」

そう言って、菖蒲は優しい瞳で、他の骨董と話しているお雪を見た。

「ふふっ、でも、まだ、ここには人間に化ける事が出来る物もいるから楽しみにしているといい」

「他にもいるんですか?!」

菖蒲はニコリと笑った。

「うむ。何せ、ここは私の店だからね」

そう言うと、袖口を口元に当て、クスクスと笑ったのだった。

(なんだか・・・これから大変そうだなぁ・・・)


「あ、あははは・・・」


END

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