あやかし商店街 二
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商店街は、やはり二度目も賑わっていた。
八百屋には口の髭がすごく上半身裸の変なおじさんが腰にエプロンを巻いて大きな声で「今日は胡瓜が安いよ~!!さぁさぁ、買った買ったぁ!」と言っていたり、達磨みたいなものが魚売りをしていたり・・・
とても人間とは思えないものが、賑やかに店を開いていた。
もちろん、訪れる客も人間には見えない。
と、その時、ふと、例の変な八百屋のおじさんから声をかけられた。
「よっ!そこの兄ちゃんどうだい?新鮮な野菜はいらんか?」
「えっ?!」
(ぼ、僕?!)
突然声をかけられた真司は驚いた。
すると、横から真司を守るかのように菖蒲が手を出した。
「これ、山童。野菜は今はいらんぞ」
「えっ!あ!!あ、菖蒲様!じゃなくて、菖蒲姐さんじゃねーすか。へ、へへ、こりゃ失敬失敬」
山童と言われた八百屋の店主は頭を垂れるようにペコペコと謝った。
「イケてる兄ちゃんがいたんで、つい、、ははは」
「はぁ。」
真司は曖昧な返事をした。
そう、真司は前髪を上げれば、そこそこの容姿をしていた。
「うむ。確かに真司は可愛いの。そこは認めようぞ」
と、よしよしと真司の頭を撫でながら山童に言う菖蒲。
(か、可愛い?)
真司は内心驚いていた。
(た、確かに昔は姉さん達に女の子の服とか無理矢理着せられたけど・・・)
何故か、少し複雑な気持ちになる真司だった。
そんな真司の事を山童はチラリと見ると、腕を組み目を細めて真司をジロジロと見た。
真司は一歩身を引いて驚いた。
「な、なんですか?」
「うーん・・・お前・・・もしかして、人間か?」
その言葉に真司はぎょっとした。
(ば、バレた!!)
真司は菖蒲にどうすればいいのかわからず、菖蒲が着る薔薇の柄が入った少し東洋風な着物の袖をクイクイッと引っ張った。
「大丈夫だよ、真司。」
菖蒲は微笑みながら真司に言った。そして、山童に向き直ると
「そうさ。この子は人間だよ。そして、これからは私の店の一員になる。こやつに何か悪さをしたら、私が許さないから覚悟しておくことだねぇ」
と、口元に袖を当てクスクス笑いながら言った。
山童や会話を聞いていた他の妖達は、ゴクリと息を飲んだ。
それぐらい、先程の菖蒲は妖艷で恐ろしい雰囲気が出ていたのだ。
山童は冷や汗をかきながら苦笑した。
「い、いやですよ~姐さん~ははは。」
菖蒲は、ニコリと微笑んだ。
「なら、いいんだよ。ほら、行くよ真司。」
「あ、はいっ」
菖蒲と真司は八百屋を後にして歩きだした。
山童他見ていた妖達は、菖蒲達の姿が見えなくなると、ほっと安堵の息をついたのだった。
「いや~、これは妙な人間がやってきたもんだ」
と、山童はボソリと呟いたのだった。