一日目
気付くとどこかの街の中にいた。メニューと念じると、半透明のメニューウインドウが目の前に現れた。
まず、マップのアイコンを選択した。ちなみにアイコンはわざわざタッチせずに、頭で念じるだけでも選択出来る。戦闘中のことを考えて、念じて操作するほうで練習しておいた方が良いだろう。
表示された画面にはマップ名:スライムタウンと出ている。どうやらスライム族の拠点となる街みたいだ。
所持金も無いので取り敢えずフィールドに出て狩りをすることに決めた。まず酒場で情報集めだ、とか言うやつも多いが、俺は習うより慣れろ派なのだ。正直、今はヴァーチャルファンタジーの戦闘が楽しみでしょうがない。
◇◇◇◇◇◇
慣れないスライムの身体のため動きはたどたどしいが、何とか初心者フィールド的なところに辿り着いた。
周りには障害物らしい障害物もなく、青々とした草原が一面に広がっている。
メニューを開くと、マップ名:コモド平原とあった。どうやらコモドラゴンという可愛い緑のトカゲしか敵は現れないようだ。
結構急いで来たつもりだったが、周りには既に結構プレーヤーがいてコモドラゴンと戦っている。
大量のスライムが可愛いトカゲを虐殺している光景は何ともシュールだ。
どちらが悪役モンスターか分かったものではない。
……いや魔族を選んだ時点で俺らは悪役か。
「キュゥ」
そんなことを考えていると、一匹のコモドラゴンがこちらに向かってきた。どうやら俺を敵認定したらしい。
「キュゥ!!」
可愛い鳴き声をあげながら体当たりしてくるコモドラゴン。正直鈍い。当たる気がしない。若干油断しながら、サッと身体をずらして攻撃を避けた……つもりだった。
ムニュっとなんとも可愛らしい音がして体力が1削られた。
うむむ。歩く(身体を引きずる)という単純な動作に比べて、咄嗟に身体を捻って攻撃を避けるのは非常に難しい。改めて身体が黒い粘液の塊だということを実感した。
今度は俺の番だとばかりにスキルを発動する。
【部分形状変化(刃)】
【部分性質変化(硬化)】
スキルの発動と共に魔力が消費され、身体の一部が刃渡り三十センチ程の刃に変わった。
それで攻撃後でフリーズしているコモドラゴンを斬りつけた。
やはり動かしにくい。現実に腕を動かすのとは根本的に異なる気がする。
斬りつけられたコモドラゴンが「キュゥ……」と弱々しい鳴き声をあげてダメージ12と表示された。ヴァーチャルリアリティーのせいか凄く罪悪感がある。勿論そんなことで攻撃を躊躇う俺ではないが。
再び向かってこようとするコモドラゴンに鮮やかにカウンターを決めて俺の初めての戦闘は終了した。
俺の一撃で哀れな肉塊と化したコモドラゴンに触れるとコモドラゴンの鱗というアイテムに変化した。説明書通りだ。それを収納と念じてアイテムボックスに入れた。何とも便利な機能である。
次は実験のために戦闘の前にスキルを発動した。
【形状変化(人型)】
スキル発動から十秒くらい経過して、俺の姿が人型に変わった。手に刃と念じながら変形したためか、部分形状変化(刃)はしっかり手から生えている。
そのままの姿でコモドラゴンを斬りつける。身体がプルプルだから違和感があるのには違いないが、さっきに比べるとよっぽどマシだ。
一切反撃を受けることなく二匹目のコモドラゴンを葬り去った。
そのまま三体倒したところでファンファーレが鳴ってレベルが上がったため、人型を止めた。
確かに人型の方が狩りはしやすい。だがスライムの特性を最大限に活かすなら、人型以外の形状に慣れた方が良いと判断したためだ。
人型でもある程度はトリッキーな動きも可能だろうが、折角のヴァーチャルリアリティーだ。どうせなら突き抜けた変態機動を目指したい。
俺は丸っこい状態で一日中狩りを続けて、有用そうなスキルを取得して、ヴァーチャルファンタジーの記念すべき一日目は終了した。
一日目終了時ステータス
種族:スライム
Lv10
ステータス
HP(体力):14
MP(魔力):19
STR(物理攻撃):22
INT(魔法攻撃):5
DEF(物理防御):29
MR(魔法防御):19
AGI(素早さ):30
LUCK(運):14
スキル
形状変化(人型)
部分形状変化(刃)Lv2
部分形状変化(鞭)Lv3
部分性質変化(硬化)Lv5
部分性質変化(軟化)Lv1
分体作成Lv1
索敵Lv2
アイテム
コモドラゴンの鱗×652
コモドラゴンの肝×16
所持金0バル
設定集
コモドラゴン
レベル1(非表示
攻撃方法
体当たり
目がくりくりで可愛い緑色のトカゲ
女性プレーヤーの人気が高い
時間
現実準拠
朝〜夜の変化有り