プロローグ
見切り発車
俺の足元に広がるのは見るも無残な光景。共に戦った戦友の屍の山。昨日まで笑い合ってたあいつらが今は何一つ話すことはない。
俺は唇を噛み、苦悶の表情を浮かべた。
そしてこの状況を作った元凶、悪しき人間たちを睨みつけた。
敵のリーダー格らしき男が俺を嘲笑うかの表情を浮かべる。
けっ、笑ってられるのも今のうちだ、俺は心の中でそう呟いた後、
「What'sup!!」
クールに言い放ち、百人の人間に切り掛かった。
◇◇◇◇◇◇
一ヶ月前、俺はあるネット広告を見つけた。
新作オンラインゲーム、ヴァーチャルファンタジーのテスター募集。一万名まで。
ちょうどその時やっていたネトゲに飽きかけてた俺はその広告にタッチしてみた。
〜次世代型オンラインゲーム「ヴァーチャルファンタジー」
これは世界の可能性を切り開く物語。実際にゲームの世界に入ってファンタジーの世界を冒険してみませんか?
詳しくはこちら〜
表示された画面から更に詳しい説明に飛んだ。そこまで何のことだったか全く分かってなかった俺だが、その次のページを見た瞬間、NGS(Next Generation Screan通称次世代型立体端末)をタッチする手が震えた。
曰く、国連公認企画で脳に特殊な機械を繋ぐことで五感を直接刺激したり、脳の信号を直接受信したりする装置が開発された。
水面下で始動してきた計画もいよいよ大詰めとなり人体実験も成功した。
いよいよ一般に売り出そうという話になったが、脳に与える長期的な影響についてははっきりしていない。そのためその特徴を十分に生かしつつ、長期利用者が多くなるであろうオンラインゲームでまず導入が決まったらしい。(最も後で調べたところによると、これは国際オンラインゲーム協会の強力な圧力があったからだそうだ)
テスターの条件は
一週間に四十時間以上ログインできること
定職に着いていないこと
身体にいかなる障害が生じてもその一切の責任をプレーヤーが引き受けること
成人していること
の四つだった。
どこかで見た小説で国にニートが嵌められ次々に殺されていく話があったが、それを思い出させるような契約内容だ。
プレー中にこれはデスゲームです。ログアウト出来ませんとか言われないだろうかと心配したが、国連公認というのはどうやら本当らしい。結局騒ぐゲーマーの血を抑えられず、俺はテスターに応募することに決めた。
そして今、俺の目の前に国連から送られてきたヘッドギアがある。
怖いという気持ちよりもわくわくする気持ちの方が遥かに大きい。
ゲーム開始まで残り三十分。ヘッドギアを付けてベッドに寝転び、ヘッドギアとNGSをリンクさせる。
さらに腕に廃人ネットゲーマー三種の神器の一つ、NTF(No Taste Food 液体型栄養剤) を打ち込んでおく。これで四十八時間は食事を取らなくても良いだろう。
わくわくするのを必死で抑えて、ゲーム開始を待つ。そして二十分後、カチッという音と共に、俺の意識はゲームの海に沈んだ。
設定集
主人公スペック
五十嵐仁(名前負け)
二十五歳
職業:ニート