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Lake!  作者: ぽこ
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そのなな!

月日が経つのは早いもので今日は文化祭から2ヵ月後。

俺は部室に通うのがもう習慣と言ってもいいほどになっていた。

そのおかげで俺の友達からは付き合いが悪いと評判は駄々下がりである。

そして今日ものどかに練習したり先輩達と放課後の時間を潰していると、小雪先輩がいきなりこんなことを言い出した。

「冬休みに軽音部強化合宿を行います!」

唖然とする俺達。

「このメンバーでですか?」

「そだよ」

「どこに行くっていうんです?」

「スキー場!」

「それって楽器練習する気あるんですか?」

「楽器は持ってかないよ、友情を強化するのー」

・・・ようするに小雪先輩はこう言いたいのだ。

このメンバーでスキー場に旅行に行きたい!

やれやれ。小雪先輩が言い出しそうなことではある。

「スキーかー。一回やってみたかったんだよね。私は賛成」

美涼先輩が言う。

「さっちん先輩は?」

「別にいーよー」

「あー君先輩は?」

「行こう行こう!」

賛成多数。

「みんなが賛成なら俺も別にいいですけど。冬休みのいつですか?」

塾に通っていない俺はいつでも暇なんだがな。

「25、26、の1泊2日!」

25って冬休み初日かよ・・・

「25日俺は大丈夫ですけど、皆さん学校ないんですか?」

「私の高校は大丈夫!」

と笑顔の小雪先輩。

「俺は学校あるけど大丈夫!」

と笑顔のあー君先輩。

「じゃ、その日にしましょうか・・・ってあー君先輩学校あるのに何で大丈夫なんですか!?」

「ノリツッコミって初めて見たわ」

さっちん先輩が感心しているがとりあえず無視。

「サボるからさ!」

あー君先輩が断言する。

「大丈夫なんですか、そんなことして。高三でしょー」

進路とかに響く気がするのだが・・・

「高三だからだろ。この時期は別にちょっとサボったって全然大丈夫」

そうなのか。

「何処のスキー場ですか?」

「まだ決めてないよ。合宿行くって今思いついたんだからー」

思いつきで物を言うんじゃありません。

「新潟でいいんじゃない?」

美涼先輩が言う。

確かにスキーに詳しくない俺が最初に思いついたのも新潟だった。

「あんま人が多いところはヤだからなー」

とさっちん先輩。

「私が調べてくるよ!任せて!」

小雪先輩が胸を叩く。

で次の日。

「このプランで完璧さ!」

小雪先輩が電車での行き方やら旅館やらそれらの経費やらを書き込んだノートを取り出す。

これを一晩で調べてくるって相当気合入ってるな。

「結構金掛かりますね」

「これでも試行錯誤した末のなるべく安く楽しいプランですー」

親に旅行代を要求するのは気が引ける。

ちなみに俺のこづかいは毎月俺の部屋の前に置かれている。

額は2000円。今の俺の全財産では足りない。

「あー君先輩、賭けしませんか♪」

なるべく笑顔だ、俺。

「賭け?」

「ハイ」

大丈夫、あー君先輩の性格なら必ず乗ってくるはず。

「いいぜ、何賭けるんだよ?」

計画通り!

「今回の旅費、全額です!」

空気が凍った。

「・・・勝った方が相手の旅費も全額負担ってことか?」

さすがのあー君先輩も少し動揺していると見える。

「ハイ」

もし俺が負けたらあー君先輩の分まで金を出さなきゃいけない。

てかそんな金無いから負けられない!

「何で勝負するんだよ」

「男らしく、じゃんけんで」

「ハァ?じゃんけんかよ!」

「何か不満ですか?」

「・・・別にいいけどよ」

「小雪先輩、審判を」

「よしきた!」

腕まくりして俺達の方にやってくる小雪先輩。

「いつになく太一の目が真剣です!どう思いますか、日下部さん」

「そうですね~雨宮さん。最近の調子でいけば井上選手に軍配が上がると思います、しかし坂元選手もどんどん力をつけていますからね、難しいです」

美涼先輩達の適当な解説が入る。

「見合って見合って~」

あー君先輩が力を込めているのが服の上から盛り上がる筋肉でよく分かる。

でも俺も負けられない!

「Ready,じゃんけん!」

「「じゃんけん、ぽん!!」」

男2人のマジな声のじゃんけんぽんはものすごく気持ち悪かった。

二つの手は片方は強くこぶしを握り締め、もう片方が親指と薬指と小指を折りたたみ・・・

面倒くさいな、要するに俺がグーであー君先輩がチョキだった。

「ヨッシャーー!」

最高の気分だ。

何処からか持ってきた白旗を小雪先輩が大きく上げているのが視界内に入る。

「決まったー!坂元選手の拳がこの勝負に終止符を打ったー!」

「いやー壮絶な戦いでしたね、今回の解説は私雨宮と」

「日下部がお送りしました、ありがとうございました」

美涼先輩も意外とノリいいんだな・・・

「ば、馬鹿な。この俺が、じゃんけん井上の異名を持つこの俺が、負けた、だと?」

あー君先輩が目を見開き小さく震えている。

「よろしくお願いします、あー君先輩☆」

「ワリ、金ねぇわ」

「何言ってんですか!?ガンジーも助走付けて殴るレベルですよ!」

「う、嘘だ」

「そうですか。スミマセン、取り乱しました。」

こうして俺の旅行は全額無料となった。


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