【至急ご相談】野生ニホンザルにおける重度な生殖器系・催奇形性異常の症例について
佐藤先生
ご無沙汰しております。平成29年卒業生の白石です。
先生の研究室を離れ、こちらで実家の病院を継いでから早いもので十数年が経ちました。
本日は、昨日未明に当院で発生した、およそ臨床の常識では説明のつかない極めて異常な症例について、病理学的な見地から先生のご意見を伺いたく、不躾ながらメールいたしました。
昨夜遅く、近隣の農家が「害獣駆除の罠にかかっていた」という野生のニホンザルを当院に運び込んできました。
初見では腹部が異様に膨隆しており、重度の胃拡張や消化管破裂、あるいは寄生虫による腹水貯留を疑ったのですが、触診とエコー検査の結果、妊娠が確認されました。
しかし歯の萌出状態や頭胴長から見て、どう見積もっても生後1年未満の幼獣(未成熟個体)です。ニホンザルの性成熟は通常3〜4歳であり、1歳未満での排卵・妊娠など生理学的に絶対にあり得ません。
隔離ケープで様子を見ていたところ、数時間後に破水が始まりました。その際、排泄された羊水の量が異常(大型犬の腹水全量を超えるレベル)で、診察室の床一面が濡れるほどでした。
結果、四肢も顔面も形成されていない、「白い肉塊」としか形容できない無定形な組織を産み落とされ、直後に激しいショック状態に陥って急性心不全で幼獣は絶命しました。
この奇形は産み落とされた当初は生体反応と取れる蠢きを見せていましたが、超音波に該当する奇声を発したためやむなく処分いたしました。これにより当院の窓ガラス5枚にヒビが入り、近隣住民からも苦情を受ける事態に発展いたしました。
該当奇形の処分があと少しでも遅れていた場合、被害が拡大していた可能性が非常に高い状態でした。
この奇形は検体として保管を試みましたが、私自身が前述の超音波により聴覚が麻痺しており、回復するまでの間に完全に融解してしまっておりました。
しかし、本当に恐ろしいのはここからです。
カルテをひっくり返して確認したのですが、当院では数年前にも、これと酷似した「異常な腹部膨隆」の野生動物が運び込まれています。そしてその時の個体は、「オス」のタヌキでした。当時は腹腔内の巨大な奇形腫、あるいは胎児の封入として処理されていましたが、今思えば同じ現象だったのではないかと思えてならないのです。
地元の猟師たちの話では、稀にですが「臨月のように腹の膨らんだ野生動物」が山で目撃されているそうです。
同じく獣医だった私の亡き父が生前言っていたことを思い出しました。
この地域では今から40年以上前、山奥の湖に、高濃度パラコートが大量投棄される事件がありました。父は「あの事件のあとから、山の生き物がおかしくなった」とこぼしていました。
環境ホルモンや残留農薬が40年に渡り影響、あるいは世代を超えた遺伝子変異として現れることは、科学的にあり得るのでしょうか。
あまりの不気味さに、私一人では抱えきれず、先生を頼ってしまいました。
お忙しいところ大変恐縮ですが、どうかご一読いただけますと幸いです。
あいらむ動物病院
白石 はじめ




